#04:盗賊鴎

マから教わらなかったか? それとも、お兄ちゃんかお姉ちゃんが言われなかったかい?」
 フランクな声と姿勢でクオレは話しかける。
 肉親を意味する単語を聞くなり、少女の顔が曇り、涙が頬を伝い出した。身内の事を思い出したのだろうかとクオレは察した。そして後輩に、小声で伝える。
「クソレイヴンどもに邪魔をさせんな」
 アルジャーノンは無言で頷いた。ジオストラは愛機の武器を下げる。
「なあ、どうしたんだい?」
 グラッジパペットがさらに歩を詰める。
「良かったら俺に言ってくれないかい?」
 クオレはグラッジパペットの両手を開放した。赤いMWG-MG/1000と黒いMWG-MG/800の銃身が地面に落ち、更にMLB-HALBERDとMWC-LQ/15も武装解除して地面に転がした。
「クオレ、何をなさるつもりですか……?」
「正気か、君は!?」
 オペレーターと同業者に構わず、喧騒と銃撃が続く周辺も意に介さず、クオレは愛機を丸腰にしてのけた。
 この様子には、流石の警戒気味の少女レイヴンも目を丸くした。大体、戦場で丸腰になる男など聞いた事がなかったからだ。未熟だから当然と言えば当然ではあるが。
「何してるの……?」
「武装、全部外したんだ。こんな俺が危険に見えるか?」
 少女は首を左右に振った。
「うん、そうだろそうだろ」
 クオレは笑って見せた。その様子に、恐怖や警戒、敵意はなるべく出さないように。そもそも、説得する上であからさまな敵意は絶対禁物なのだから。
「なあ、教えてくれないかい? 何でお嬢ちゃんがこんな事してるのかって。パパとかママとか、お姉ちゃんとかお兄ちゃんとか、あと妹とか弟とかはどうなんだい?」
「どうしてそれを聞くの……」
 それを説得のダシにしようと等とは言えない。だが個人的感情として、クオレは彼女の家族構成が気にはなっていた。孤児だったら家族を盾に交渉する事は出来ないが、もし、彼女が普通の市民だったなら……。
「俺は家族――父も母も姉も妹も、みんないなくなったんだ。クソッタレの忌々しい筋金入りド畜生のジナイーダのせいでね。君も同じなのかい?」
「ううん」
 クオレは安堵した。人間と交渉面、両面において。
「お姉ちゃんが生きてる」
「そうか……で、君に提案なんだけどさ」
 クオレは早速本題に入る。
「お姉ちゃんに会いたいとは思わないのかい?」
「うん……でも……」
 すぐに肯定しないところからすると、訳アリのようだな――クオレは察するや、黙って耳を傾ける事とした。
「レイヴン達があたしを強引にACに乗せて、従わなかったら殺すぞって! お姉ちゃんに会いたいのに……危険になったらこいつを押して自爆しろ、さもないと殺すぞってあたしに!」
 やっぱりなとクオレは頷いた。
 大体、ACに乗れなくても事務員や指導員など、何かしらの形で組織などに関与し続ける事も出来る本職のハンターや、ACに乗れなくても食い扶持のある兼業ハンターとは違い、ACに乗れなくなれば野垂れ死ぬ立場のレイヴンである。
 そんなレイヴンには、生き残る為には形振り構わぬ、他人の迷惑や事情など欠片も考慮しない連中ばかりが揃っている。ゆえに誘拐や裏切り、闇討ち等の卑劣な手段は幾らでも取って然り。彼等からしてみれば、恐喝など日常茶飯事なのだ。
「だったら会わせてあげようか?」
「でも……レイヴンが……」
「安心していいよ、必ず会えるから」
「誓う?」
 保障は出来ないとつい答えがちだが、それはならんとクオレは自問自答する。例えそれが嘘であったとしてもだ。過酷な現実を
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まろやか投稿小説 Ver1.50