重大報告 途中

 荒れ果てた大地の中、それでも尚抵抗するレジスタンス。
元が国だけあり、国同士が協力し、その総力は長らく企業連合と拮抗する事となった。

 そんな戦争が続いて百年が経過しようとしていた時の事だった。
秘密裏に進められていた企業連合による大規模宇宙開発が、突如明るみへ躍り出た。

情報漏洩に動揺した各社上層部だったが、冷静に調査すればラインアークの仕業だとは良く解る痕跡で沢山だった。

 次世代型AC『ネクスト』の追撃が潰えて4か月。
捜索部隊が追い付いた先は未だ奇跡的に国として体を成しているドイツの領土だった。

 厳しい戦線が更に押し潰され始める中、ドイツ側に付いたネクスト部隊によって、何とか余裕を持ち始められたドイツ政府だったが、これに食らい付いた各国コロニー首脳が同盟を希望し、その対応に追われていた。

 その一方でエグは本国『日本』へ向けて十年以上前に極秘開発されていた海底トンネルを使い、大陸から日本列島―――九州へ向けて日本政府と会談すべく、護衛部隊と共に移動を開始した。

 最前線と化すであろう大和に残ったアンタレスは、会談の行く末を心配していた。


 ネクストがレジスタンス側に付いた、との情報が大陸中へ回るのは、一週間もしない内に、であった。


 ナストロファージの修理が終わって少しした頃、エグは任務の継続期間に焦りと不安を感じていた。
何せACでの哨戒任務は優に300時間を超えている。

それなりの部隊で周回しているのだが、哨戒用集会ルートは何時も通り。
敵はもう作戦を変更したんでは、と自分達の判断が間に合うかどうか不安で仕方がないのだ。

 そんな折、一通のメールがエグの端末だけに届いた。
「アンタレス、如何判断すれば良い?」
気になったエグは速攻でエレンやアンタレスに相談した。

アンタレスは「ふむ」と少し考えた後、答えた。
「兎に角URLとID、内容データのコピーを取って、本メールは頂戴。
君宛に直接の依頼らしいけど、如何も君の事を傭兵と思ってる節がある」
「俺の事を…傭兵に?
…何で俺が傭兵なんかに…」
「まあ昔の君との繋がりを仄めかす辺り、重要な内容だと思う。
だからこそ解析させて欲しい。

ミグラント用の解析ツールなら腐る程あるからね」
「助かる」

 それから、一ヶ月後の事だった。
中身を確認しても大丈夫だと判断されたメールを端末で確認したエグは、改めて内容に疑問を抱いた。

内容は依頼であったが、既に日本に到着していたエグは、どの道依頼を受けられなかった。

 ――レイヴン。
これは緊急性の高い、極秘の作戦に関する依頼だ。
最も、極秘性も後々無くなるのは目に見えているから、喋らない程度で良い。

 依頼したいのはコロニー・アステリヤ。
此処の中央部にあるエレベーター・タワーの防衛部隊の一定数の排除だ――


若々しくも、低い声で文章を音声が読み上げられる。
音声付きの依頼メールとは、しかも音声を無加工なのは珍しい。
一兵士からにしては、随分無防備だ。


 ――排除率の判断は私が決める。
私の離脱指示で我々が確保した逃走ルートを進行、コロニー外へ脱出して欲しい。
後は我々の仕事だ。

 脱出後は、そのまま帰投して構わない。
我々としても、その方が好都合だ。
特に君が何処のレイヴンであるか、それは向こうさんに取っても一大事だ。
君に死なれては困る――


深い感情を込められた声音で語るそれは、随分と自分の娘とを気にかけているらしい、と理解するには二十分過ぎる内容である。

 ――報酬は7億円だ――

それだけあれ
[3]次へ
[7]TOP [9]目次

まろやか投稿小説 Ver1.50