#04:盗賊鴎

ポットベリーもハンガーから離れた。バズーカは勿論、両肩に装備されたミサイルも既に弾薬はフルリロードが完了、ボタン一つで発射可能な状態となっていた。
「クオレ! チェイン基地にレイヴンが急速接近!」
 風雲急を告げるハインラインからの通信が、周辺に居た他のスタッフや士官、オペレーター達からも先は違えど一斉に発せられた。それを裏付けるように、爆発音がかすかに聞こえて来る。
「くっ、レイヴンどもめ……」
 ダビッドソンの顔が怒りで歪む。
「動ける者は錬度を問わず出撃せよ! レイヴンどもの好き勝手を許すな!」
 グラッジパペット周辺で、パイロット達が一斉に各々の愛機へと駆け出す。早いものはクオレに先んじてハンガーを飛び出している。
「よし、出撃!」
 命令を受けたグラッジパペットは即座にハンガーより飛び出した。
「頑張ってくれ、若人たちよ。幸運を祈る!」
 激励を最後に、ダビッドソン少佐の顔は通信モニターから消えた。


 2期のACが飛び出した先では、既にレイヴン駆るACとイェーガーやハンター側の兵器が銃撃を交えていた。交戦中のスティンガーの横に位置したグラッジパペットが、早速マシンガン二挺での援護射撃で眼前の黒い敵ACを沈黙させにかかる。
 相手は汎用頭部CHD-SKYEYE、普遍的な中量級コアCCM-00-STO、CR-A71S2から型番が変わった後に改修され、安価で中量級腕部としては軽量かつ各性能バランスの良い性能となったCAM-11-SOL、汎用脚部CLM-02-SNSKで構成され、クレストから「クレスト白兵戦型」の名で販売されていたフレームだが、その堅実志向のフレームが情け容赦なく弾幕に穿たれ、引き裂かれる。
 遅ればせながら敵ACも両手に携えたマシンガン・CWG-MG-500で弾幕を張って反撃するが、クオレを狙ったその瞬間、ポットベリーからバズーカを、更にスティンガーから携行型粒子砲ブリューナクの一撃をもろに食らって上半身を四散させた。
「たった今、ダビッドソン少佐から通達です」
 交戦開始から幾らもしないうちに、ハインラインから通信が届いた。
「レイヴンはなるべく撃破せず、出来るだけ戦闘能力を奪う程度に留めて欲しいとの事です。降伏させる事が出来るなら、それでも良いとのお達しです」
「どうして!?」
 ポットベリーを軽く小突き、グラッジパペットはアレを見ろと頭部パーツで示す。人間が顎で示すように。
 視線の先では、破壊されたACがハンガー近くまで牽引され、寄って来た歩兵達がレイヴンを中から引き摺り下ろしている様子が展開されていた。レイヴンを見て、アルジャーノンは目を疑った。
「僕と同い年ぐらいの少年じゃないですか!」
「そう言う事だ」
 クオレの目の前でも、先程彼が破壊したACから少年が這い出して来ていた。彼は地元ハンターのスティンガーに拾い上げられ、ハンガーへと連れて行かれた。
「どうして……」
「疲弊してる事に加え、レイヴン連中も後継者がないからだ」
 現在、世界各地で減少傾向にあるレイヴンに進んでなろうと言う者は稀である。何故なら依頼を選ぶ自由も、愛機のアセンブリを選ぶ自由も、全てハンターに組すれば済む事だったのだ。
 イェーガーとなれば、地球政府認可の武装NGO(非政府組織)と言う立場上、社会貢献を余儀無くされる為に依頼を選ぶ自由はなくなってしまうが、最低でもそれなりに安定した収入を得る事が出来る。だがそれがないレイヴンは、最早社会のガン細胞も同然と見なされていたのである。
 しかも、レイヴン達は総
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まろやか投稿小説 Ver1.50