#02:ラストレイヴンをブッ潰せ!

力も高い。おかげで軽量級パーツでありながら、使用パイロットの死亡率は比較的低い。そして、中量2脚としては軽量な事もあってか軽快な動きが出来る。回避には全く困らないものだ。
 むしろ、警戒すべきはハンドレールガン・YWH16HR-PYTHONにあった。
 24時間戦争時代に試験的に生産されたものの、いざ手にとって見れば「レールガンのクセに弾速が遅い」「たいした威力ではない」「そのくせリロードが遅い」「何故か狙った所に飛ばない」との苦情が相次ぎ、結果欠陥品の扱いを受けて僅か1年で生産中止の憂き目を見た事で知られていたのだが、ファシネイターが装備しているそれは、どういう理由なのか、理不尽なまでに性能が強化されていた事でも知られていたのだ。
 他の攻撃は兎も角、これだけは絶対に食らいたくない――クオレの背筋を冷や汗が伝うなか、蒼白いエネルギー弾がグラッジパペットの右手側を掠め飛んだ。件のハンドレールガンが繰り出されたが、ロケットにも劣る弾速のせいで、狙いを外したのだ。
 24時間戦争時代はそれでもまだ、ジナイーダの腕を以ってすればACを狙うに不足は無い所であったが、しかし俊足のグラッジパペットを相手取るには、あまりにも弾速が遅過ぎた。
 3本のレールの間に再び蒼白い光を認め、クオレとグラッジパペットは即座に動いた。再びオーバードブーストを起動し、マシンガンを撃ちながら弾幕を突っ切り、ファシネイターの股下を通過。そのまま旋回し、右手側を向けていたファシネイターにレーザーキャノンを見舞った。チャージ途中だったハンドレールガンが腕部諸共破壊され、ジェネレーターが穿たれた。
 ACの稼働にはジェネレーターで作られるエネルギーと燃料、双方が必要不可欠だった。よって、ジェネレーターが破損しては、ファシネイターも持ち前の戦闘力を発揮出来ず、地面をトボトボ歩くか、ぎこちない動きでブースターを吹かすかのどちらかだ。
 グラッジパペットはそのファシネイターに高速接近し、ジャンプした。そして、運動エネルギーと自重任せにドロップキックを食らわした。右腕をなくしたファシネイターは後ろから蹴られて地面に倒れる。
 更にミサイルポッドとパルスキャノンが蹴り飛ばされ、肘関節が踏まれて外れた。関節が外れた事でマシンガンは地面に向き、最早発射不能となった。
 無抵抗になった所で止めを刺そうと、後退しつつレーザーキャノンを向けたクオレだが、その彼の眼前を蒼白いエネルギー弾が、右から左へと横切った。
 幸い、機体にダメージはない。
「畜生、邪魔しやがって!」
 即座に向き直ったグラッジパペットの眼前には、またしてもファシネイターが1機現れていた。しかも、戦斧と鴉を模った兜のエンブレムを持ち、カラサワの俗称で知られる巨大なレーザーライフルと両肩ミサイルランチャーを携えた色白の重量2脚もセットで。
 更に、その周辺に昆虫を思わせる4脚歩行メカと、肩当と腰当を備えた甲冑の胴体部だけが浮かんでいるようなデザインの浮遊メカの群れが周囲についていた。
 半死状態のファシネイターを無視し、グラッジパペットは即座にレーザーキャノンをロックオン、エメラルドグリーンの光線を迸らせた。浮遊していたファシネイターはコアをぶち抜かれ、何も出来ずにあっけなく爆発四散した。
 更に、浮遊メカの何機かが、ACの破片を食らって道連れにされた。
「ったく、筋金入りのド畜生なんか連れて来やがってよ……」
 クオレの額に血管が浮き上がった。
 彼の目の前にいたのはフォックスアイだった。それは即ち、バーテックス初代宰相となったがために
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まろやか投稿小説 Ver1.50