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第4話 龍人  途中
 凄まじい揺れが走る。
「教頭先生、防御リフエクター装置が故障しました!!」
「何てこった、今の地震か」
「地震と言うより…状況的に、爆発でしょうか?」
 シェルター内に居るのは何も生徒だけではない。
後から来た一般人――周辺地域の住人達だ。
 教師の言葉に反応した術士が数名、解析を始める。
「田中さん、こっちを頼むよ」
「山田さんはそっち?」
「ああ、分断したら、きっと早いよ」
「俺もやる。
解析は得意だ」
「藤堂さん、一流の人が居てくれるなんて…!!」

 一方外は一部のシェルターの防御機構の影響下外の全てが吹き飛んだ状態である。
 『今…何が起こった…!?』
飛行出来る軍艦、航空艦の艦長が唖然とする。
「と、都市一つが…文字通り消し飛びました!?」
「……嘘だろ!?
相手は高が一機だろ…?
俺達、何時の間に核兵器を相手にしてたんだよ!?」
 爆進地点周辺は未だに高エネルギー反応が検出され続けている。
「今…奴を撃ったら如何なる?」
艦長が恐怖しながら訊ねる。
「恐らくですが……、魔道砲は到達しないでしょう。
かと言って光学兵器では射程が立ちません。
エネルギー領域の推定直径は約4000。
近付いただけで蒸発。
…地上に小さな太陽が落っこちて来た様な物です」
「……………つくづく核兵器の様な破壊力だな…」
 再び反応。
「前方、超巨大エネルギー反応!!
回避運動準備!!」
艦長が叫ぶ。
「全艦知らせ!!
全艦緊急回避!!」
船体の横のスラスターが勢い良く噴射される。
回頭用スラスターと回避ブースター、姿勢制御推進系の全てを使って全力で離脱する。
 「ぬう!?」
ブリッジの窓から、真横を通過する光線が見える。
衝撃波が艦を襲い、凄まじい揺れを起こす。
 必死に舵を取る舵取りが悲鳴を上げる。
「これ以上回避速度を上げられません!!!」
「か、各部損傷甚大!
右舷損傷により艦体の姿勢機能がダウン!
攻撃領域に突っ込みます!!」
それに対して艦長が指示を出す。
「右舷に防御リフエクター出力の全てを集中させろ!
飛行翼を全て格納、重力落下姿勢による自由落下にて自然離脱を図る!!」
「無茶ぶりを…!!
了解、全飛行翼を格納します!!」
モニターに出力状態の格納状況が表示される。
 慌しいのは他のブロックも同様である。
「エンジンカット!
全エンジニア、戦闘用シェルターにて待機!
とっとと走らんか、エンジンが消し飛ぶぞ!」
 爆音。
「ユグラドライヴ!?
嘘だろ、中国軍!?」
無人逆関節型制圧用特殊ユグラドライヴ『チェングム一号機型』が無数に飛び込んで来た。

