読切小説
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厄災払いの盾
人は決して歩みを止めることは無い。
その性質ゆえに人類は此処まで歴史を紡ぐことができた。
言いかえるとなれば、欲望があるからこそ人類は此処まで進化できたと言うべきなのか。
俺もまたその人類の1人とでもいえば良いのかもしれない。
まあ、そんな言葉はAKにいるシャドウ・ムーンという奴が考えることだ。
あいつは結構、センチメンタルな人物だからな。
同盟交渉の時も何だか感傷的だったよ。
・・・っと、俺は内務大臣、Libertadoresのみんなからは大臣って呼ばれてる。
本当はもっと恰好いい名前があるんだけどな。
まあ、そんなことはどうでもいい。
今、俺は地下施設に建造されているガレージに居る。
苦節何ヶ月か、夜も寝ないで昼寝して造ったOWがあと少しで完成するのだ・・・。
まあ、そのために色々と無断で廃品回収をしたり、チームにも迷惑をかけたがそういうのも今日で終わりだ。
このOWを名づけるとしたらアイギスとでも名付けたらいいのか・・・
専門的な事はともかく、理論的には全ての弾の軌道をそらして一切の敵の攻撃をシャットアウトすることが出来る武器・・・なハズだ。
今までに存在しないタイプのOWを作ったのでプラグラム面が厳しかったが、ロウケンのOWシステムを参考にして何とか作り上げた。
参考とは言っても自分で半分作り上げたもので、ちょっと改良して展開中にも武器を使えるようにプログラムしておいた。
自分の持てる技術の全てを注ぎ込んだ自信作とでも言うべきかね。
まあ、それでもOWの例に漏れず、コイツも稼働時間は限られてくるがね。
それにあくまでコイツは試作型で、上手く稼働するかも良く分からない。
さてさて、最後の仕上げに入るとするか・・・
大臣はジッとテラスの様な場所から飾っているように置かれているOWを眺める。
恐らく、このOWを携えた機体は悪魔の翼を背中に持っている様にも見えるだろう。
そんな大臣の横からコツコツと歩いてくる足音が聞こえてくる。
「完成したの?」
その足音の主はOWを眺めている大臣に対して静かに言葉を言った。
二十代前半程度の好青年が大臣の横に立っていた。
「・・・もうすぐです。閣下。」
大臣は礼儀正しく横に居る人物に対してかしこまって言葉を言った。
この人は閣下と皆から呼ばれている人物だ。
詳しい事を今は話せないが、偉い人物だと言うことは言っておこう。
「随分と恐ろしい物を造ったね。まるで悪魔の翼に見えるよ。」
閣下は他愛も無い会話をしつつ上品に笑みをこぼした。
閣下と俺の感性はどうやら近いようだ。
「気にいったらのなら差し上げますよ?閣下。」
大臣は恐れ多いかのように言葉を静かに言った。
まあ、実際は試作品がどのような働きをするのかを見たいのもあったが・・・
「僕にそんな邪悪な翼は似合わないよ。」
閣下はハハッと軽く笑いながら大臣の申し出を断った。
自分がモルモットになっているということに気付いているのかは分からない。
でも、裏表の無さそうな自然な行動だった。
「じゃあ、閣下は誰に向いてると思うんです?」
大臣は閣下が断ったことを多少、残念に思いながらも質問を投げかける。
Libertadoresでは、合う人物と言えばあんまり居ない気がするが・・・
「そうだね。AKマスターアームズに居る子なんだけど・・・。」
大臣は思い当たる人物を既に思い浮かべていたのか、質問の後にすぐに答えを返した。
「同盟を組んだ部隊・・・か。」
大臣は思い返す様に言葉を呟いた。
俺が無断で廃品回収していた時に探しに来てくれた部隊か。
よくよく考えれば、彼らにも申し訳ない事をしたな・・・
「大臣を助けに来てくれた子かな。シャドウ・サンっていう名前だったと思うけど。」
閣下はそのまま言葉をつづけて大臣に対して説明をした。
「あの子か・・・何故?」
大臣は昔の事を思い返す様に静かに言葉を言った。
色々と帰還の時には五月蠅い小言を言われた。
部隊の事を考えろだとか、自分の事を大事にしてくれている人の事を考えろだとか・・・
子供らしい叱り方で叱責を受けた気がする。
そんな、あの子にこのOWが似合いそうだと判断した理由は何だろうか?
「いや、ちょっとギャップ萌えってやつかな・・・」
閣下はハハハと軽く笑いながら言葉を言った。
優しすぎるほどの人物に暴力的ともいえる武器を渡したらどうなるか・・・
閣下はそういうことを考えているのだろう。
「まあ、真面目な性格だから被験者としては向いてるか・・・。」
大臣は閣下の言うことを聞きつつもジッとOWに視線を向けて静かに言葉を呟いた。
考察していることをすぐに口に出してしまうのが俺の悪い癖だ。
「やっぱり、僕で試すつもりだったんだね。」
閣下はクスリと軽く微笑んで言葉を静かに行った。
口ぶりからして大臣の本心は見抜いていたのかもしれない。
「あ、いや・・・そういうことでは・・・。」
大臣は慌てた様な感じで閣下に言葉を返した。
うっかりと自分の本心を出してしまったのが悪かった・・・。
このまま無音の状態が続いて居れば本当に酷い空気になっていただろう。
助け舟とも言える様なコツコツという足音が響いた。
「ふぁ〜、なにしてるんですか〜?」
眠そうに欠伸をしながら十代中期程度の少女が2人に向かって近づいていく。
おお、麗しきMy エンジェル、サーニャちゃんだ。
そういえば昨日は夜間防衛任務についていたんだっけ・・・
ある意味、助かった・・・。
「見てくれよ、サーニャちゃん。」
大臣は誤魔化す様な感じで指をビシッと自分が作り上げたOWに向かって向けた。
「何ですか〜?広がったトングみたいですね〜。」
サーニャは惚けた様な感じでクスリと笑いながら言葉を言った。
何だか良く分からない様な例えだが、これが天然なのだろうか。
「トングですか・・・なるほど。」
閣下はむう・・・と眉をひそめながらジーッとOWを凝視する。
そう言われれば、そんな気がすると思ったのか、最後に納得した様な言葉だ。
「トング・・・。」
大臣はサーニャに訳の分からない例えをされたのを聞いて言った言葉を呟くだけだった。
多少呆れている様なそんな感じだ・・・。
まあ、サーニャちゃんはいっつもこんな感じだから言っても今更、なんだが・・・
「これはどんな武器なんですか?」
サーニャは興味しんしんでジーッとOWを見ていた。
閣下には、一度、聞かれた事があるが、サーニャちゃんにはこれまで聞かれなかったな。
「全ての攻撃を弾くOWかな。」
大臣は簡単にサーニャに対してどんな武器か説明した。
サーニャちゃんはどんな反応をしてくれるだろうか・・・。
「じゃあ、これでリーダーのパイルも怖くないですね!」
サーニャはフフッと微笑みながら大臣に対して言葉を言った。
ああ、話してなかったが、うちのリーダーはヒートパイルの名手だ。
AKにも杏子とかいう、ちょっと苦手な女性もパイルの名手がいるが、実力は彼女以上と言っておこう。
なんせ、セントエルモとかいう大型戦艦を単機でパイルを4本使って落としたんだからな。
「残念だけど、近接攻撃には効果が薄いんだよなー。」
大臣はサーニャの言葉を聞いて肩をすぼめながらハアと言葉を言った。
模擬戦でいっつもリーダーはパイルでついてくるからなー。
本当にこれが対抗できる武器にならないのが残念だ。
「そうなんですかー。はうー。」
サーニャも期待していたのか、残念そうに言葉を言って溜息をついた。
「大臣、試作機はAKの方に回してテスト運用させましょう。我々のチームではデータ計測が難しいですし・・・」
閣下は大臣に対して論理的にどうするかを言うのであった。
まあ、閣下の言うとおりで、うちのチームは戦力が偏り過ぎている。
リーダーがパイル、あとは全員重量ACだ。
「そうだな。AKのサンにでも送ってみるか・・・」
大臣は閣下の言うことを実行するつもりか、顎に軽く手を当てて静かに言葉を言った。
確かにあの子の黒い機体には映えるかもしれない・・・。
「あー、そういえば、大臣殿。リーダーが呼んでいましたよ〜」
今更、思い出したようにサーニャは大臣に対して言葉を言った。
まあ、こんな性格のサーニャちゃんが好きなんだけどな。
「そうなのか・・・。じゃあ、行ってくるか。」
大臣は何で呼びつけられたのだろうと静かに考えながらOWから視線を離してテラスの手すり付近から離れた。
面倒なことを押し付けられなければいいんだけどな・・・。

