水を掻き分けながら灰色の軽量二脚のACがトンネル内をブーストダッシュする。
機体は肩が丸みを帯びており、脚は追加装甲の余りを取り付けた軽い割に防御性能の高い脚部である。
元々は、スナイパー系のACやMTに使う予定だったのが、予定機体含めた部隊が飛龍に壊滅させられており、それをエグがコロニー内部のマーケットで買い取り、担当ガレージの整備士に頼んだ物である。
彼の愛機、ナストロファージは軽さと防弾性に優れる反面、エネルギー兵器に弱めで、対爆性は軽さと相応程度である。
上半身中心の数値では、そうでもないが全体的には驚異的な硬さを誇る。
そんなナストロファージは専用ジェネレーターを使用している。
特に供給エネルギー量に気を配り、余剰容量を元より削った物である。
関節モーターも幾つか試し、納得出来る運動性に引き上げる頃には、一般的な企業社会のひよっこレイヴンがベテランになる頃に機体強化している平均期間を大幅に超えていた。
しかし、腕自体はベテラン以上の水準を持つ。
そんな彼に苦を感じさせた、入り口での敵襲は、本人には負担になっていた。
あの二機は残骸が余剰スペースに一緒に纏められてキャリアに積まれている。
どうせ、帰りは最大限安全を確保したルートをMT達に護衛されて帰るのだ。
回収部隊に採用されている機種も、余裕を確保する為に配備されているので呼んで貰おう、とエグ達は考えた。
暗視機能を使った視界は、僅かに配置されたランプの姿が前から後ろへ流れるのみである。
『そろそろ中央部。
本当、静かね』
「これが普通なんだろうな。
だが、お蔭で余計に怖い」
表情こそ、通常の任務モードだが、多少強張って居る所は、怖さがあるからだろう。
「…忌々しい亡霊共が…」
小さく舌打ちしながら呟くエグ。
だが例の幽霊もどきの事は、関係ないと思考の外に追い出した。
「…おいおい、本当に中央部に到着したぞ」
そう呟いたのは数分後だった。
機体を左に軽く旋回させて、右肩のサイドブースターをブレーキ出力で一時的に噴射して止まるナストロファージ。
だだっ広い空間に水が落ちる。
滝その物である。
「これは…何の水だったかな?」
『確か、此処に繋がっているのはジオ社が30年前に破棄したダムからじゃなかったかしら。
水力発電所』
「例の古代技術を起動させる為の電源施設か。
企業連合会議とやらで、古代兵器の類は全て研究禁止になって、それ関連の他のジャンルも、ちょこちょこお互い違反し合って牽制し合っている関係ってのが、数グループあったな」
此処の水の流れ元を話していると、行き成り揺れが走った。
『地下最下層…駄目、深すぎて確認出来ない』
「だが、かなり危険だ。
離脱する、キャリアを用意してくれ」
『分かったわ』
急いで機体を反対に向かせてオーバードブーストを作動させる。
ブースター・パッケージが開きノズルが回転しながら現れる。
次いで、エネルギーをチャージする。
ブーストエンジン機関部が唸りを上げ、プラズマを生成する。
凄まじい濃度のプラズマをブラスター機構で破壊し、そのエネルギーをノズルから解放、莫大な推進力で機体を進める。
『最下層より大規模な連鎖爆発と思われる熱源、連続出現!
出現速度、加速!』
コクピットに衝撃が伝わってくる。
「何が起こった!?
何故爆発した、一体何が!?」
『分からないわよ!
でも…嘘、すぐ後ろが爆発した!!』
「今爆発したのは…」
『――、――!!』
「!?
お、おい!!」
突然、高濃度のプラズマが発生し、通信が切れる。
「幽霊もどきが出たの
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