地下トンネル内調査前編 OK

か!?」
だが、その様子はなさそうだ。
仮にあっても、この調子では幽霊もどき諸共トンネルが総崩れしてしまう。
(畜生が!!)
コンパターを操作して戦闘出力の全てをオーバードブースト機構に多く回し、残りをブースターの高出力噴射へ回す。
F1カーの如く、直線カーブをサイドブースターを駆使して曲がり、曲がりきれなければ壁を蹴ってでも曲がり切る。
水につからない様にして、無駄な浪費を避け、出口付近へ来る頃には、その水もなくなっていたが、爆発は迫るばかりである。
 『――、――エグ!!』
通信が復帰する。
目の前のドアはハッキングしたりすれば開くだろうが、そうでない可能性も高い。
それ以前に、どの道ハッキングする余裕もないのでマシンガンで破壊を試みる。
それでも破壊しきれないと悟ったエグが左腕部装備のレーザーブレードへ全出力を回して至近距離で振るう様に機体に命じる。

 ―――――ジュオン!!

強烈な熱膨張により被害が拡大し、大穴が開くドア。
其処からナストロファージがオーバードブーストの余剰慣性に身を任せて飛び出す。
 瞬時に通常出力値に戻し、機体を止める。
サイドディスプレイに表示されているオーバードブースト機構の熱量ゲージが満タンになり、オーバーヒートの警告文字が点滅していた。
 『…生きてるわよね?』
エレンの不安げな声が聞こえる。
「ああ……。
生きてる」
 静かに、自らの生存を報告したエグはディスプレイやモニターの表示から愛機の状態を確認していた。
ジェネレーターは負荷が掛かり、修理しないと今後調子が出ないであろう事は明らかだ。
他のブースター、特にサイドブースターとバックブースターは、噴射負荷は問題無かった様だが、熱で変形したのか、―ノズルダウンーの警告文が点滅していた。
 こいつは修理費が嵩むな、とエグは溜息をついた。
『溜息つくと幸せ逃げるよ?』
「お前と居るんだ。
遠ざかる訳がなかろう」
 呆れていったエグの言葉の直後、レーダーに反応が現れた。
『エグ。
随分酷い有様だな。
オーバーヒートだらけじゃねぇか』
「エオルド、あんたが運転してるのか?」
ナストロファージ専属整備班の班長にして、MT一番大隊所属1番部隊に所属する第1ガレージの副ガレージ長である、年配手前の男性である。
その手腕からエグ達も良く羨ましがられる。
 『ああ、兎に角乗れ』
整備班長と言え、普通MT部隊の隊長に言う言葉ではない。
それこそ、幾らエグが自分より年下であろうと、敬語でないのは普通として、言い方は乱暴である。
だが、エグもエレンも相応の腕を持ち、自分達を支えていると思っているので文句もなく、二つ返事で指示に従った。
彼に掛かればキャリアに機体を乗せれば邪魔が入らぬ限り、機体は完璧な状態になる。
ある種、常識のルールの様な類になっているが、決して彼が凄腕である事を忘れてはならない。
他のガレージでは皆腕は良いが、彼に敵う整備士は居ない。
同盟コロニー内でも、他コロニーで彼の名を聞くと、遠征から帰ってきたパイロットや整備員からも聞くので、相当な腕であろう。

 整備が始まって数分。
エグはコクピットから出て、エレンの入れたお茶を楽しんでいた。
このキャリアのクルーもそうだが、コロニーには如何も当たり前の様に日本文化が往来している。
神社や寺はあるし、その数は住人の数からしても少々多い気がするとエグは感じる。
だが、それぞれ祭ってある仏像や神様の意味は全く違う。
その為、コロニー内の感覚で神様と言うと、他のコロニーでは通じないのが常だ。
その大体が神道や仏教ではな
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まろやか投稿小説 Ver1.50