#02:ラストレイヴンをブッ潰せ!

 グラッジパペットの右腕に携えられたMWG-MG/1000と、左腕に握られたMWG-MG/800が相次いで弾丸を吐き出した。旧型番WR04M-PIXIE2の頃から携行弾数で定評があり、現在はYWH13M-NIXに次ぐ高速連射性能も獲得したマシンガンと、弾数と連射力こそ劣るが一時代を築いた名マシンガンのコンビが弾幕を張り、接近してきたファシネイター3機に襲い掛かった。
 ACはその黎明期、ある程度撃つごとにマガジン、つまり弾倉交換を必要していたのだが、これでは両手に銃を持って戦うACでは交換が出来ず、しかも弾切れしたならば戦場を頻繁に行き来しなければ戦えないと言う事態に陥った。
 これでは戦闘可能時間が補給に割かれ、兵器としての実用性・信頼性に欠くとして、企業はAC用兵器一切の弾倉を大容量化し、また弾のサイズ自体も調整することで携行弾数を増やす取り組みを余儀なくされた。もちろん、弾のサイズと威力の折半に、開発者や各種技術者達が苦心を重ねる羽目になった事は言うまでも無い。
 MWG-MG/1000とMWG-MG/800、それぞれの弾が息継ぎなしにファシネイターに襲い掛かる事が出来るのも、その賜物だった。
 そのうち2機は、左右に逃げる事で弾幕から逃れたが、逃げ遅れた中央の1機は弾幕をもろに浴び、数秒のうちに爆発・四散した。
 クオレは武器を切り替え、再び左肩のレーザーキャノンを倒す。そして、オーバードブーストを起動して横に飛んだ。
 これでファシネイターも敵を捉えたのだろう、浮かび上がるや、パルスキャノンとマシンガン、レールガンを動員しての波状攻撃を仕掛け出した。24時間戦争以来、数え切れないほどのレイヴン達を殺し、時にトラウマを与えた程の鬼畜な攻撃である。しかしその攻撃は、最早クオレとグラッジパペットには通じない。
 36年前の比ではないほどに強化されたMCL-SS/RAYのオーバードブーストは、弾幕をいとも簡単に振り切った。それに伴い凄まじいGが掛かったが、ジナイーダを殺す為だけに強化人間化したクオレにはそれ程苦ではない。逆に瞬間最高時速900キロと言う神速でファシネイターの股下を潜る。
 ただし、クオレはオーバードブーストの長時間噴射はしない。噴射時間はせいぜい3秒程度。それ以上噴射すると優れた速力故に敵との距離が離れ過ぎてしまい、マシンガンが効率的に機能しなくなるためだ。
 グラッジパペットが股下を潜った刹那、ファシネイターの股間が緑色の爆発に食い破られた。一瞬の交錯のうちに、レーザーキャノンが雷光の如く繰り出されていたのだ。レーザーは股間どころかコア背部まで達し、エネルギータンクに直撃。股割きに処された数秒後には地面に落下し爆発した。
 反転したグラッジパペットの前では、まだ1機のファシネイターが残っていた。上空に飛び上がり、マシンガンとパルスキャノン、更にはハンドレールガンを撃ち放つ。
 クオレは地上で回避に徹した。この時ヘタに浮かべば速度が落ちたところを逆に撃ち込まれると判断、安定した速度を出せる地上での回避運動に入る。小刻みに愛機を震わせるような動きで、敵の照準予測を逆手にとって弾幕をいなす。
 この場合、撃ちっ放しになっているパルスキャノンやマシンガンを多少食らってしまうのは仕方ないが、幾ら薄装甲のMCL-SS/RAYとは言え、連射兵器の弾数発で壊れてしまうほどヤワではない。
 軽量級から中量級に格上げされたMLM-MX/EDGEは、積載量こそ犠牲になっているがフォースフィールド発生装置内臓区画が多いため、当然フォースフィールドの出
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