#04:盗賊鴎

Lより軽量化されたしわ寄せで防御性能が現行コアでは最低レベルとなったが、迎撃装置とMCL-SS/RAYに次ぐ出力と優れた燃費を両立したオーバードブーストによる潜在性が光り、しかも安価な軽量級コアCCL-01-NERをコアに採用している。腕部はグラッジパペットと同じくMAL-RE/REXで、重量級逆関節ながら動きが良く、防御や積載面でも落ち度のないMLB-MX/004に、垂直ミサイルMWX-VM20/1を2つ、連射性能と装弾数に優れるパルスガンMWG-KP/180、高威力の光波を射出可能なMLB-JAVELINを積み込んだ機体だった。
 本来ならCWEM-R20が搭載されているはずだが、今回はそれがない事にクオレは気が付いた。恐らく、弾切れか損傷で武装解除したのだろう。
 そのターボクロックに、トボトボと歩きながらライフルを撃つACが現れた。
 グラッジパペットが銃撃を仕掛ける前に、ターボクロックは即座に左腕を振るい、光波を射出した。鏃型の光波が、空気を切り裂いて飛んでいく。
 MLB-JAVELINは、バーテックス戦争開戦前にYWL16LB-ELF3として登場し、攻撃力と発熱量を増大させた短距離型ブレードとして注目されたが、それ以上にレーザーキャノンクラスの高出力光波を射出可能な事でも知られていた。型番変更後、改良によって消費エネルギーが前身モデルの約半分に低下し、更に光波出力が上昇したが、一方で刀身消失と言う弊害にも見舞われていた。
 しかし、標的ACの脚部・CLM-02-SNSKの左足を一撃の元に両断するその破壊力は、刀身消失と言うハンデを補って余りあった。足を失ったACは地面にうつ伏せに倒れ、そのまま動かなくなった。
 ターボクロックは倒れた敵機をガレージまで引き摺って行き、背部に据え付けられていた白い箱の様なものを引き剥がし、歩兵達を呼び集めた。
「早くパイロットを救出するんだ!」
 兵士達は即座にハッチに取り付き、開けに掛かった。あれは任せておいても大丈夫だろうと判断し、ジオストラはグラッジパペットとポットベリーの所へと戻る。
 クオレは敵機にマシンガンを撃ちながら、オペレーターに状況報告させていた。
「ハインライン、同業者達はどれ位生き残ってる!?」
「今の所AC2機、スティンガー2機の被撃破報告があります。いずれもACの自爆に巻き込まれての大破。それぞれに搭乗していたイェーガーは殉職です」
「自爆!?」
 クオレとアルジャーノンは耳を疑った。
「追い詰められた少年レイヴンが、イェーガーを道連れにACを爆発させたとの事です……」
 ハインラインの表情が翳った。
 その気持ちはクオレも同じだった。自分もやってきた事とは言え、少年少女を死なせるのは気分の良い事ではない。ましてや、クオレは妹エリーを殺された身分である。自分より若い者が死んでいく虚しさや悲しみは良く分かっている。
「クオレさん!」
 アルジャーノンが叫ぶと共に、グラッジパペットが銃撃された。フォースフィールドで弾は減衰されたが、左肩の迎撃装置が火花を吹いた。感傷を打ち砕かれ、クオレは即座にマシンガンを向ける。
「このヤロ、何しやがる!」
 マシンガンを向けた先では、ぎこちない動作でライフルをトボトボ撃つACの姿があった。
 フレームはCR-H69Sが生産中止され、型番がCR-YH70S2から変更されて以来、新米に支給されるACに搭載されるようになったCHD-03-CAT、もっとも無難なコアCCM-00-STO、汎用腕部CAM-11-SOL、もっとも安価な
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1..6 7 8 9 10 11 12]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50