連載小説
[TOP][目次]
人と企業の嵐 OK
 再び激化し始めた闘い。
軍事生産区域に指定された地下都市は大規模な再構築により人々の流れを滅茶苦茶にし始めた。
 経済の混乱に乗じるテロリストと、経済混乱を鎮静化させるべく結成された各組織の保安部隊との戦闘は、一か月の内に急速に通報数を増加させた。
僅かな国家派は、既に大規模組織となり始めた国家派レジスタンスと、その首を打ち取り賞金を得ようとするミグラント勢力、それに対抗すると同時に、小規模国家はテロリストを駆逐せんとする保安部隊による三つ巴の激戦となり、都市の過半数を機能停止に陥らせた。
 これによる生産力低下が地上での戦線に影響を与え、企業連合は全力を出す事が出来ず仕舞いとなっていた。
これを長期的危機へ繋がると判断したカラードは、残りの全ての戦力を保安組織に投入、その他多数のレイヴンズ・コンコードからの依頼によりレイヴン達が戦場に飛び立った。
 今や地上も地下も、安全な所等ありもせず、戦場でなくとも外出すら混乱な程、その治安は低下していた。
 既に体制を持った国家派レジスタンス・コロニーが遥かに安全と言う事を突き付けられた企業コロニー市民は、難民としてレジスタンス・コロニーへ逃げ出し、その勢いは最早企業が保安部隊を結集させる必要すら発生し始めていた。
 勢力の弱いレジスタンス・コロニーは力を拡大すべく好機と見た。
だが当然、スパイは居る物だ。
難民受け入れ開始より半年、多数の小規模国家派レジスタンス・コロニー衰退に、生き残った小規模コロニーは危機感を覚え、より閉鎖的になり、結果として衰退してしまうと言う事態が多発、大規模コロニーや、それによる同盟により一時的に物資流通を小規模なレジスタンス・コロニーへ渡し、それと引き換えに戦力を得る事で、企業の保安部隊に対する防衛手段を手堅い物へと昇華させた。
 
 銃声が轟く。
先頭を走行していた戦車の上面へ命中、爆発する。
直後戦車を撃った四脚のACへビルの下から弾幕が飛ぶ。
 直後、四脚ACをビルの真下から軽量二脚の軽量級ACが強襲、左手に持つ高出力レーザーライフルでコアの迎撃用機銃を破壊、同高度になった瞬間右腕のロングレンジタイプのレーザーブレードをトリガー、背部のミサイルと共に頭部とコア上面を焼き切り、そのACを蹴ってコアの迎撃用機銃で頭部のあった辺りを数発直撃させてACを撃破、そのまま直進して大通りを右に曲がって高速移動型MT四機を確認、左右で違うミサイルと肩部連動ミサイルを起動、マルチロックして一斉に撃ち放つ。
一機はレーザーバルカンで、一機は弾幕型ミサイルで一機は回避、一機はプラズマキャノンで纏めて叩き落とし、一機は弾幕型ミサイルを撃ってからスモーク弾を射出、減速した。
一機目は撃ち落とせこそしたが、全てではなかった為被弾、損傷した。
二機目は回避し切れず、全てでこそないが大半のミサイルを受け大破。
三機目は全てのミサイルを破壊、余ったミサイルがビルを襲う。
四機目は一発を残してミサイル破壊に成功、残る一発も間一髪で回避に成功する。
 残った三機が弾幕型ミサイルを連続使用するも、ACが一機だけ何とか通れる狭さの建物同士の隙間に侵入、ミサイルの全てがビルに当たる。
 追手のMTを上から攻撃する為に、グラインドブーストを起動、隙間を出る前に空中で通常旋回を済まし、ビルを蹴ってレーザーライフルのチャージを開始する。
一機目をロックオンした所で最大チャージ、発射し、慣性に身を任せながら三種類のミサイルを再び起動、奥のビルをセンサー任せに蹴り、機体を上方ヘ持ち上げる。
残りの二機が慌て出した所でトリガー、ビル諸共機体反応が消失する。
 刹那、凄まじい地震が発生する。 
≪敵識別反応、6時…右です≫