「大臣」
男性 23歳前後
Libertadores所属、主に後方支援担当。
真面目なトリックスターとでも言うような性格。
与えられた仕事は十分にこなすが、副業の方を一生懸命やることが多い。(廃品回収など)
同チームの武器開発者でもあり、新型のOWを造る辺り、かなりの技術者。
ACの操作技術は余りないが、咄嗟の判断力は目を見張る者がある。
主な使用機体は特になく、仲間たちの機体によってアセンブルは変わる。
サーニャの事が好きで、チーム内唯一のオアシスとなっていたりする。
閣下には、丁寧な口調で接することが多く、主従の関係を彷彿とさせる。

「閣下」
男性 23歳前後
Libertadores所属、主に前戦維持担当。
性格は貴族を思わせるほど、上品で丁寧な性格。
搭乗機体は重量二脚にKARASAWAを携えた重量二脚。
精密で繊細な攻撃で敵を確実にしとめる。
チーム内の人からは閣下と言われており、チームの絶対的存在。
何処かの貴族の血筋を引いていると言う噂も・・・

「サーニャ」
女性 17前後
Libertadores所属、主に前戦維持担当。
才色兼備でしっかりとした女の子。
何時も眠そうな所為か、天然でおっとりとした性格をしている。
その性格はかなり人気でファンクラブがあるとか・・・
あとAKマスターアームズにも心を惹かれる人がいたりするが、名前は此処では出さない。
搭乗機体は重装甲のタンクでキャノンを軸に火力支援を担当する。
前のチームではロウケンさんと一緒のチームだった。
12/04/24 00:27更新 / シャドウ

■作者メッセージ
大臣・・・約束は果たした。
では、これからもよろしく頼むぞ!

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