#3.共闘

 ファナティックを手に掛けた「あの依頼」から5日後。
 この日も、マナ=アストライアーは愛機ヴィエルジュと共に、コーテックス所有の大型輸送ヘリに吊られて飛行していた。行く先はレイヤード第2層・特殊研究区画の熱帯雨林を再現したセクションである。
 クレストの輸送機が、管理者破壊を唱える秘密結社「ユニオン」の攻撃によって撃墜され、クレストの新型兵器データや組織の内情を示すデータ等を記録したデータカプセルが散乱、ユニオンに回収される前に、そのデータカプセルを回収して欲しいとの依頼があった為である。
「しかし、貴女がクレストの依頼を……何があった?」
 ヴィエルジュの右隣に吊り下げられている重量級4脚AC「デルタ」のパイロットが、通信を介してアストライアーに問いかけてきた。
 彼女の名はスキュラ。元4脚MTパイロットの肩書きを持ち、アストライアーとほぼ同時にレイヴン試験に合格した、いわば同期のレイヴンである。
「報酬だ。なかなか高額だった上、物資回収系ミッションだったのでな。しかし何故そんな事を聞く?」
「いや、貴女が受ける依頼にミラージュからの依頼が多かったから」
 話しかけて来る者が殆どいないアストライアーだが、このスキュラだけは、例外的に彼女に対し何気なく会話もしている。因みに、この2人の付き合いはレイヴン試験以来から続いている。
「だが……あいつが一緒と言うのは気に食わんな」
 アストライアーが言う「あいつ」と言うのは、現在ヴィエルジュとデルタを係留しているヘリの隣を飛行している、もう一機の輸送ヘリに吊り下げられている軽量級逆間接AC「メーガス」の事である。
 搭乗者はファウストで、彼はアストライアーと同じアリーナのランカーレイヴン。逆間接脚部特有の高いジャンプ性能とホバーブースターによる空中戦を得意としている。
 その戦闘スタイルから「魔術師」の異名が付いている彼だが、その端整な顔立ちとは裏腹に狂気的な性格をしており、彼を倒したランカーが、幾人も謎の死を遂げているのは、ある筋では有名だった。
 その為か、彼は周囲から危険人物扱いされ、好んで共闘する者は少ない。何しろ、いつ刃を向けられるとも分からないからだ。
「その次のターゲット、もしからしたら貴女かも知れない。気を付けてくれ」
 スキュラの口から、不意にアストライアーを気遣うセリフが吐き出される。アストライアーはやはり無表情だが。
 此処で「貴女も」とでも返事を返そうとしたアストライアーだが、その考えは突如起こった笑い声に遮られる。
「あいつらか……毎度毎度五月蝿い奴等だ……」
 もう一機の輸送ヘリは、ファウスト機「メーガス」以外にも、2機のACを吊り下げていた。アストライアーの言う「五月蝿い奴等」というのは、この2機のACの搭乗者に他ならない。
 その2機のACは両方ともフロートACで、うち一機は円盤状のMLR-MX/QUAILに複数のカメラアイを備えるMHD-RE/008、中量級コアCCM-00-STOと腕部CAM-11-SOLを接続し、武器はロングレンジライフルMWG-RF/220、軽量ブレードMLB-LS/003、支給されるACに装備されていた小型ミサイルCWM-S40-1と言う組み合わせ。
 AC名はフェンサーで、搭乗者はツヴァイハンダーと言う若手のレイヴンである。
 もう一機は黒と黄色の派手なツートンカラーで塗装され、レーダー装備型ではもっとも安価なCHD-02-TIEと、フェンサー同様中量級腕部CAM-11-SOLを装備。ただしコアはフェンサーのクレスト製OB装備型コアCCM-0
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6..9]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50