#05:人類の敵

頭上を取られても、ノー・スモーキング隊は散開の後に包囲攻撃し、素早く隊を集結させて次のファシネイターを迎撃する所まで、一糸乱れなかった。ただ、モスグリーンのスティンガーが少々遅れ気味であり、ガトリングガンの命中率も良いとは言えなかった。
「バルクホルン! そんな狙いじゃナメクジも殺せねぇぞ! もっと良く狙え!」
 フューマドールはモスグリーンのスティンガーに乗る若いハンターに向けて怒鳴った。相変わらずだなと、クオレはその横で溜息をついた。
 以前見た時のバルクホルンはデビュー間もないイェーガーだった事もあり、何かと危なっかしい動きをしていたのを思い出していたのだった。その頼りないハンターを、ノー・スモーキング隊のメンバーが射撃でフォローする。クオレもマシンガンで近場のファシネイターを叩き潰しつつ、バルクホルンのサポートに加わる。
 これらの攻撃がストップした時、破壊されたファシネイターは両手足の指の数を超えていた。更に、他のハンター達も、ジュイファシティからファシネイターを駆逐しつつあるとの連絡がハインラインより寄せられた。少なくとも、地元ハンターとインファシティのイェーガー達の活躍により、人口密集地の被害は押さえられたようだ。
 事実、クオレは上昇して周辺の様子を窺ったが、郊外地域がダメージを受けている一方、市街地中心部からは火の手も黒煙も上がっていなかった。
「インファシティに機械生命体出現! ファシネ――失礼、ファシ“ナニヤラ”もいます」
 ハインラインの報告に、またかとクオレは溜息をついた。グラッジパペットは疲労困憊の高所作業員よろしく、フラフラと地面に降り立った。
「クソッ、またか!?」
 反射的に悪態が漏れてしまう。
「ああ畜生、あの筋金入りのクソッタレが! こうなりゃ何度でも無に返してやるよ!」
 クオレはオーバードブーストボタンを押し込んだ。
「全員、インファシティに向かえ!」
 フューマドールが部下達に指示を発する前に、グラッジパペットは着地寸前で起動段階にあったオーバードブーストで、我先にとインファシティへ取って返していた。旧友達のスティンガーが、あっと言う間にレーダーレンジ外となる。
 インファシティとジュイファシティは隣接しており、両者間の境界線は南北を分断する大河と、掛かっているいくらかの橋ぐらいなものである。その橋を飛び越えてからほどなくした所で、クオレはポットベリーの機影を見た。ジオストラのターボクロックがそれに随伴している。携えていたパルスガンは、マシンガンCWG-MG-500へと換装され、頭部はMHD-MX/RACHISに交換されていた。
 だがクオレは違和感を抱かない。もともと、ジオストラは複数の頭部パーツを所有していて、相手や任務の性格に応じ、頭部を換装して戦うと分かっているからだ。
「クオレさん、ジュイファシティは!?」
「大丈夫そうだ」
 地元ハンターが残敵の掃討をやってると、クオレは説明した。
「こっちも何とかしなければ」
 同感だなとクオレはジオストラに頷いた。そして3人目掛けて飛び出して来たファシネイターをマシンガンとバズーカ、ブレード光波による集中攻撃で叩き潰し、インファシティを進み始めた。
 だが、3人の行く先で、新たなファシネイターが高架道路に降り立った。そして、別のファシネイターがその後ろから高架道路にハンドレールガンを向けている。
 そうはさせんと、3人は一様に各々の得物を繰り出した。
 しかしファシネイターの方が早かった。ミサイルやマシンガンが彼女を砕いたと同時に、蒼白い光弾がハイ
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まろやか投稿小説 Ver1.50