旧企業地下大規模プラント争奪戦争 OK


まさか。
そう思い、オルゴールへ耳を近付ける。

 ――ギュ、ギュ〜〜〜、ギュギ、ギギキィィ…、キイイイ〜〜

まるで周波数の合わない通信音の様な――。

 『―――れか―――』
「っ!?」
『――れか、お願い、へん――て!
だ――誰か――』
「嘘…通信!?」
『…誰か!!』
 漸く聞こえる程度に雑音が消える。
「でも、これ…ビデオレター?
うーん、映像がないけれども…」
 『誰か聞こえる!?』
「聞こえますよ〜〜」
『…駄目ね』
「駄目なんだ」
如何やら、想定した答えは正解らしい。
 『…ああ…。
何て事。
さつまいもが…』
如何やら食べ物が駄目になった様だ。
地下世界では割と洒落にならない類だ。
 しかし言葉から推測するに、プラントの襲撃者だろうか、と考えつつ続きを聴く。
『…もう。
何でプラントの中に戦略級兵器が待ち構えているのよ。
意味が分からないわ。
何も育ててなかったみたいだけど、畑を容赦なく機銃で駄目にするんなんてどうかしてるわ…』
(兵器?
企業も随分過激な…)
 『駄目ね。
そろそろ追手が来る…。
音声だけでも…』
其処で別の声が入る。
『え?
何?
スイッチ入ってるの?』
(道理で独り言が録音されている訳だ)
その段階から録音されている様だ。
『何録音してたの?
オルゴールの音楽?
そんな物、オルゴールだけで良いじゃない?
…売る?
売っても売れないわよ、オルゴールの音だけだなんて…。
 良い?
オルゴールってのはオルゴールがあって――戦車を走らせて!
追手が来た、早く!!』
音声に爆音が聞こえる。
続いて車のエンジン音。
 『お願い誰か!』
急に声が近くなる。
焦って握り締めているのだろう。
『誰でも良い。
ファレッツェの連中でも良い!!
誰でも良いから皆に伝えて!
あのプラントに居るのは生体兵器と―――』
 音声は此処迄。
爆音や悲鳴が切れる寸前に聞こえて来たがブツッと不快な断絶音の後、音楽も声も爆音も、何も聞こえなくなった。
 生体兵器と何か――恐らく最初に言っていた戦術級兵器とやらが待ち構えているとでも言いたかったのだろうが、最後の爆音で納得出来た点がある。
如何やら高速道路走行中に敵の撃った弾が爆発か直撃かして此処に落ちたのだろう。
爆風で吹き飛ばされたのなら、壁に突っ込んで、そのまま――と言う訳ではなさそうだ。
 (生体兵器…。
そう言えば如月社が最近変な研究してるって噂は聞きはするけど…)
 オルゴールを持って戦車から出てビルを探索する。
この階は特に目ぼしい物はない様だ。
その上の階は屋上の様だが、激戦が続いており、外に出ない方が良いだろう。
そう思ってドアから離れた瞬間、周囲が爆発で薙ぎ飛ばされる。
急いで中に戻り、そのまま階を降りる。
 途中、激しい揺れが起き、何事かと振り返るも、廊下の壁や床、天井に変化はない。
 胸を撫で下ろして螺旋階段へ近付く。
だが、このロビーはガラスの向こうに沢山の兵器の残骸が散乱しており、外から丸見えだ。
「うわ!?」
ミサイルを食らった特殊戦闘ヘリがガラスを突き破って頭上の壁に激突し、次いで幾つものミサイルが着弾して様々な物を吹き飛ばす。
床が崩れ、爆心地へ傾き始めたので、急いで狭い通路の所へ戻る。
 間一髪、崩壊に巻き込まれる事は免れたが、崩壊した床が下の階を巻き込み、更に下の階が…と次々と下の階が巻き込まれ、螺旋階段も崩壊し大きな窓ガラスを引っ掻きながら一階迄崩壊し切ってしまった。
 だが、収穫になるだろうと思っていた箱が瓦礫の中へ落ちてしまった。
飛び込んだは良いもの
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まろやか投稿小説 Ver1.50