感に従ってバックグラインド、これで一発目を、二発目はビルを蹴ってフェイントを掛けて、すぐに右グラインドを発動、計二発の高威力プラズマ弾の回避に成功する。
 ビルから離れて戦車部隊と合流する。
ビルが倒れるのが見えた。
 第二波が来れば戦車部隊に甚大な被害が出る。
一撃の壊滅も含まれるが、仮に壊滅せずとも道が消される可能性が非常に高いので、プラズマ弾の発射主へ急行する。
 刹那無数のミサイルが別の高速道路やビルを破壊しながら、それでも壁として襲い掛かる。
そう、【壁】だ。
 より低い所をオーバードブーストで駆け抜ける。
自分を見失ったミサイル達が当たり構わず破壊を尽くし、煙だらけ爆発だらけにしてしまう。
煙が自分を包まないのはオーバードブーストによる豪風故だろう。
 高速道路の巨大インターチェンジ、及び、それを飲み込んだ巨大なビルの中に入る為、高速道路上に移動、ミサイルを躱しつつ、突入し半壊して天井の高くなっていた立体駐車場でオーバードブーストを停止、中央の吹き抜けの所を壁にすべく、移動するも、軍事施設程耐えられる筈もなく床や天井毎、その部分が吹き飛んでしまった為、迎撃用機銃をオート、誘導弾限定に設定しレーザーライフルの一撃で道を作り、吹き抜けに飛び込む。
 数秒後、先程の非にならぬ出力のプラズマ弾が頭上を駆け抜けた。
建物が倒壊する。
その前に脱出せねば。
幸い、平面駐車場に続く道も吹き抜けであった為、ミサイルで邪魔な所を吹き飛ばす。
 オーバードブーストで飛び出し、既にレーダー画面をピンクで染め上げていたミサイルがACの回避に追い付かず、ビルに直撃、内部を破壊する。
 大穴が空いたビルは、左右の部分が上の重量に耐え切れず、粉々になってしまい、上の部分全てが圧し掛かった衝撃で下の部分が粉砕され、一気に崩れ落ち始める。
 落ちて来る残骸を回避しながらビル街の陰を盾に、一気に目標へ接敵する。
分かっていた事だが、相手は超巨大なアームズフォートだった。
正面に備えられた巨大な掘削ブレードを左右に開けて顔を出しているプラズマ弾発射装置も見える。
側面には大量の大型ガトリング砲と防衛用であろう無数のガード砲台が貼り付けられており、その数は正しくビッシリである。
迂闊に近づけばビル街毎蜂の巣にされるのは目に見えていた。
 上面部分からミサイルが発射される事は辛うじて分かったのだが、肝心の発射装置の姿は巨体故にACでは登り切る前にチャージングが発生してしまう。
 通信が入る。
『レイヴン、ご苦労だった。
作戦エリア離脱完了だ。
敵が少なかったが、君の腕は鮮やかだったよ。
今度も味方だと嬉しいね』
それを聞いて、とっとと帰還する事にしたレイヴン。
そんな彼の目の前にノーマルが現れる。
四脚の重装甲型ノーマル、左腕自体がエネルギーシールドになっており、右腕は肘の関節すらない大口径のカノン砲となっている。
その奥は右腕がガトリングガンになったタイプで背中にジェネレーターと弾倉のと思われる物を背負っている。
それが前後に5機ずつ。
計20機だ。
 攻撃が始まる。
すぐに飛び上がり、ビルを蹴ってレーザーライフルを発射する。
カノン砲の弾薬に引火でもしたのか物凄い規模の大爆発をするノーマル。
しかし、それに巻き込まれても平然と砲弾や弾丸を叩き付けて来る。
それに顔を出せば問答無用でアームズフォートから攻撃される。
 苦肉の策でオーバードブースト、線路上でステップ、グラインドブーストを挟んでオーバードブースト、鉄道用トンネルを使って、そのまま撤退に成功したのだった。

 レイヴンの護衛を受けていたGA戦車部隊が連続砲撃を開始する。
地上に出ようとする難民、及び護衛MTに対するノーマルと戦車による妨害作戦である。
難民側もACが二機いるが、どちらも貧弱な性能しかない型落ち機だ。
