帰還 OK

 ――唐突な出来事だった。
気付けばアームズフォートが幾つも無力化、或いは破壊されている。
それを行ったのは、数の少ない正体不明の武装集団だった。
しかし只の集団で到達出来る戦果等では決してない様な次元で、活躍する彼らを説明するには常識や理論では無理があった。
 そもそも、『数の暴力』を以て敵を叩き潰すのがアームズフォートの真価である。
その真価を少数の武装集団如きに覆されるのは、非常に士気が揺さぶられる事実である。
 「此方、コロニー大和所属のレイヴン、エグ・エルードだ。
遅れて悪かったな、皆」
陽動を掛けて、作った道を走り抜けたAC、ナストロファージ。
ナストロファージだと気づいた大和側は、それはもう物凄い動揺っぷりであった。
機体からエグが出て来た時は、確信が上回って何が何やらの状態であったが嬉しい事に違いは無かった。
 「エグ、本当に帰って来たの?
帰って来れたの?」
『フライトナーズを撒いた直後の頃は弾切れで酷かったがな。
何はともあれ、仲間を集めて車両が制圧される前に此処迄脱出して来た』
 ナストロファージのセンサーが鳴り響く。
「拙いな…。
第1部隊、第2部隊!
コロニー防壁防衛に!
第3部隊は此処で補給を!
残りは全車両部隊がコロニー正面迄移動出来る道を確保しろ!」
 『MT部隊の指揮権だけじゃ――』
「今は構ってられない。
 ああ、俺の所のMT部隊はどうなった?」
『一応、3番隊の副隊長が引き抜かれてる…。
けど、飽く迄臨時的な物だから…』
「じゃあ状況は?
今、何処に」
『直接リンク権は残ってるけど、オペレーションリンクが接続されてないから探すのは時間が掛かるけど、良い?』
「嫌、それなら良い。
それより――」
 その先を言おうとして、しかしペダルを蹴る。
刹那、飛び上がったナストロファージの跳躍の衝撃で窪んだアスファルトが飛来した弾丸により粉々に砕かれる。
『っ、コンコード管轄機関所属のレイヴン、ランク1のストライク!!』
「トップランカーって奴か。
そんな奴迄駆り出されるなんて、企業は何をしようってんだ!?」
真っ黒な軽量二脚による軽快な動きをする軽量級のAC。
 再び右手のハンドレールガンが撃ち光る。
瞬時にバックグラインド、サイドブースターの噴射でブーストダッシュの軌道を修正して攻撃を躱す。
 相手も、これに応じてオーバードブーストで正面から急速接近。
左腕に装備する特殊エネルギーブレードから光波を射出する。
「ブレードが飛んだ!?」
衝撃のない熱エネルギー弾。
センサーがダメージを感知してけたたましく唸り上げる。
 次に相手はサイドブースターで右に旋回し、そのまま通常旋回を空中で行って、落下してはブーストを繰り返しながら背後を取ろうとナストロファージの右手に移動する。
「っち」
モニターのロックサイト内に一瞬だけ映ったロックマーカーが少しの間、黒い影を追う。
右サイドブースターでグラインドブーストし、そのまま前方へブーストダッシュへ移行、メインブースターのグラインド出力で数秒間加速して距離を稼ぐ。
相手は右背部のミサイルを一発発射する。
 グラインドブースト停止後、ブレーキング機能が作動する間、操縦桿を動かして右旋回させると、それに反応した左脚部が前に出た。
これによるバランス崩れを検知したバランサーが作動して、右脚部を後ろへ移動させる瞬間に、操縦桿の操作を逆方向で行い、頭部の操縦入力統合システムが、該当する入力パターンを検索して、該当するパターンに当て嵌まる挙動を機体全体に指示する。
結果、物凄い勢いでナストロファ
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まろやか投稿小説 Ver1.50