#04:盗賊鴎

撃破する必要はなくなりましたね」
 ジオストラが呟く。
「ああ。彼女にはもう……危険はないからな」
 クオレは武装解除したレーザーブレードを拾い、また左腕に装着し直し始めた。
「よかった……一時はどうなる事かと思いましたけど……」
 神経を張り詰めさせていたアルジャーノンは大きく安堵の息を漏らした。
「クオレ、彼女を第2滑走路まで誘導してください」
 ハインラインは慣れたもので、先の交渉劇にも全く動じぬままに職務をこなしていた。
 周辺では、イェーガーやハンター達によって生き残ったレイヴン達の武装解除が進められていた。生き残った者達は悉くが第2滑走路に集められ、ACから降りるよう命ぜられた上で、ハンガー前に集められていた。クオレの予想通り、集められたパイロット達は少年少女ばかりだった。
 クオレも少女のACを誘導し、イェーガーに引き渡す。
「ハインライン……こいつ等はどうなるんだ?」
「どうでしょうか……然るべき取調べの後、元の生活に戻っていく――そうなってくれれば、喜ばしい事なのですが」
 自分には分からないしどうする事も出来ないと、ハインラインは苦い顔であった。
 程なく、ダビッドソン少佐より戦いの決算が発表された。被撃破機はAC3機、スティンガー2機。何れも敵の自爆によるものであった。
 一方、ルブラ・コルヴス本部攻撃隊50機のうち、撃破されたのは16機。確認が取れただけでも撃破した機はAC15機、ACB18機、MT40機以上。イェーガーとレイヴンの戦いの殆どがそうであるように、今回もイェーガー側の勝利である。
 しかし、クオレの気分は晴れない。
 理由としては、自分が説得して無害化した少女の身の事だった。出来る事なら姉に会わせる所まで見守ってやりたいのだが、それは出来そうになかった。何故なら、クオレとアルジャーノンは、あと5時間ほどでインファシティを飛び立ち、本来の拠点に戻らなければならないからだ。
 クオレとアルジャーノンはハンターではあったのだが、今回はあくまでも、機械生命体との交戦に伴う援軍要請により、インファシティ基地へ5日間の期限付きで出向いていたに過ぎず、今日がその期限満了日だった。
「クオレ、アルジャーノン……輸送機の準備を始めます。指示があるまで、そのまま待機して下さい」
「了解……」
 晴れない気分で、クオレは操縦桿から手を離した。意に反してACに載せられ、自爆さえ強要された少年少女たちのことが気掛かりだったのだ。
「敵反応の消滅を確認しました。システム、通常モードに移行します」
 集められたACがすべて停止したのを確認したのか、システムが戦闘終了を発した。しかし、それでもクオレの気分は晴れなかった。
13/10/19 14:50更新 / ラインガイスト
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