思わぬ横槍 OK

 ―――ドォン!!

「―――――!!
……ん?
…な、何だ!?」
殺されていない事に気付き、目を開ける。
モニターに映っていた敵ACのライフルが大きく映っているままだったので突き立てられたままだとは分かった。
 が、【コアに空いた風穴】が理解出来なかった。
「な、何で…?」
其処で気が付いた。
ノイズが掛かっているレーダー画面に、もう一つ反応があったのだ。
 『其処のAC。
無人機じゃないなら降りろ。
 …ああ、企業部隊かと思ったら例の有名なレジスタンスさんか』
通信が死んでいるのを知ってか知らずか、相手はスピーカーを使用した。
 言われた通り、しかしまず機体を立たせてから駐機姿勢を取る。
どの道、この損傷の酷さでは戦闘は不可能だ。
 コクピットから出ると、相手もコクピットから出て来た。
「何者だ?」
「チーム・アーク所属のオーズだ」
 「…?」
チーム・アーク。
企業社会に於ける無専属レイヴンに限定すれば最高峰の傭兵である。
チームとしての知名度は非常に高く、同時に拠点の場所が不明である。
これが企業が幾ら探しても見つからない為、余計に噂が目立つのだ。
それこそ態々情報収集せずとも、戦闘物資を送ってくれるミグラントの口から零れる噂である。
噂故に信憑性は低いが、ミグラント自身の信頼性は高い。
なので、噂自体が去勢でない限り、意外と叩き折れない類の判定不能要素でもある。
 只、気になる事に、此処最近チーム・アークが企業と連絡を断絶しているらしい。
慌てた企業連合がアクセスを繰り返してはいるが、トラックこそ発見出来ているもののアクセス状態は相変わらずの状態らしい。
 何故チーム・アークが此処に居るのか分からない。
もし、企業部隊関連の依頼であったら…。
そんな余念がエグの胸を過った。
 「そのAC、ナストロファージだな」
(こいつ、俺の事を…)
外見だけなら企業管轄の地下世界で戦闘した事がある。
だが、機体名迄言い当てるとなると、相当情報漏れが激しい様だ。
 「バレーナ社の現社長直々に依頼された。
『ナストロファージのレイヴンを社長室に連れて来い』とな」
「社長室!?
正気か!?」
幾ら機体の損傷が酷いとは言え、エグ自身の戦闘力は高い。
 如何あれ、このままでは連行されてしまう。
(あの野郎、まだエレンの事を!!)
 その時だった。
ヘルメットに内蔵されていた通信機が受信を報告した。
戸惑ったが、通信に答える。
『エグ・エルード、ACに乗って離脱しろ。
俺が片を付ける』
 ヴァアンと光波ブレードで派手にゲートが溶かされる。
現れたフロート型の軽量なACが軽ガトリング砲を乱射する。
「うおっ!?」
 慌ててオーズがコクピットに飛び込み、ライフルを発砲しながら空中に引き下がる。
しかしフロートACの速度の方が圧倒的で、かなり詰め寄られがちになる。
 左手に持つバズーカを撃ち、更に左背部の三連型グレネード砲を発射する。
 ナストロファージが辛うじて稼働可能状態にあった事に安堵し、頭部のモノアイ(ナストロファージのモノアイは複合型である)を右に移動させて視界にスカルフォックスを捉える。
 エグ達の前に躍り出たフロートACが、そのままオーバードブーストで突撃する。
 『小癪な』
三連グレネードを発射するが、しかし相手は右肩のブースターをグラインド出力で噴射した。
 フロート特有の全ての機動に存在する慣性。
その独特の挙動故に生まれる速度に翻弄されるオーズだが、無理矢理火力で仕留めようとはしない。
「捉えきれないなら、捉える事が出来る状態にすれば良い」
ナス
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まろやか投稿小説 Ver1.50