#02:ラストレイヴンをブッ潰せ!

色のフィールドが出現し、火花と共に弾丸が弾かれた。
「畜生、バリアを装備してたか……」
 クオレは舌打ちした。本来のデバッガーにはない装備だっただけに、尚更であった。
 このバリアは水蒸気や大気は別として、一定以上の質量を有する物体の一切を通さないもので、ソラックスの様に常時浮遊によってエネルギーを食ったり、スペースが小さいなどの理由がない限りは、機械生命体軍団の多くの機種が装備し、また彼等の側に寝返った兵器にもしばしば組み込まれるものであった。
 しかしクオレはすぐさま対応を変えた。マシンガンが効かないと見るや、レーザーキャノンでデバッガーを砲撃したのである。
 マシンガンを防いだバリアも高出力レーザーキャノンを防ぐのには役に立たず、射抜かれて爆発。直後にもう1機が同じ運命を辿らされた。残る1機は、2機目が爆発するあたりで急速後退して群れに戻った。
 デバッガー2機を屠ったグラッジパペットはACの墓場へと舞い戻り、落ちていたMWG-MG/800を拾い直そうとした。
 しかし、その時ソラックスと生き残りデバッガー4機が突如急速後退。やがて反転し、交戦を放棄して一斉に逃げ去って行ったのだった。
 これまでにもクオレは、戦っていた機械生命体達が突然、前触れもなく急速に戦場を離脱していく様子をしばしば見ている。その目的は定かではないが、彼等は統一された意思の元で戦う事はあっても、基本的な行動ロジックは昆虫のそれに近く、破壊本能や戦闘本能――つまりはプログラムの赴くままに行動している事が殆どである。
 故に、命令解除されれば逃走か特攻のどちらかになりがちで、今回も詳細は不明だが何かしらの命令があって、それが解除されたがために離脱したのだろうとクオレは即座に見て取った。同時に、何かしらの理由に基づく招集に応じた、と言う事も考えられた。
 クオレも彼等の全容を知っている訳ではないが、交戦の気配を感じると出現し、突然去って行くと言う彼等の不可解な行動パターンは知っていた。
「行ってくれたか……」
 クオレは安堵した。レーザーキャノンの発射可能数が、後3回にまで減少していたのだ。これが弾切れしたらデバッガーを倒す事は出来ず、後はマシンガンが切れ次第屠られるのみかと肝を冷やしていた。
「ったく、厄介なものを取り付けたもんだ」
 ジの付く忌まわしい女にそれをしなかっただけマシかと、クオレは常々思っていた。
 機械軍団側のバリア及びその発生装置は、有人ACにも搭載しようと思えば可能だったが、人類側兵器に組み込まれた発生装置は人体細胞をガン化させるほどの、放射能の如き強烈なパルスを発する事が確認され、たとえ全身をサイボーグ化させた強化人間であっても、浴び続けていれば、唯一残っている脳がガンや腫瘍にやられてしまう。
 このパルスは防護服はおろか、コックピットを守るタイプのフォースフィールドも貫通してしまう為、現在、その無力化方法も確立されていない。かと言って、無人機に搭載すれば確実に機械軍団側に寝返ってしまうと言う業物でもあった。
 しかも、都合の良い事に機械生命体側に組み込んだ場合、殺人パルスは全く発されないのであった。事実、戦場で彼等と出くわし続けていたクオレは全くパルスを浴びておらず、ガンも見られない。
 無人機に組み込んだことで暴走が促され、有人機に組み込めば普段は発せられない殺人パルスが生じる為、バリア発生装置自体に有人か無人を判断するシステムか何かが組み込まれているのではないか、との説がある。一方では、装置が拒否反応か何かを起こしてパルスを発していると言う説も
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まろやか投稿小説 Ver1.50