第1話 切欠 OK

繋がる一定間隔で流れる魔力を発見出来る。
地球上の生命が存在する限りに於いて、あらゆる条件下で魔力の流れが発生しているが、流れだけが一定の自然的魔力流動とは明らかに違う人為的な魔力流動さえ確認出来れば、後は状況を条件として考えれば全く問題がない。
少し必要とするのは≪考える力≫であって、馬鹿では無理だと言う事。
 やってから思う。
別に、こんな事をしなくても帰れば無駄に大きな液晶テレビがあるではないか、と。
(迫力があるのはゲームと映画だけで充分だ)
ニュースには無駄な情報が多過ぎる、と。
最もビルにくっ付いているタイプに関しては公共の物なので、事情が違う訳だが。
 ともあれ、それを止めてから数分後、彼の足は止まった。
可笑しいだろ、としか思えない規模の和が漂う屋敷。
背の高い建物があれば、完全に城となるだろう。
しかし、これが龍禅 総十郎の自宅なのだ。
標識には真っ黒な筆文字で龍禅家と書いてあるが、少し達筆すぎる気がしなくもない。
一般人には読み辛いのだ。

 「只今〜」
若干気怠そうに言う総十郎。
「お帰り」
「ああ、カレンさん」
背の高い女性が柔らかく微笑んで出迎えた。
彼女は龍禅家と50年以上の付き合いを持つ海外勢、特に勢力が大きい龍禅グループのアメリカ支部と迄呼ばれる程、外交的力の強いエルード一族の中で、特に最重要視されている≪力の目≫と呼ばれる特別な能力を持っている≪清龍刀継承者≫で、この代に於いて継承者は彼女一人である。
 ≪清龍刀≫とは、魂を具現化する物である。――とは説明されたのだが、カレンも総十郎も首を傾げる事しか出来ず、結局他の人と一緒に、説明してくれた当時のエルード当主に対して「何言ってんだ、こいつは?」と疑問に思わざる得なかった。
 カレン本人の説明としては、総十郎の兄、善十郎の許嫁で本人達の仲の良さは大いに結構なのだが、見ていると稀に苦虫を頬張りたくなる事がある。
普段節度を守っている反動故、その時の地獄っぷりと言えば。
 又、去年弟の誠也が、それに陥ったらしく、余りの甘ったるさに暴走して家の壁が砲弾が着弾でもしかたの様に、地面諸共消し飛んだ事がった。
誠也曰く「壁を殴ろうとしたら、無意識に魔法を使ったらしい」との事。
父の怒鳴り声は雷と云うより某逆襲者のアニメ映画の敵役が巨大な小惑星を地球に落としたのか、と勘違いしてしまう領域であった。
 「ああ、総十郎。
貴方宛てに大蔵社から手紙が来てるわよ。
後、如月と叢雲も」
「スカウト、懲りない連中が…。
あれ、有沢?
初めての所だな」
言いながら階段を上る。
部屋に入って中身を確認すると、大手の造船工場らしい。

 貴方のユグラドライヴに大口径攻撃砲を搭載しませんか!?

そんな文句から始まった事に、総十郎は少し驚いた。
内容は至って簡単。
要は総十郎が搭乗するユグラドライヴに大口径のランチャーを付けたがっているのだ。
 『ユグラドライヴ』とは、魔道外骨格戦闘補助機構――つまり術士を使ったパワードスーツで、魔道とこそ銘打っているが、実際は霊術等もふんだんに使っており、又基本構造は科学による物だ。
 そんなパワードスーツに実弾砲、それも手紙の内容にある見取り図からしてユグラドライヴを少し超える様な大きさのランチャー等、初めから付ける気になれない。
1メートル50が日本のユグラドライヴ規格で、このサイズに合う規格と言えばヨーロッパ連合規格の2メートル80、通称『2−80』だ。
日本自衛隊規格『1−50』には合わない。
一応接続機構自体は『1−50』だが『2−30』も想定内らしい
[2]前へ|[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4]
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50