#03:蟲の襲来

ベリーは道脇で足を止め、味方が横切るのを待った。
 右手側から土煙を上げ、車両の列が現れた。
 まず最初に目に付いたのは、黒光りの装甲を有する反重力駆動の装甲車両群だった。
 若きAC乗り達は、それが「アーマード・カファール」と呼ばれており、ハンター達からは「武装ゴキブリ」と仇名され、レイヴン達から「ゴキブリ戦車」扱いされて忌み嫌われるシロモノだと気付くのに、時間は掛からなかった。
 名は体を表すの言葉通り、この反重力駆動の戦闘車両は頑丈さには劣るものの、ブースターの併用によって時速600キロと言う最高速度をマークし、驚異的な小回りをも発揮する。量産性にも優れており、その敏捷な動作と群れを成して動き回る姿はまさにゴキブリであった。
 更にいえば、容姿も何となくだがそれっぽい感じであった。ただし、触覚は戦闘機の尾翼を思わせるアンテナブレードになっており、機体正面、ゴキブリの上翅に当る部分は装甲で覆われ、その下にコックピットやフォースフィールドジェネレーターが内蔵されている。
 武器は車体前面のバルカン。他に、車体上面にはレーザーキャノンやミサイルランチャー等を、状況やパイロットの好みに応じて装備する事が出来た。事実、15台を数える武装ゴキブリ達は、ガトリングガンやレーザーキャノン、120ミリカノン砲、10インチ口径榴弾砲など、様々な装備を施していた。彼らには、いずれも地元ハンター組織のエンブレムが刻まれていた。
 その後ろから、大型トラックやトレーラーの車列、スティンガーと呼ばれる人型機動兵器7機が出現した。
 スティンガーは過去に存在したとされる、面倒臭がりで有名な同名のレイヴンとは全く関係のない、ACよりも一回り小柄な機動兵器である。
 装甲こそ脆弱だが、小柄である為に機動力に優れ、さらにエンジン出力の高さから瞬発力・最高到達速度はACを凌駕する。そのメイン武装である携行型電子砲「ブリューナク」は出力の調整が自在に可能で、最高出力時は現行の重量級ACコアに致命的打撃を与えられる程だった。
 その為、高機動・高火力・低コストと3拍子揃い、バーテックス戦争末期にデビューして以来、物量にモノを言わせた組織的戦闘も相まって、アセンブリが意味を成さなくなったACを戦場から駆逐するまでに至った。
 そしてこのスティンガーをきっかけに、MTはそれまでの機種とはかけ離れた性能を得るに至り、やがて今日における戦場の主役となる新世代型機動兵器へと進化したのだった。
 これらの機動兵器は、今日ではACB――アーマード・コア・バスターと総称されている。
 勿論、ハンターの中でもスティンガーを初めとするACBを愛用する者は多い。クオレの同期ハンター達にも、スティンガーのパイロットが何人もおり、そのうちの一部とは実際に共闘もした事があった。
 クオレも、最初ジナイーダを殺す為、単機でのAC撃破報告も多数出ているスティンガーのパイロットになろうと考えていた。しかし、彼は最終的にACのパイロットとなる事を選んだ。
 と言うのも、彼がハンターとなったのは今から5年前――西暦3092年の事だったが、その頃既に、ACは現在と殆ど代わらない性能となっており、性能面でならACB機動兵器と拮抗しうる存在になっていたのである。「拮抗する」ではなく「拮抗しうる」としたのは、やはりコスト面で水を開けられている上、アセンブリ如何ではACBに敵わない事も多い為である。
 それでも、今のACは、バーテックス戦争末期とは違ってACBに一方的に蹂躙される存在ではなくなった上、武装換装が
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まろやか投稿小説 Ver1.50