#03:蟲の襲来

精々のACB機動兵器とは違い、フレームそのものも換装可能なACは、戦場適応は勿論だが、「自分流の愛機」を構築出来る点に魅力があった。それに惹かれる者はハンター達でも数多く、クオレもその例外ではなかった。
 川のように続く通商団とその護衛軍団だったが、スティンガー3機と逆間接型AC、2脚型ACを最後に、何も現れなくなった。
 そのACも、やはり地元のハンターが乗っていたが、2脚ACを見たクオレの目が変わった。
「……インクリアーか?」
 2脚ACを見つけ、クオレはすかさず通信モニターを開いた。
「その声はクオレか!?」
 インクリアーと呼ばれた彼も応じた。赤毛のクオレとは対照的な、オールバックの黒髪に茶色い瞳の青年が映し出され、驚きと安堵の混じった微笑を浮かべる。
「久しぶりだな! 乗ってるACが随分派手に変わり過ぎてたから誰かと思ったぞ」
「いやー驚かしちまって悪いな。ちょっと色々あってな、こんな風にしてしまったんだ」
 旧友と思いがけない再会を果たしたクオレは、帰還を忘れて友に歩調を合わせ始めた。
「……クオレさんの知り合いですか?」
 クオレは頷いた。
「3年前まで同じハンター組織に居たんだ。俺はアルビオンに渡って、その後お前に出会った訳だけどな」
 後輩から旧友に視線を移し、クオレは続ける。
「お前は変わっちゃいないな。3年前のクソ真面目なアセンブリのままだ」
 インクリアーの愛機・レギュリナは、旧型番CR-H97XS-EYEの頃からレイヴン・ハンターを問わず支持され続け今も一線で活躍するCHD-SKYEYE、これまた旧型番CR-C75U2時代より標準的な中量級コアとしての地位を保つCCM-00-STO、CR-A72F時代から実弾防御に定評のあるCAM-01-MHL、24時間戦争時代から若干の重量増加と引き換えに実弾・エネルギー両面の防御性能が強化され、今日ではもっともスタンダードな中量級2脚であるCLM-02-SNSKと言う堅実指向のフレームに、ミラージュ社のものより連射力はやや劣るが口径の大きいクレスト製マシンガンCWG-MG-500、ハンター達に支給される一般的なレーザーブレードCLB-LS-2551をその手に携えている。
 背部には、右に小型ミサイルポッドMWM-S42/6、左に中型ロケット砲CWR-M30を搭載し、4発連動ミサイルCWEM-R20で攻撃力を高めているが、その左肩装備のロケットを見て、クオレは違和感を覚えた。
「おい、ガトリングガンはどうした?」
 クオレの記憶によれば、3年前のレギュリナは左肩にCWC-CNG-300が携えられていたはずだが、久々に見るその機体に、それが見当たらない。
「この前ランドワームの溶解液でオシャカにされた」
 なら仕方ないかとクオレは納得した。
 一方のインクリアーは、旧友駆るACに続き、その隣に佇む重量級2脚ACを見やった。その左肩に刻まれた「人間じみた口を開けている壷の口から青い手が伸びている」エンブレムを見て、彼は目を丸くした。
「へぇ、噂通りだな。イースト・バビロンに天才少年ハンター現るって聞いたんで耳を疑ったんだが……」
 少しの間を置いて、ポットベリーの通信モニターにインクリアーの顔が浮かんだ。
「君、アルジャーノンと言うんだろ? レイザーバック少佐の息子の」
「ええ、仰るとおりです。初めまして、以後お見知りおきを」
「凄い、噂どおり礼儀正しい人なんだ……ああ、此方こそ宜しく」
 思わず頭を下げながら、インクリアーは目前のハンター
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まろやか投稿小説 Ver1.50