いる様だ。
迂闊に飛び上がると撃たれてしまう。
操縦桿を左へ倒して機体が反転した瞬間に、サイトブースターペダルを踏み付ける。
オーバードブーストの強力な噴射熱を間近で浴びた壁が真っ黒になる事に構わず、そのまま路地をドリフトの要領で切り抜け、オーバードブーストを出た頃に停止、バックブースター全開で高速後退し、反対側の路地へ侵入、狭い道をブーストダッシュで抜けて、少し幅のある所でオーバードブーストによる強襲、目標である人型MTがハンドガンを発砲する前に後退姿勢を空中で取る。
結果として踏み付けてしまったMTへマシンガンの雨を浴びせて撃破し、そのまま上空から細い路地で待ち構えている逆関節型MTの複数門による猛攻を潜り抜けて、真上に陣取りマシンガンの弾丸を叩き付ける。
『全敵機撃破確認』
「全敵機撃破確認了解。
通常モードへ移行」
『メインシステム 通常モードへ移行します』
音声認識したAIが切り替えを報告する。
「…これは…」
背筋を静かに駆ける冷たい感覚。
(成程、起きる『事』は大きい様だ。
それで、今迄の動きか)
『どうかした?』
「うん?
ああ、何となく、次のステップに進めた気がしただけだ。
さて、戻るかね、っと」
コンパターを操作し、移動目標位置を入力する。
機体が自動旋回し、ルートを検索する。
『ルート確認 移動を開始します』
黒い影が、ゆっくりと近づく。
下半身は大型ホバーユニットとなっており、正面へ二連レーザー砲が装備されている。
横にも上下と水平に同じ物が幾つも装備され、ホバーユニットの左右にはピアノの鍵盤の様な丸い装置が稼働フレームに組み込まれている。
それら一つ一つは強力なプラズマ砲で構成されており、上半身にも同じ様な兵器が搭載されている。
背中に大型複合プラズマ砲と複数の大型ジェネレーターと専用のプラズマ・ブースターを合体させたプラズマエンジンを背負い、腕は刃物のような形をし、エネルギー砲となっているが、今は通常腕部形態となっている。
右に五連装エネルギーガトリングガン、左に大型レーザーブレードを持つ。
鋭い形状が集中した上半身から光が漏れる。
『高額迷彩ガス噴射。
ガス粒子、ドライヴ機構機動。
粒子流動確認』
甲高い音と共に白い粒子が周囲を駆け巡り、一瞬一際輝いた直後から機体の姿を消した。
ペダルを踏むのと連動して、機体が浮くのを確認する。
高度計が上昇するのを示した。
『ホバークラフトエンジン始動。
移動モードへ移行』
ホバーユニット後方と背中のブースターで前進し始める。
速度表示が加速を示す。
「我々企業が注目するに足る存在か…。
その力を試させて貰うぞ――」
若干吹き笑いつつ、その名前を叫ぶ様に呟く。
「エグ・エルード……!!」
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