#03:蟲の襲来

るが、その弾頭が何だったのかまでは、彼には分からなかった。もしここに核ミサイルや水爆が飛来したならば残留放射能を危惧しなければならず、万一にでも外に出ようものなら被爆の危険性もある。人体細胞をガン化するバリア発生装置のパルスも嫌だが、これもまた真っ平御免であった。
 更に、此処がもし、バーテックス支援企業であったローゼンタールやレイレナード等が支配している地域だった場合、彼等の兵器によるコジマ粒子汚染の危険性まであった。大崩落の際、レイレナードのコジマ粒子リアクターがメルトダウンした結果、半径120キロ四方がコジマ粒子汚染され、人間の住めない環境にした重罪まであるぐらいである。
 しかも、そのコジマ粒子は人体に深刻な汚染をもたらすのみならず、どう言う訳かモンスター達の適応能力を高めるばかりか、脳細胞を冒して凶暴化させる効果まで確認されているのをクオレは知っていた。そのため彼からすれば、コジマ粒子汚染は放射能汚染よりも相当性質が悪かった。
「おい……ここは放射能汚染されてるとかそういう事はないよな?」
 不安がクオレの口をついて出た。
「いえ、ここに核ミサイルやコジマ粒子兵器が直撃したと言う情報はありません。10年前に地球政府が行った調査では、放射能は検出されなかったと報告書にあります。付近で戦闘したハンターが被爆したと言う情報もありません」
 どうやら放射能汚染の心配はしなくて良いらしい。一瞬安堵したクオレとアルジャーノンだったが、しかしそれは慰めになり得ない。
 この地域ならともかく、他地域に行けばコジマ粒子汚染や環境変化、流出した化学物質等によって異常な変化を遂げたモンスターが襲ってくる可能性は常にある。しかもそれは、人類生活拠点たる都市から外れれば、どこに行こうが似たような状況なのである。
 中には生物兵器がいない地域もあるが、今度は機械生命体の襲撃に備える必要がある。
 それすらもいないようなら、残念ながら人間――レイヴンや強盗団の襲撃を警戒しなければならなかった。
 バーテックス戦争は世界中を戦渦に巻き込み、親や社会との繋がりを失った子供達は戦闘員に身を投じたり、強盗やテロリストに落ちぶれたりと、進化を逆行した。クオレは、そうした子供たちを嫌と言うほど目の当たりにし、時として命を奪われかけた事もあった。
 しかし、クオレはそうした子供達すらもその手に掛けて生き延びている。強さを追い求めた末に人の心を失い、悪逆無道・冷酷無情・極悪非道の悪魔と化したジナイーダを殺す為には仕方のない事だと割り切った上で。
「何か来てます」
 アルジャーノンが廃墟を抜けたあたりで、レーダーに何か反応があると訴えた。
「何かって何だ? こっちはレーダーがイカレてて良く分からん」
「生物です」
 ポットベリーの生体探知レーダーは、脈打つ心臓の如く一定周期で収縮を繰り替えす赤い点を幾つも表示していた。
 生物の一声で、クオレは即座に警戒態勢に移行した。
「どこだ!?」
「2時方向!」
 グラッジパペットは即座にマシンガンを向けた。確かに、南西に銃を向けるとロックオンマークがメインモニターに表示された。MHD-MX/QUEENに型番変更して以来、この頭部は生体センサーが搭載されるようになった為、生物相手でも対応が可能なのである。
 そのまま、クオレとアルジャーノンはモニターをズームする。蒼白い燐光を発しながら、木の葉に似た緑色の薄っぺらい生物の群れが進軍しているのが分かった。
「ユーグレナですね」
「何だ」
 途端にクオレは戦闘態勢を解除し
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まろやか投稿小説 Ver1.50