第1話 切欠 OK


 ともあれ、却下する。
 
 今日の宿題はゴーレム作りだ。
厳密には制作途中の物で、期間は4月から始まって6月迄。
現在は5月13日だ。
 ゴーレムとは、術業を使った物で一般的には魔法が使われる。
これは魔力が僅かながらに質量を持っている為に、霊術より駆動制御の術式が簡易になるからだ。
 要は魔法版ロボットだが、総十郎は霊術主体に造る、と決めている。
霊力は実質的な質量は持たないが、他形態のエネルギーに干渉し易く、その部分さえ制御出来てしまえば、魔力流動が速い関係上、運動速度が非常に速い物となるからだ。
 動力機関こそモーターだが、逆に言えばモーターこそ唯一の科学部分だ。
 実は、電力と魔力、両方を互いに変換する装置もユグラドライヴと言い、今回モーターと一緒に支給されている。
 「さあて、前はお手伝い型だったからな。
バトルゴーレム大会用の奴でも作るか、とは決めたんだがなぁ…」
武器は、剣や刀、戦斧の類しか認められておらず、サイズも10センチ以内。
ブースターは無制限で、出力の合計推力こそ規定されているが、変形はゴーレム自体が人型形態を有するのであれば、それを含めた二形態以内なら認められる。
 パソコンを起動し、術式構築用ソフトを立ち上げる。
傍らで情報収集用のパソコンを起動する。
ソフトを使っている方はノートパソコン、情報収集(インターネット用)の方は据え置き型である。
 ネットで動画を確認、画像をフォルダに落とし込み、参考にする。
それと並列しノートパソコン側でデザイン用ソフトを起動、術式用ソフトと連動させ、準備が整う。
「えっと、デカい羽…は、っと」
 今回制作する大会出場用ゴーレムは宿題として提出した後、後日授業で稼働状態を各自で披露する事になっているが、それが終わり次第、疲労が組み込まれた授業のある日の、全授業が終わった段階、つまり帰宅段階で学校に寄付するか、寄付せずに持ち帰るかが選択出来る。
 今回は人型と狼型の二形態を採用する。
背中の巨大な翼はブースターとスラスターの両方を兼ね備えている。
大会用の定義として主力推進機関をブースター、推力発生による機体の姿勢制御用の物をスラスターと言う。
 「前年度は…いわあ、だっせぇ…」
物凄く不格好なゴーレムが検索に引っ掛かった。
片腕が剣を装備する為だけの形状、もう片方がシールドとなっている。
しかし大会用の認定装備に防具が無かった為、片腕のみで出場する事になったらしい。
 総十郎のゴーレムは、光子を集めたりプラズマを生成したりと、今迄出場して来た、どのゴーレムにも使用されていないタイプの魔道ブースターを使う予定だ。
 術業を使った物を、術業転換ブースターと総称し、中でも魔法系術式を使っている物は、マジックブースターとされる。
基本的に、魔道ブースターと言えばマジックブースターだ。
 厳密には魔力を使っている物の事だが、基本は定義が曖昧になっている。
 しかし、全十郎の場合は、魔力こそ使うが、その全てが魔力や魔力によって成形された術式、及び魔法形態ばかりではなく、一般的な術業転換ブースターがマジックブースターである事に対し、今回のゴーレムの物は、複数の術業の術式を使った演算式、及び複合型術業による統合術型化学推進システムと言えよう。
 何にせよ、ゴーレム自体は、当初二刀流を予定していたが、今年の大会では一刀流限定になってしまったので、最終調整の予定が大幅に狂い、宿題が発表された、この時期迄引っ張る事になってしまった。
当然宿題の為のゴーレムを制作する時間は無く、出場用ゴーレムを宿題用とし
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50