#02:ラストレイヴンをブッ潰せ!

くそれを体現していた。
 グラッジパペットは中量級2脚だが、そこに「バランスが良い」や、「汎用型」と言った形容は間違いなく入らない。ファシネイターの弾幕を回避しながら戦う事を念頭に置いた為、機動力と火力に重きを置いた強襲型のアセンブリとなっているのだ。
 普段は命中精度と捕捉性、そして連射性能に優れるマシンガンで戦い、距離を詰めるファシネイターを手数で圧倒、マシンガンの効かない相手は一撃に秀でるレーザーキャノン、そしてまだ手付かずだったインサイドで仕留めるのが定石である。特にマシンガン連射はファシネイターのみならず、余程の防御性能を備えていない限りは現行のACに対しても非常に効果的であった。何しろ、連射しながら突っ込んだり、逆に突っ込んでくる相手から後退しながら連射しているだけで、多大なダメージを敵ACに与える事が可能なのだ。
 軽量級腕部とコアを採用し、しかもデコイやコア搭載の迎撃装置がないため、中量級2脚でありながら防御面に難がある構成だが、直撃さえ食らわなければどうと言う事は無い。そして万一としてのミサイル対策に迎撃装置KWEL-SILENTを装備している。
 同業者からはその、あまりにもファシネイター潰しだけを意識した構成に難癖をつけられる事もあったが、彼は気にしていない。憎んで止まぬジナイーダとファシネイターを叩き潰せさえ出来れば、それで良い話なのだから。
 そのグラッジパペットに、よろめきながらファシネイターが近寄って来た。先程破壊されずに放置されていた最後の1機である。そいつはギシギシ軋みながら動いているが、最早ブースターを吹かす事すらままならず、鉄塊同然のありさまとなっていた。
 再びMWG-MG/800を武装解除し、レーザーブレードを生成した上でグラッジパペットは近付いた。そして至近距離からコアを蹴りつけ、ファシネイターを後ろから地面に倒した。
 グラッジパペットは半壊寸前の仇敵の傍らに肩膝をつき、上半身を捻って左腕を引いた。
「テメェは死んでろ!」
 次の瞬間、腕が突き出され、赤い火花と共にMLB-HALBERDが突き刺さった。スパーク音と共にファシネイターは震えたものの、やがてグラッジパペットの左腕が払われ、赤い刀身が内部から鉄屑を切り裂いた。爆発と共にコアが二分され、仇敵は完全に沈黙した。
 ラストレイヴンを叩き潰した若き狩人は、周辺から敵反応が失せたのを確認し、通信モニターを覗き込んだ。
「ハインライン、こっちは終わった。敵戦力が戦場を離脱した」
 通信モニターに甘いマスクの男性が浮かび上がる。何も知らない人にこの人を俳優と紹介したら、そうだと信じ込んでしまうだろう。クオレもその美男子ぶりは認めている。
 しかし彼、アルバート=ハインラインは断じて俳優ではない。その証拠は胸に見えるIDカードにあった。クオレが身を置いている“イェーガーズチェイン”のシンボルであるトウゾクカモメの紋章が、IDカードに刻まれている。
「こっちの様子が分かるか?」
 クオレはグラッジパペットを旋回させ、周囲の様子をハインラインにも分かるように見せた。
 今回、戦場となったのは、大破壊前にユーラシアと呼ばれていた大陸東部の乾燥地帯。黄土色の砂に混じって砂岩や礫岩が随所に転がり、背の低い草が生えている。砂漠というよりはサバンナの様な様相を呈していた。
 かつて此処は湿潤で肥沃な大地だったと言うが、国家間最終戦争である大破壊、ナービス戦争、24時間戦争、更には15年に渡って続いたバーテックス戦争と、その結果として引き起こされたグレート・フォールによっ
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まろやか投稿小説 Ver1.50