#03:蟲の襲来

た。
 ユーグレナ自体は生物兵器というわけではない。より強力な生物兵器を育成し、その餌とする為に作出された生物である。半透明の本体に体内に共生藻を大量に宿しており、その為に体が緑色に見える。この共生藻が光合成で作り出したエネルギーを分けてもらって生きているのである。
 彼らには戦闘能力などなく、無論こちらを攻撃してくる事もない。よって、相手にするだけ弾薬の無駄であり、単体では脅威になる要素など全くなかった。
 唯一懸念すべきは、他の敵を相手にしているときだった。他に狙うべき相手をロックオンしたつもりでユーグレナをロックオンした、と言う事があったりするのである。
 クオレは戦闘態勢を解除し、ユーグレナの群れが飛び去るのを見送った。
 その頃、ハインラインは素早く手元のパッドを叩き、周辺一体を監視している衛星から送られるデータを呼び出していた。そしてすかさず通信モニターに向かう。
「後方より大型動体反応を感知! 警戒願います!」
 モニター上で、グラッジパペットとポットベリーの後方の土中から、振動を示す反応が検出され、それが徐々に接近している事を伝えていた。
 ハインラインがデータに目をやっていた頃、クオレはオペレーターの発言に従うように、即座に後方へ向き直った。視線の先で地面が盛り上がり、かなりのスピードで迫って来ていた。
「来るぞ、備えろ!」
 クオレが叫び、グラッジパペットが横に飛んだ刹那、地面の盛り上がりが爆発した。土煙と砂埃が派手に立ち上がる中、2メートルを悠に越える直径の巨大な筒が出現し、グラッジパペットの左手側を通り抜けた。その先端部を緋と黒の中量級2脚に向け、先端部を包む外壁を捲れ上げ、格納されていた6本の巨大な牙を剥き出しにする。
 星印状に配された牙の内側で、赤黒い粘膜がおぞましく蠢く。
 クオレはこの、全長30メートルを悠に超えるミミズの化け物が、「ランドワーム」のコードネームでミラージュが培養していた生物兵器の成れの果てであると知っていた。
 グラッジパペットは両腕に備えたマシンガンを一斉に撃ちかかった。これがAC相手であるならば、多少の損害を与える事も出来ようものなのだが、大質量で土中を自在に這い回るこの化け物には傷一つ付かなかった。しかし口元に被弾した衝撃に巨躯は若干身じろぎし、グラッジパペットが距離を稼ぐ時間が出来たのは確かだった。
 ランドワームはグラッジパペットを食い殺そうと牙を繰り出すが、後5メートルのところで牙は虚しく空を噛んだ。
 視覚の存在しないランドワームは、振動を頼りに狩を行う。よって、地上を動くものは全て獲物として認識するのである。勿論、無意識的に牙をかわすクオレには大人しく食われてやるつもりなどない。
 そしてそれは、鈍足ACポットベリーを駆る少年も同じ事だった。
「これでも食らえ!」
 爆発するような砲声と共に、CWG-BZH-40の砲筒から火薬をたっぷり詰めた砲弾が飛び出す。旧型番のCR-WH05BP時代、そのあまりの性能ゆえにアルティメットバズーカ等と呼ばれ、アリーナにおいて使用禁止が通達されるほどのシロモノであった。
 あれから30年以上経過した今も、その性能は全く損なわれていない。
 その直撃を受け入れた途端、爆発したランドワームの表皮が肉もろとも抉り取られた。身の毛もよだつ絶叫を上げて巨大ミミズは地面に倒れたが、軋む様な唸りとともに、すぐにポットベリーへと向き直る。
 だが、バズーカが2度、3度と立て続けに砲弾を繰り出し、ランドワームの表皮を深々と
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まろやか投稿小説 Ver1.50