#05:人類の敵

ロンに垂直発射式ミサイルを繰り出す。
 そのガロンは垂直ミサイルが来た事で前進しての回避に転じたが、直後には砲弾によって右の前足をもぎ取られた。
「うおぉぉぉぉどけぇぇぇぇぇぇ!」
 アルジャーノンがたじろいだ隙に、デスペナルティがその横を猛スピードで突っ切り、ガロンに止めを刺した。そして再び姿を現したファシネイター2機目掛けて突っ込んで行く。
 デスペナルティ――と言うより、タイタスというACBが凄まじいのは、何よりも重量級機体でありながら最高速度が時速500キロ超で、旋回性能も極平均的な中量級2脚と遜色ない事に尽きた。重装備機体ではあるのだが、機体本体と比較すると、推進器が占めている割合が大きいためだ。
 開発陣はひたすら突っ込んで敵を叩き潰す事しか考えなかったのだろうかと、クオレはこの機体を見て思っていた。というのも、強力なフォースフィールドと重火器、それに負けないほどの高出力を誇る推進システムにモノを言わせた突進・強襲戦法は、アニマドに限らず、タイタスのパイロット達の多くが行っている為である。
 とは言え、強引に敵弾を突っ切るその姿にはクオレも危うさを感じていた。実際、デスペナルティの右足が火花を散らしている。
「アニマド! 無理すんな! 右足が悲鳴上げてんぞ!」
「なっ!?」
 クオレに言われ、初めてアニマドは愛機の右足にダメージが蓄積している事に気が付いた。そのとき、彼の狙っていたファシネイターが、ポットベリーのミサイルによって頭上から叩き潰された。
「死に急ぐな! 生き延びてこそ復讐の機会はある!」
 アニマドはあっさりとファシネイター潰しを中止し、同業者たちの下へと後退した。ジナイーダへの復讐に心血を注ぐあまり、周囲が見えなくなりがちなのはどうにかしなくてはと、アニマドは自省した。入れ替わりで、グラッジパペットとターボクロックが、新たに現れたソラックスの群れにマシンガンを撃ち放った。
 一方、ポットベリーは後ろに現れたACをバズーカで狙い撃ちしていた。ファシネイターではない、そのACは腕部をレーザーキャノンとした、無骨な白い4本足のACであった。アルジャーノンはそれを、バリオス・クサントス――24時間戦争において、アライアンスにとっては忌まわしい以外の形容詞がない裏切り者エヴァンジェに心酔し、それ故道を外した愚者が駆るACだとすぐに認めていた。
 バリオス・クサントスはソラックス共々、レーザーキャノンでアルジャーノンの命を奪いに掛かった。しかし、無駄な攻撃であった。レーザーはナービス戦争や24時間戦争時代の比ではないほどに強化されたシールドによって完全に阻まれ、バリオス・クサントス自体も容易く片付けられた。
 新たにファシネイターも出現したが、すぐに粉砕され、ソラックス隊が出来たポットベリーの包囲攻撃に加わる事すらままならなかった。
 インサイドバルカンで迎撃に回るアルジャーノンを援護しようと、クオレが即座に反転、動きの鈍い後輩機を包囲したソラックスを叩き落としに掛かった。
 ところが突如、そのソラックスが次々に爆発した。更にビームが1発飛来したが、これはシールドに阻まれ、ポットベリーは無傷だった。
「うわっ!? 新手か!?」
 アルジャーノンは流れ弾にたじろいだ。幸い、シールドのおかげで被害はなかったが。
「落ち着け落ち着け、味方だ」
 聞こえていたのだろう、誰かがそう返した。直後、アルジャーノンは禁煙マークが張られたスティンガー11機が、目の前に現れたのを視認した。
 インファシティ防衛に回ったノー・スモーキング隊の面々が
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まろやか投稿小説 Ver1.50