#03:蟲の襲来

抉った。
 ランドワームは口から溶解液を吐き出してポットベリーを狙ったが、吐き出された黄色い噴水を見るや、ポットベリーは素早く左腕のシールドを展開した。ターコイズブルーのエネルギーフィールドが発生し、強酸体液は力場に触れて白い煙を上げながら、その表面を伝って地面に落ちた。
 その間に距離を取る事が出来たグラッジパペットが反撃に転じた。インサイドカーゴを開き、秘密兵器の内装式ミサイルを口元にお見舞いする。インサイド内臓の為、威力は小型ロケットと同水準程度で、その弾数も両肩合わせて10発と少ない。
 しかし口元に着弾したミサイルは牙を吹き飛ばし、ランドワームに苦痛の絶叫を上げさせる程度には十分な威力だった。牙を折られた巨大ミミズは残る牙を外皮の下に収容し、地面に潜って逃げ出した。
「クオレさん、大丈夫ですか!?」
「ああ、心配いらない」
 クオレが言うとおり、グラッジパペットはランドワームの攻撃を無傷で生き延びていた。
 再び帰還を急ぎ出した2機だったが、暫く進むと、アルジャーノンはすぐに背後から迫る反応に気がついていた。彼の背後で、凄まじい土煙を上げて何かが迫っている。
 土煙の中に見えた三葉虫の様なフォルムを認め、少年は叫ぶ。
「サンドローチ!」
 ミラージュが培養した生物兵器が野生化した成れの果てとは言え、三葉虫の様な無骨な外見からは、砂ゴキブリと言う名前は想像しづらい。しかし集団で素早く動き回るその姿を見たならば、誰もがゴキブリを思い浮かべる所であった。
 アルジャーノンが叫んだ直後、正面にある第3の眼の様な器官から、蒼白いパルスレーザーが次々に繰り出され、ポットベリーの背中に当った。それはフォースフィールドに守られた重量級コアを貫くには程遠いが、それでもパルスライフルと遜色ない出力のエネルギー弾である上、複数から一度に撃ちかかられるので厄介だった。
「俺がやる! 先に行け!」
「すみません!」
 アルジャーノンは先輩に急かされて先へと進んだ。この素早い相手を狙うには、幾らアリーナでの使用禁止武器とは言え、バズーカは不向きだった。
 足止め役を買って出たグラッジパペットはすぐにサンドローチへ向けて、マシンガンを撃ち、更にその群れに突っ込んでいった。
 ランドワームとは違ってサンドローチの外骨格は脆く、弾幕に襲われた5匹が、まず派手に体液を撒き散らしながら吹っ飛ばされた。続いてグラッジパペットの手近な所にいた3匹が立て続けに射殺された。
 一瞬にして仲間8匹を殺されたサンドローチの群れは四散を始めた。一部、死んだ仲間に食らい付き、その遺体を引き摺っていく個体もいた。その逃げて行く個体の一部にも、マシンガンの弾が叩き込まれ、更に撃破スコアを伸ばす。
 そうして20匹ぐらい倒し、クオレはもう十分だろうと判断し、その場から逃げ出した。
 再び合流した2機は、その後も荒野を急ぎ進んだ。
 その間、先程蹴散らしたものとは別の、サンドローチの団体が3回出現したが、それらは全てグラッジパペットに追い払われた。
 クオレはこの手の生物の対応を知っていた。人間同士の戦いならいざ知らず、弱肉強食の生物界でヘタに逃げ出す事は自分の命を危険に晒すのと同じ事である。この事を、クオレはくどいほどに叩き込まれた。
 世に放たれた生物兵器達に限らず、肉食生物の類は、一度逃げようとすると執拗なまでにそいつを狙ってくる事をクオレは知っていた。何故なら逃げる事は即ち相手との対峙の放棄、弱者を意味し、その瞬間に標的となるのである。一方、捕食者は
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まろやか投稿小説 Ver1.50