#05:人類の敵

撃にさらされて重傷・死亡する可能性もある。まだ13という年齢なのでそんな事をさせるべきではないとクオレは見ていた。
「僕も戦います!」
「何!?」
 予定外の事態に、クオレの顔に驚愕と不快感が浮かんだ。
「アホ言うな! お前を無駄死にさせるつもりはないし、何よりお前は中学生だぞ!? 学校休んでいられるような上等な身分じゃねぇんだぞお前はよ!?」
 凄まじいクオレの剣幕だが、正義感や熱意という点ではアルジャーノンも負けていない。
「クオレさんはこの街の人々の命と僕の学生生活、どっちが大事だと言うんですか!」
 13歳の少年とは思えぬ正論に、クオレはたじろぎ、黙ってしまった。人類全体からみれば、例え13歳でも戦力になる者は必要なのかもしれない。その為に人生を狂わせてしまうのも勿体無い話である。だが、かと言って戦闘員をひとり減らすのもどうかと思っていた。しかし、そうするとアルジャーノンは学校をサボる事になり、学力低下に伴って落第と言う事も考えられた。
 しかし、一人でも戦力が欲しいのも確かである。
 そんな考えが彼の中でループしてしまい、たちまちクオレはジレンマに陥った。
「やれやれ……お前には敵わんな」
 ループを振り切るように、クオレは溜息をついた。
 しかしながら、13歳に抑えられる20歳男子の姿は、情けない以外に適切な形容詞が見当たらなかった。少なくとも、この様子を諦観していたハインラインはそう見ているが、クオレの反感を買うのも我が意図する所ではないので、押し黙った。
 とは言え、クオレとてまだアルジャーノンの処遇を決定した訳ではない。アルジャーノンの保護者・レイザーバックに事の次第を報告し、意見を仰ぐ必要がある。最もアルジャーノンが13歳という身分なので、反応も当然芳しくないものになるだろうとは容易に想像出来たのだが。
「やれやれ、レイザーバック少佐に何を言われるか……」
 クオレは頭を抱えた。機械生命体の事だけでも厄介だというのに、後輩の厄介事まで抱えるハメになってしまうとは……。
 頭の痛くなるような中で、クオレは機械生命体討伐作戦への参加を余儀無くされたのだった。
14/08/07 13:29更新 / ラインガイスト
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まろやか投稿小説 Ver1.50