#25.THE END OF REVENGE part1

 BBの下を去ったロイヤルミストは、それまでの業務的態度をかなぐり捨て、主君への罵詈雑言へと頭を切り替えていた。
 大体、もともとBBについては自分なりに計画を持っていた。全てはあいつのせいだとロイヤルミストは考えていた。あの老害がアリーナに居座っていたお陰で、トップランカーを望んでいた自分はいつの間にかBB第一の犬として、その筋の連中から後ろ指をさされている。
 しかも、来るべき派閥抗争に備えて傘下のレイヴンをかき集めたものの、それはBBがまるで自分の部下の如く、良い様に扱ったことで、特にアキラ相手の戦いで無駄な犠牲を出す羽目になった。自分の傘下の連中は尽くいなくなってしまったが、ああ言うレイヴンは他にも知っている。
 潮時である事は目に見えている筈なのだが、ロイヤルミストは、まだ決断出来ずにいた。
 確かにBBを見限る事も今は出来るだろうが、彼の実力を全く評価していないわけではない。事実、彼との試合において、ロイヤルミストは一度も勝ち星を収めた事がない。八百長抜きの試合であったにもかかわらず、だ。だから、彼は無意識のうちに、BBを裏切ろうにも裏切れない、裏切ったとしてもその後に待っているのは自身の破滅であろうとも理解していた。
 それに、アストライアーを殺す為に彼女を誘き寄せるまではいいが、問題は、その後どうするかにあった。
 BB以外にも、恐らくエースも戦場に現れるとロイヤルミストは見ていた。特にアストライアー抹殺とあっては。
 何故なら、エースは密かにアストライアーと戦いたいと言う願望を持っているらしいという事を、情報屋やリサーチャーが、実しやかに囁いていたのだ。そのエースとアストライアーを戦わせ、最低でもアストライアー抹殺、良くてエースとの共倒れを狙えるかもしれない。高潔な精神の持ち主であるエースが依頼主を裏切ると言う話は全く聞いていないため、彼の矛先がBBに向かう事はまずないだろう。
 アキラの抹殺は無理にしても、上手くいけば、また以前の様にBBの庇護の下で、己の戦力回復に邁進出来るかもしれない。全て計画通りに行けばの話だが。
 新しい傘下のレイヴンが、自分の眼鏡に適うかどうかは分からない。だがそれは、今までのランカー達のように、個を持っていながらBBに屈服させられた曲者揃いの連中とは違い、自身が何かしらを吹き込む余地が有る事だろう。彼等の引き入れや根回しも含めると、相当の時間は掛かるだろうが、己の意図に従う駒としてそいつ等を利用出来るようになれば、BBの政権転覆も狙えるだろう。
 しかしその為には、激怒したスズメバチの如き不穏さと怒りをみなぎらせるBBの機嫌を戻さねばならないだろう。あのままの不機嫌ぶりでは、計画以前に自分の命すら取られかねない。BBは気分一つ次第で、傘下のレイヴンを殺す事すら平気でして来たのだから。
 自分にその矛先が向いては、元も子もない。だからこそ、彼は裏切るに裏切れなかったのだ。
 ロイヤルミストは実に面倒臭そうな姿勢と嫌な顔で、携帯端末を開くと、メールボックスを新規送信モードにした。その宛先には、エースのメールアドレスが記載されていた。


 レイヤード第1層、第2都市区のセクション320を訪れる人は、まずいない。
 なぜなら当セクションは、5年前に発生した地殻変動によって都市機能が麻痺し、それ以後閉鎖されたままになっているからだ。
 だから、時折企業への武力抗争を仕掛けるゲリラを例外とすれば、ここの住人はホームレスか薬物中毒者、それに社会不適応者の類を除けば殆ど住んでいない。
 特に「放射能汚染区域 立
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まろやか投稿小説 Ver1.50