第1話 切欠 OK

て提出し、手物にない内は、パソコンで術式の組み立てばかりしている訳だ。
 流す魔力や霊力の数値を入力して、予定ゴーレムを三次元物体認識装置で解析して、データをパソコンに読み込ませ、それを使って物理演算装置を外付けケーブルで繋げて、術式や出力を微調整しながら、数え切れぬ動作確認をし続け、失敗し続け、繰り返す内に徐々に成功に結果が近付きつつある。
 ゴーレム提出は明日。
しかし担当の教師は、バトル物を何故か極端に嫌う傾向がある。
何でも家族が自衛隊一家で、本人は自衛隊が嫌いらしい。
理由は家族も知らず、困っていると噂で持ち切りだ。
 総十郎は知っていて、それでも大会用の――バトル物のゴーレムを提出するつもりだ。
 提出時に一緒に取扱説明書も書いておく。
最後の一文は、こうなっていた。

 ――尚、本機の破壊目的で行動した場合、防衛機能が起動し対象を無力化します――

 大方、泥棒対策用のゴーレムとして提出するので、大会用術式内容はパソコンのフォルダの中にあるままだ。
 防衛機構に関しては、単に泥棒対策用ゴーレムが持っていても可笑しくないから、と云う事と、それを盾前にした先生にゴーレムを破壊させる事に対しての対策であり、真の目的は言わずもがな後者である。
翼に関しては、調整が終わっていないので、危険と判断した。
幾ら泥棒対策としても(誤魔化しだが)人に怪我をさせる可能性は少ない方が良いからだ。
 先生自身は、こう言っていた。

 「それからゴーレムは何でも良いですが、人の役に立てるなら良いですね。
特にお手伝いとか…。
っま、バトル物でも良いんですけどもね」

 お手伝いを矢鱈と強調していたのが気に食わず、総十郎含め、男女問わず大多数のクラスメイトが、教室に集まって会議する事となった。
 中には、それを機に交際相手を見つけようとする男子も多かったが、女子も割と、その様に見受けられたのも事実だ。
 総十郎のクラスの教室以外でも、彼が友人らと共に帰宅する際、かなり連続して、その様な教室が多かったのは印象的だった。
勿論、同じ時間に同じ授業を受けている訳ではないのだが、あの先生は多数のクラスで同じ内容を連続で行っていたらしく、それ以前からの悪い印象もあって非常に評判が悪かった。
総十郎自身、他の教師と、黒い色の会話をした経験は先生相手の面識が少ない物の、それを考慮すれば多い方だと自分でも思っていた。
クラスメイト内での会話で似た様な会話をした回数は、勿論先生相手よりも遥かに多く、総十郎は勿論、他の生徒も数えていないと、面倒臭そうに言っていた。

 三日後の朝だった。
調節が終わったゴーレムを専用のバックパックに詰めて、何時も使う鞄を何時もの様に自転車の籠に入れる。
 二日前漸く壊れていた自転車の修理が完了したばかりで、僅かに乗り心地が変化していたが、気にする程でもなかった。
空気が充分入っているかを手が汚れない様に、専用のクロスを介して感触を確かめ、大丈夫と判断して漸くバックパックが落ちないかを確認し始める。
紐で縛っているのを再確認してから、鍵を刺して後輪のロックを解除、スタンドを蹴って、後輪が地面でバウンドする感触と音を感じながら、Uターンし、そして漕ぎ始める。
 角度のきつい上り坂だが、総十郎は難なく駆け上がる。
十分程して、漸く女子の日向 葵と男子の横山 武が待っている所に到着できた。

 かくして、三人は学校へ登校するのだが、その際小さな獣を見つけて…
13/05/14 17:24更新 /
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