 『全艦、敵突入ポッドを激激せよ!!』
光線にやられた数が多いが、今はそれ所ではない。
霊術推進装置によって高速飛来するポッドへガトリング砲が起動する。
「畜生、何だってんだよ!!」
「あの野郎共、今度は本土迄自分達の領土とほざく気なのか!?
何処迄日本人を嘗めれば気が済むんだ、糞ったれが!!」
 ガトリング砲に連続被弾したポッドが爆発、直前に脱出したユグラドライヴも、別のガトリング砲によって、装甲が弾かれ、内部フレームを潰される。
 至近距離での爆発に一時的に視界が悪くなり、その内に別のポッドが甲板に減り込んだ。
対人自動砲が次々と弾を撃ち込んで行き、出て来たユグラドライヴ――チェングム一号型の撃破数を伸ばす。
 他の艦もポッド内のユグラドライヴにより既に撃沈している物も多く、街の被害の大半は墜落艦による物となりつつあった。
 近接戦闘型の不知火一式部隊がチェングムを切り裂く。
『大半の艦は何らかの被害を受けており、多大な物が平均的だ。
米軍到着迄後10分、敵を一掃する。
何人たりとも逃がすな』
『了解』
 地上から長距離狙撃魔道砲を構えた黒鋼部隊が配置に付く。
「攻撃開始!!」
部隊長の命令により、複数の黒鋼、及び特殊長距離攻撃車両から魔道砲による魔法弾、魔道弾頭を搭載したミサイル、レールガンによって射出された特殊滑空弾、それら各種がポッド群に襲来、正確にポッドを貫く。
 「こいつで…!!」
スコープの狙撃点中央へ高速飛行するポッドを収めようとする。
速いが難なく中央にキープ。
ポッドを画像認識したFCSが認識マーカーを電子音と共に表示する。
「――!!」
トリガーを入力、スコープ内に一瞬弾が見えるも、次の瞬間にはポッドが推力を失い、スコープの視界から消え、爆炎だけ一瞬映り込んだ。
 が、その次にチェングムがスコープ内の視界に飛び込んで来たのだ。
「え!?」
ブースターで減速、此方へ向かって複合形態へ変形させ、ブーストバックパックの推力で物凄い勢いで急速接近する敵ユグラドライヴ。
 当然、これを捉えようと必死に倍率を下げた状態で狙撃砲を動かす黒鋼。
重なった、と感じた瞬間には撃ったのだが、当たったのはビルだった。
「躱された!?」
寸前で急減速され、斜線から離れたらしい。
 狙撃砲の格納をアームに任せて、背中のラックから小型機銃を取り出す。
が、当然だろうが、とばかり回避するチェングム。
『増援を――グォア!?』
腕部ガトリング砲を真面に食らった黒鋼。
装甲の被弾衝撃を感知して、術式制御システムが自動で結界を展開する。

     ―結界維持魔力減衰率30% 維持限界魔力消費率40%―

『だ、誰――が!?』
左腕部から射出された対ユグラドライヴ拘束装置が黒鋼を掴む。
そのままブレードを起動、火花が散る。
「うわああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

   ―魔力限界出力 結界維持魔力減衰率80% 機体ダメージ増大―
          ―後方に建造物感知 回避して下さい―

                (こ、これじゃあ…!!)

 ――――――ドォン!!
ビルを一つ貫通し、もう一つにぶつかって止まる。

      ―機体耐久率急速低下 機体損傷拡大 機能停止箇所増大―


                  …もう………
               ………駄目か…………




      ――――――――――『敵機撃墜』――――――――――

「…ぁ?」
 気付くと拘束装置のブースターが火を噴いていないではないか。
何とか機体の頭部を動かして、敵を撃墜したと言う機体を探す。
すると上空に確かにセンサーが反応した。
凝視したのを感知したヘルメットから自動送信された信号により、映像が拡大される。
見たたのはチェングムがぺしゃんこになっている姿だった。
 ダメージにより機体展開が強制解除される。
術式運動が停止し、装甲が解放されて隊員の姿が露になる。
 ヘルメットを外した直後、ジェットエンジンの様な音の刹那、豪風が彼を襲った。
バックブースターの圧縮推力により上方へ打ち上げられた機体が一回転しながら縦軸の姿勢を元に戻しながら、左腕に内蔵された防御結界装置を展開する。
彼の目の前を通ったチェングム三号型がガトリング砲を掃射しながら上昇するも、そのまま上昇していた謎のユグラドライヴに、上昇旋回された。
 「…嘘だろ……?」
頭から急速下降した状態でありながら、まるで安定状態であるかの様に右手に持つ大型魔道銃を軽く数発発砲し、見事全弾命中させる。
 全てに被弾し、ブースターシステムが炎上、そのまま機体ダメージに繋がった三号型が爆発するのを無視して、ユグラドライヴが左方向へ急速反転し、そのまま首を持ち上げたまま、その首の方向へ旋回――最終的に安定姿勢となった状態で、背部巡航ブースターを点火し一気に加速する。
「…凄腕なんてレベルじゃ収まらない。
だ、大体、あの性能は何だ?
あんな高性能な機体を制御して…あんな動きが出来る。
幾らFCSがあっても、ロックオンに反応出来る神経…だと?」
13/06/07 21:54更新 /
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まろやか投稿小説 Ver1.50