#04:盗賊鴎

費用が差し引かれて本人の元に届くのである。
 その為レイヴンとは違い、ハンター達に支払われる報酬が50000cを超える事は稀であった。仮に依頼報酬が50000cだったとしたら、ハンター個人に直接届く報酬はその3分の1程度しかない。
 ただし、大きな作戦を成功させた功労者には、時として100000cを超える特別報酬が振り込まれるほか、ハンター組織が所属しているハンター達の経費負担を請け負っている為、ハンター組織の経済状態にもよるが、戦場でも強力だが高価な実体弾や、高値なACパーツを活用しやすくなっている。
 イェーガーズチェインでも同様だったが、しかしクオレは高価な実体弾は使っていない。理由としては高価だからではなく、1発ずつランチャーに装填して行かねばならないロケットやミサイル等と違い、マシンガンは1発10c前後の安価な弾を数百発から千発詰めたマガジンを交換するだけで弾薬補給が済み、しかも空になったマガジンは専用の補給装置を解することで容易に弾が再装填出来る。そのため結果として整備に手間がかからないからと言う点で、クオレはあえてマシンガン主体で戦っていたのであった。
 更に、ファシネイターを叩き潰すためには2丁のマシンガンによる弾幕で押し切るのが最善とクオレが思っている事に加え、玉単価の高い武器は総じて重量も嵩張るため、MLM-MX/EDGEに積むには負担が大き過ぎると言う事情もあった。
「だから後で経費申請しとけよ」
「はい、そうします」
 会話の間に、グラッジパペットの右肩には、予備として持ち込んでいた軽量レーダーCRU-A10が新たに接続された。クオレがACを駆るハンターとなった際、支給された機体の肩に搭載されていたものだ。
 性能自体は、リアルタイムで敵の居場所を更新する以外、旧型番のCR-WB69RAと大差はない。機体付加が軽く、アリーナにおいてはECMでも使われない限りは問題ないと言われているものだが、付加機能が一切なく化物を相手取るには不安が否めず、機械生命体にECMを使われればそれだけで旗色が悪くなる。
 そんなレーダーなので、クオレとしては「無いよりはマシ」程度の認識でしかないのが実情だ。
「ハインライン、状況はどうなってるんだ?」
 整備未完了のまま、クオレはハインラインとの通信回線を開いた。
「レイヴンとイェーガー及びハンターの交戦は、引き続き継続中。周辺地域より――」
「いや、私から詳細を説明する」
 オペレーターの言葉を遮り、通信モニターに新たな男性の顔が映し出された。ハインラインよりは若いが、それでも四角い顎に短く切り揃えられた黒髪は、纏っているイェーガーズチェインの制服も相まって、いかにも将校を思わせていた。そんな彼の青い瞳が、クオレを見据える。
「クオレ殿に……アルジャーノン殿ですな?」
 呼びかけられ、ハンター2人は即座に頷いた。
「イェーガーズチェイン・インファシティ支部のハンク=ダビッドソン少佐だ」
「どうも、少佐」
「お初にお目に掛かります」
 特に畏まった様子もなく、クオレは敬礼を、アルジャーノンはお辞儀を返す。武装しているとは言え、イェーガーズチェインは正規の軍隊とは違うので、将校とそうでない者の会話も、極端には硬くなっていない。礼についても、極端に礼儀を損なうものでなければ認めてくれる風潮はある。
「さて、現在交戦している敵レイヴンはいずれも、“ルブラ・コルヴス(赤い鴉)”から送り込まれていた連中だ」
「レイヴン斡旋企業ですか?」
 確かにそうだがと前置きした上で、ダビ
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まろやか投稿小説 Ver1.50