#05:人類の敵

、グラッジパペットを発見して援護に来てくれたのである。隊長フューマドールから新参隊員バルクホルンまで、全員のスティンガーが一揃いでだ。
「機械生命体達が退却を開始した模様!」
 クオレは即座に、リアルタイムで更新されるインファシティのマップを呼び出した。赤い点で表示される機械生命体達側の兵器が、インファシティから南西部方向へと離脱していく。
「ダビッドソン少佐より連絡。機械生命体を監視衛星によって追跡、敵の拠点所在地の特定を試みるとの事です」
「じゃあ追撃はしない方が良いか?」
 クオレが問う。拠点へと離脱していく機械生命体を破壊すれば、それは拠点捜索の手がかりを自ら失くす事と同義だからである。それを察する他のメンバーも自然に攻撃の手を止めた。しかし、ノー・スモーキング隊の合流もあり、もはやクオレの周辺で動く敵機は皆無であった。
「都市部への攻撃はストップしていますが……」
 ハインラインは少し間を置いて言った。
「攻撃は各自の裁量に一任します」
 要するに好きにして良いと言うことかとクオレは判断した。そして、マシンガンの残弾表示に目をやる。右手のMWG-MG/1000は192発、左手のMWG-MG/800は103発。レーザーキャノンMWC-LQ/15は弾切れの上、乱戦の最中に撃たれて故障していた。整備の事を考えると、しばらくの間は使えないだろう。グラッジパペット本体のダメージも嵩んでいる。
「ハインライン、消耗したので一旦引き上げたいんだが」
「僕もちょっと、追撃は無理っぽいです……」
 ミサイルもバズーカも、更にはインサイドバルカンも残弾数が少ないので厳しいとアルジャーノンは言う。
「了解。帰投を認めます」
「クオレ、俺達はもうひと仕事してくるぜ」
 分かったとフューマドールに返し、クオレとアルジャーノンは並んで帰還に入った。ジオストラも二人に随伴して愛機を転回させ、ノー・スモーキング隊の面々はフューマドールの号令一過、再び駆け出した。
 アニマドは別区画の敵を掃討しに行く旨をクオレに伝えると、切り離したコンテナを再び背部に接続し、スロットル全開で離れて行った。
 他のハンターやイェーガー達も、周辺の掃討を完了した者、消耗したが動ける者から順次帰投して行く。
 しかしクオレが見る限り、破壊された車や有人兵器、機械生命体とACの残骸、瓦礫が周辺の至る所に散乱していた。両手足と全ての武装を失った半壊状態のファシネイターが、アスファルトの舗装面で軋みながらもがいている。それを、生き残った人々が罵声と共に鉄パイプや棒などで殴り付けている。
 この襲撃で、インファシティからは1万5千人、ジュイファシティからは8000人、計2万3千人の死者が出たと試算された。そのうち40%あまりが、10歳未満の子供たちという。犠牲を聞き、クオレはその顔を再び憤怒で歪ませ、コックピット脇に拳を打ちつけた。
「クオレ、ダビッドソン少佐より要請です」
 このタイミングで言うとは余程の事に違いないなとクオレは察した。
「報酬を上乗せするので、滞在期限を延長し、引き続き機械生命体掃討作戦に参加して欲しいとの事ですが」
「当然だ!」
 この際構わないとクオレは返した。
「ただ、アルジャーノンに送り帰さないとな。戦うニートも当然の俺と違って学生だし……」
 クオレからすれば、アルジャーノンは学生という身分なので、自分のように戦い三昧とさせる訳にはいかなかった。それに、何れは敵の拠点へと攻撃をする事は容易に想像できるが、デヴァステイター軍団からの苛烈な抵抗も想像に難くない。最悪、反
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..11 12 13 14 15 16]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50