ヘリに回収されたグラッジパペットとポットベリーは、そのまま1時間をかけてヘリに揺られた末、インファシティのイェーガーズチェイン基地へと運ばれた。
到着早々、2人はヘリから下ろされ、ハインラインに誘導されるまま、第2ハンガーのCブロックまで愛機を移動、ガレージ作業員の誘導に従い、整備用ハンガーに固定された。
すぐさま機体各所をブルーレーザーが走査し、機体の破損状態をチェックする。扇形に広げられた光線が機体表面を撫で終えると、作業マニピュレーターがハンガーから伸び、戦闘で欠損した装甲をレーザーで溶接して傷口を塞ぎにかかった。破損状態の酷いものは、周辺のパーツごと外され、交換されていく。
「それにしても……」
アルジャーノンは整備されている先輩のACを見て、ある事に気が付いた。
「よくレーダーレスで此処まで来られましたね……」
彼の目の前で、グラッジパペットから肩部レーダー・CRU-A102が取り外されていたが、よく見ると随所が焼け焦げ、ロッドが折れていたりで完全にオシャカになっていた。交戦の最中に損傷して機能低下していたのだが、帰還途中、ヘリに揺られているうちに完全に機能を失ったのである。
ちなみにこの肩部レーダー、旧型番はCR-WB73RA2と言い、付加機能はバイオセンサーだけという外見に違わぬ簡素ぶりだが、現在はリアルタイムでレーダーを更新するようになったため索敵面では若干強化されている。
「確かその頭……レーダーなかった筈では?」
グラッジパペットの頭部であるMHD-MX/QUEENは旧型番のH11-QUEEN時代、範囲が短い事で一部パイロットから不評を買っていたレーダーがあったのだが、型番変更後は軽量化と引き換えに、そのレーダーが廃されている。その為背部レーダー損傷は索敵機能低下に直結していたのだった。
「ああ、確かにない」
当たり前のようにクオレは言ったが、特に動揺している気配はなかった。整備士達が動き回り、ACやその他兵器が慌しく出発していく中でも。
「これでカメラがイカレて目視出来なくなったならヤバイ所だったが、目視出来るなら大丈夫だ」
「後ろ大丈夫なんですか? 今回は僕が居たから良かったものの……」
「それはある程度カンだな」
クオレはあっさりと言った。
「それに、バイオセンサーが死んでなかったからな。それだったら十分戦える」
現在、MHD-MX/QUEENにはレーダーが失われているが、代わりにバイオセンサーが搭載されている。他の旧式頭部、例えばMHD-RE/005やMHD-SS/CRUSTと言った、型番変更前には何も付加機能がなかった頭部にも、現在ではその一部ではあるがバイオセンサーが搭載されるようになった。
ハンター達にとって、基本的にあってはならない事がバイオセンサーの欠如であった。何故ならモンスターを、時として複数相手取るので、バイオセンサーがない場合、ロックオンが出来ない状態で化け物の大群を相手取る事の過酷さを、死ぬ前に体験するハメになりかねないのだった。
5年もハンターをやっているクオレであるから、その辺の事は痛いほど理解していた。
「でも、これ……」
アルジャーノンが整備されていく己のACを見て不安を抱いた。
「整備費用とか取られるんじゃ?」
「大丈夫だ」
クオレは笑った。
「イェーガーズチェイン基地なら、経費申請すれば心配は要らない」
レイヴン達と違い、ハンター達の報酬は本人ではなく、まずは所属組織に納められる。その後、そこから申請した分の経費など諸
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