#05:人類の敵

と“ノー・スモーキング隊”の面々かよ」
 正体を知っているので、クオレは全く動揺していない。
「何しやがるんだよ、あれは俺の獲物だぞ」
「何、あのクソ女ならまだ幾らでもいるぜ、いちいちこだわる必要なんかねぇ」
 黒とグレーのツートンカラーのスティンガーを駆るフューマドールが通信を入れてくる。モニターに映し出された、黒い無精髭を生やし、火の付いていないタバコを咥える四角顔の野性的な男性を見て、クオレはわずかばかり安堵した。
「お前、ケツ青い時にもそうやって深追いしてクソ女に囲まれたじゃねぇか」
「今言うことかよ!?」
 昔の失敗を指摘されて赤くなりかかったクオレを前に、フューマドールは笑う。中年の部類に入るこのハンターは、このジュイファシティに居を構えており、クオレがハンターデビューして以来、幾度となく機械生命体討伐戦において共闘して来た過去があったのだ。
 そして、その時からノー・スモーキング隊を率いていた事や、彼等がイェーガーではなく地元のハンターチームである事も知っている。
「隊長! 敵が来ます!」
 ノー・スモーキング隊の一人が叫んだ直後、新たにファシネイター3機が出現。いずれの機体も跳躍の後、スティンガーの頭上から、ハンドレールガンとマシンガンを一斉に撃ちかかった。
 ハンター達は即座に回避行動に移り、スティンガーの何機かは手持ちの武器で反撃、ガトリングガンとエネルギーショットガン、携行型電子砲が相次いで火を噴き、1機を蜂の巣にした。
「くそ、立ち話してる場合じゃねぇぞフューマドール!」
「同感!」
 陽気な印象のあるフューマドールの顔が厳しいものに変わっていた。
「こうなりゃ共闘だ! 一緒にあのクソッタレド畜生女を犯す……もとい潰すぞ!」
 異議なしとクオレは頷いた。ジナイーダへ向けられる言葉がクオレと同レベルで汚いが、彼は一切無視した。昔から、こう言う人物だと知っているからだ。
 と言うのもフューマドールは、やはりジナイーダによって家族――妻と、10歳になる娘を失っていた。それ以後、ジナイーダに対して復讐心を燃やしていたのだと、クオレは彼の口から直接聞いている。
 だが、そんな隊長の、ジナイーダへの口汚い罵りを咎める者は誰一人として存在しない。
「この×××野郎!」
「そんなに乱獲されてぇのかこのビッチが!」
「あのクソビッチに粒子砲ブチかませ!」
「糞に塗れて死ね!」
「核弾頭にケツ掘られて死に晒せ!」
「このくそったれ! 二度と地球上に出て来るな!」
 それどころか、レーダーの反応から10人いると分かったフューマドールの部下達からも、耳を塞ぎたくなるほどの暴言が止め処なく飛び出した。
 と言うのも、ノー・スモーキング隊の面々には、ジナイーダによって妻や子供、親兄弟を殺されたり、家や故郷を失った者が多い。よって、上や下から罵声や暴言、スラング、放送禁止用語までもが、次々に、止め処なく飛び出してくるのは必然であった。
 そして、その中にクオレもちゃっかり加わり、マシンガンでファシネイターを叩きのめす。
 かくして、残っていた2機のファシネイターはすぐに粉砕された。だが、また別のファシネイターが複数の集団で、すぐに攻撃を仕掛けて来る。
 しかしながらノー・スモーキング隊は罵倒の嵐の中でも統制を全く欠いていなかった。迫り来るファシネイターに集中攻撃を加えて反撃を許さず粉砕し、回避行動に対してもエネルギーショットガンによる牽制の後、接近すればガトリングガンで粉砕し、遠距離に逃げるようならばチャージしたブリューナクで撃ち抜く。
 更に
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まろやか投稿小説 Ver1.50