#04:盗賊鴎

逆関節CLB-44-AKSで構成されている。真っ白に塗装されたそのACは、標準的なライフルであるMWG-RF/220を2つ携え、その背にCRU-A10と、よく分からない箱の様なものが積まれている。少なくとも、クオレには見慣れないものだった。
 フレームの貧弱ぶり、トボトボ歩くだけの挙動から、クオレは即座に未熟な少年の乗るACだと判断、即座に銃撃を開始する。マシンガンの猛連射を前に、右腕のライフルはあっさりと破壊された。
 続いて、ジャンプで逃れようとした所を追い討ちし、逆関節脚部を弾幕でズタズタに引き裂く。
 そのまま、グラッジパペットはMWG-MG/800を武装解除、身軽になった上で斬りかかろうと迫った。
「来ないで!」
 その声でクオレは一瞬躊躇った。
「女の子……なのか? 君?」
 観念したように、通信モニターに敵機パイロットの顔が映る。パイロットスーツに未を包む華奢な身体、茶色い瞳に茶色いツインテールと、容姿はいかにもな女の子だった。
「どうして……」
「来ないで!」
 近寄ろうとするポットベリーに、少女はライフルを向けた。
「それ以上近付くと……爆発するよ!」
 少女がスイッチを掲げ、そのボタンに指をかけた途端、背後の箱で赤い光がちらついたのをクオレは見逃さなかった。
 ポットベリーとターボクロックが、得物を構えつつゆっくりと歩み寄る。
「ねえ、こんな事止めましょう。君の為になりませんよ?」
「バカな事は止めるんだ!」
「来ないでって言ったのが分からないの!?」
 少女が泣きそうな顔を浮かべ、何かのスイッチを握る手をアルジャーノンとジオストラに見せる。
「止めるんだ! そんな事をしても意味がない!」
「スイッチから手を離して下さい!」
 愛機を進ませようとしたアルジャーノンとジオストラだが、その前方をグラッジパペットの腕とマシンガンが遮った。
「君、何を……」
「ジオストラ、アルジャーノン、それ以上近付くなよ。特にアルジャーノン、お前、享年13歳って墓に彫られちまうぞ。俺はそんなのが彫られた墓なんか見たくないからな」
「えっ……!?」
 クオレの視線に当てられ、アルジャーノンはすくんだ。
「あれは自爆装置のスイッチだ。多分、あいつの肩に積まれてる奴のな」
 早く気が付けば良かったと、クオレは内心唇を噛む思いだった。第一、それはよく見ていれば気が付く話だった。少年レイヴン達が駆るぎこちない動きの機体に、例外なくその白い箱が積まれていた事に。そして本来のレイヴン達が乗っているとわかる動きの良いACの一切が、それを装備していないことも。
 おそらく、レイヴン達は目的を果たせないなら自爆して敵を道連れにしろと、少年少女達に叩き込んだのだろう。絶対服従を余儀無くされるほどの恐怖と威圧で。
「ジオストラも、まだ三十路にもなってないうちに死ぬべきじゃねぇし、お前だって死にたくないだろ?」
「それはそうだが……君は何をするつもりなんだ? あの子を説得でもするのか? 自爆するかもしれないんだぞ?」
 クオレの目が釣り上がった。
「おい、頭デッカチ。こういうのは理屈じゃねぇ……ここだ」
 そう言い、クオレは己の右胸を指差し、軽く叩く。
「クオレさん……」
「大丈夫だ、俺に任せろ。ガキの扱いには自信がある」
 後衛2人へと不敵に微笑むと、クオレは少女に向き直った。ジオストラは内心冷や汗ものでその様子を見るしかなかった。
「なぁ、君……」
「来ないで!」
「良いから話を最後まで聞いてくれよ。最後まで話を聞かなきゃダメだって、パパかマ
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まろやか投稿小説 Ver1.50