#03:蟲の襲来

獲物の逆襲には弱く、逆襲されて逃走と言うケースも数多く知っていた。
 サンドローチにも同じ事が言えた。ここでもし、引き撃ちに転じたならば、連中はそのACを弱い生物、すなわち獲物として認知し、どこまでも追いかけて来る事だろう。その為圧倒的な力を持って逆襲し、群れを退散させてしまう方がよいと、クオレはハンターとして実体験していた。大抵の野生動物同様、彼等は分断されて襲ってくる事はなく、皆揃って逃げるのが常だった。
 二挺のマシンガンで突撃と言う戦法も、その実経験に基づくものだった。
 24時間戦争と、その後のバーテックス戦争のように「CR-B83TP積んだ中量2脚で、ライフルやマシンガンを二挺構えて引き撃ちしてればよい」と言う、安易なアセンブリと戦法だけで生き延びられる時代は既に終わっている。世界に蠢くモンスターや機械生命体の類には、ライフル程度の弾では傷一つ付かないと言うシロモノが当たり前のように存在しているのだ。
 事実、機械生命体側に寝返ったデバッガーや、ランドワームの外皮はマシンガンでは傷一つ付かなかったのだ。しかも、このランドワームは世界各地で出現が確認されており、時にはコンクリートの壁や鉄管をぶち破って下水道に侵入する事すらあった。
 その大ミミズの化け物がまた来ないうちに急げと、クオレとアルジャーノンは互いを急かせ、急いでその場を後にし出した。
「また赤い点がありますよ……」
「今度は何だ?」
 答えはすぐ傍の巨大なシダの影から現れた。青黒い外骨格に身を包み、所々に刺を生やした、巨大なハエに似た化け物が、カマキリの様な前足を振りかざしてグラッジパペットに飛び掛ってきた。が、すぐにマシンガンで粉砕された。
「今度はベルゼバブか……」
 魔界屈指の大悪魔の名を口にするクオレだが、勿論、この巨大ハエが伝説の大悪魔であるわけがなく、単にハエに似た姿をしていることからそう呼ばれているに過ぎない。
 例によって、正体は野生化した生物兵器の成れの果てだ。
 クオレが悪態をついた直後、新手のベルゼバブが飛び掛ってきた。しかし、またしてもマシンガンの餌食となって終わった。
「気を付けて下さい、新手が来ます!」
 アルジャーノンが言うとおり、枝の粉砕音と葉擦れに続き、巨大なハエが8匹飛び掛ってきた。ポットベリーはオーバードブーストで逃げ、グラッジパペットはマシンガンでハエを撃ち落しに掛かる。だが、ベルゼバブは動作がかなり素早く、周囲を飛び回られるとマシンガンでも中々捕捉出来なかった。
 それでも、ポットベリーを追いかけた3匹は即座にマシンガンで撃墜。後輩の一時的安全を確保する事には成功した。
 結果、グラッジパペットはハエの集中攻撃に遭うことになった。
 ベルゼバブは口から溶解液を吐き出し後、急速離脱すると言うヒットアンドアウェイでグラッジパペットを痛め付けに掛かった。しかも、一部個体はファイアーボールまでも繰り出して攻撃して来た。
 その正体は、彼等が体内で生成した、大気中の酸素に反応して激しく燃焼する性質を持つ化学物質だったのだが、それをコア後方から浴びせられ、機体温度が急上昇。遂には危険域に達し、警告アラームがコックピット内に響く。クオレの全身から汗が噴き出し、赤いパイロットスーツに汗染みが広がった。
 これにはたまらず、クオレは一度愛機を離脱させる。
 しかし、この巨大ハエは、ちょっとやそっとのブースト移動で振り切れる相手ではなかった。軽量級2脚にも匹敵する俊敏性で追いすがり、フラフラと飛び回り、時に溶解液やフ
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まろやか投稿小説 Ver1.50