なせぬ存在に対し、感情輸入が出来ない。無論、慈悲や平等、博愛の精神など存在しない。
そして、ドミナントとなり、あらゆるレイヴンを畏怖させるまでになった事で、ジナイーダは、最早己と同等以上に値するものは存在しなくなったと確信、最早人間達への感情輸入は不可能となっていた。
従って彼女にとっては、他者を思いやる事はまるで意味がなく、その生死で心を動かされる事もない。元々社会的な適性である情緒がレイヴン達には欠けているのが常なのだが、復活したジナイーダには、根本的にそんなものが存在していないと言った方が正しかった。
その為、彼女は己の行為を顧みる事を知らない。最強の存在でありたい――強さを追い求めるあくなき渇望に取り付かれた末、肉体を捨てて機械生命体と成り下がったジナイーダに残されたものは、幼児性を残した悪魔的・怪物的な精神のみだった。
力に取り付かれたが故の悲劇である。
しかし、それらの事実を証明する術も最早なく、既に数え切れぬほどの子供を虐殺し、人類の敵である機械生命体の一員へと堕ちた今、彼女には悲劇の英雄としての道はない。ジナイーダにあるのは、弱者――特に子供達を虐殺する人類の敵、次世代の担い手を幼くして冥府に誘う殺戮者、紛う事無き絶対悪という姿だけだった。
最早、ジナイーダに対して人類がするべき事はただ一つ――彼女の存在や価値観を、破壊によって否定し、速やかに無に帰す事だけである。
クオレはこれらを全て認知し、確認し、理解していた。そして、嘗てジナイーダに家族を皆殺しにされた彼の憎悪は、ジナイーダが弱者に向けるそれよりも、遥かに勝っていた。少なくとも、彼と共闘したハンター達は、誰もがそう思っていた事だろう。
「死ねこのクソッタレのド畜生が!」
グラッジパペットが繰り出した弾丸は、今度はファシネイターの後部を正確に捉えた。ブースターが、コア後部の構造物が次々に火花と共に飛び散り、数秒の後には爆発四散した。
ジナイーダの最期――と言いたい所だったが、クオレは此処に来てからというもの、既に4度、この光景を繰り返していた。そして近くでは、地元ハンター達が駆るACやスティンガー、アーマード・カファールと言った機種がファシネイターを追い回し、破壊している。手付かずのファシネイターも何機か存在した。
グラッジパペットから確認出来るジュイファシティのマップを見る限りでは、ジナイーダを示す赤い点が、市街地のそこかしこに見て取れた。確認出来るだけでも50機以上、それが存在している。
しかも、新たに3機が自分の所に迫っている。
「上等だこのクソが! 何度でも乱獲してやるよ!!」
程なくしてファシネイターの機影が見えたが、直後にはそのうちの2機が、いきなり爆発した。残る1機を、クオレはすかさずレーザーキャノンで砲撃。回避行動を取らせる間もなく吹き飛ばした。
「おい、俺達にも戦果をくれよ!」
通信と共に、2機のスティンガーがファシネイターの残骸を踏み越え現れた。1機は黒とグレーのツートンカラーで、もう1機はモスグリーンの森林迷彩だった。更にもう1機、今度は青いスティンガーがビルの上から降り立った。その後に、灰色や濃紺、カーキ色と言ったカラーリングのスティンガー達がゾロゾロと続いて来た。それらは全て、左肩に禁煙マークが張られている。
それらはバズーカにも似た携行型電子砲やガトリングガン、グレネードランチャー、エネルギーショットガン等様々な武器を装備している。いずれもACへの搭載を想定していない、ACB用の兵器である。
「チッ、フューマドール
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