性能レベルの言落ち来つつある現在のノーマル相手では無理がある。
加えて、どちらも素人だ。
碌な攻撃方法を持ち合わさず、必死に逃げて、何とかロックオンできているのが現状で、その攻撃効率はマシンガンであるにも拘らず熱暴走の一つさえ発生させられていない。
 「こんな所で死ねるか、死ねるかよ!!」
ミサイルを起動、ノーマルへ発射。
しかしライフルで的確に破壊され、対応に手間取っている間に別の機体がMTへ接近する。
 もう一機のACがすかさず左手に持つバズーカを直撃させ、MT達がレーザーで集中砲火、何とか撃破に成功するも、別のノーマルがライフルでMTを撃破し、難民へ被害が出る。
『踏ん張れぇええ!!』
集団でセミオート射撃して接近するノーマル達に逆関節型の格安MT達がレーザーガンとロケット弾を乱発して、ノーマルの内、一機の左腕を破壊する。
其処にACのマシンガンが二方向から放たれる。
衝撃で硬直してしまったノーマルが呆気なく爆散した瞬間、真下のノーマルへ素人レイヴンがレーザーブレードを放つ。
ブレードが直撃し、更に奥へACが突き進む。
「うぉおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!!!!」
背面のガトリングガンを起動する。
 「っ」
此処でミスに気付く素人レイヴン。
囲まれた、つまり出過ぎたのだ。
「拙い!!」
焦ってトリガーを入力する。
しかし、旧式のOSなので【構え】が発生してしまい、中途半端な方向を向いていた所をノーマル達に攻撃され、呆気なく爆発してしまった。
 しかし、もう一機のACは粗削りで素人らしい動きではあったが、此方よりは格段に動き方が的確であった。
中量逆関節、逆関節型脚部採用機特有の対空性能の良さと、サイティングの慣れにより、狙いの精度が良くなり始めたのだ。
 チェインガンの直撃を受けたノーマルがバズーカの直撃を食らい大破。
右手のマシンガンで更に一機撃破、オーバードブーストでMTを攻撃する重装甲型ノーマルへマシンガンとバズーカを乱射して、ノーマルの爆発を確認してオーバードブーストを停止。
 レーダーを確認すると、敵反応は無い様だ。
「っ、っは、っは、っはぁ、っはあ…ッッ!!」
『お疲れ様、レイヴン。
良い動きだったわ』
「…ぁ、っ。
ああ、はぁ、っ…はぁ…。
組織の方は…」
『見ての通りです』
リンク情報がメインディスプレイに表示される。
【Lost】
ロスト、つまり機能停止。
そして見るも無残なACの残骸。
(やっぱり、そうだよな)
戦闘の疲れ以上に心が重くなった。
「戦うには…この精神じゃ弱過ぎる…」
13/04/30 17:34更新 /
前へ 次へ

■作者メッセージ
一応チャージングの説明をします。
ゲーム中、と言っても旧作に限ってですが、ACはブースターを使い続けていたり、エネルギー火器を撃ち続けたままだと何れゲージが無くなります。
此処迄は以降の作品も同じですが、旧作はゲージが無くなると満タンになる迄エネルギー消費する行動の一切が取れません。
エネルギー兵器しか装備していない時にチャージングすると発射すら出来ないのです。
ブースト出来ないACは冗談抜きで的でしかないので、事実としてアリーナで一番最初に戦うレイヴン、特にAC2の最初の相手はブーストする事が一切ないのです。
対してアリーナの上位レイヴンは動きが激しく、中々攻撃出来ません。
勿論、上位だから、で説明は終了しますが、具体的に説明した場合、単純に上位レイヴン程ブースターを吹かす割合が高い、特にランク1等になると常にブーストし続けるので、着地した瞬間以外はブースターの音が聞こえ続けます。
勿論ブースト縛りで対戦した場合でも上手い下手は出るでしょうが、どれだけ上手い人でも、自分だけがブースト使用不能では相手が小学生でも絶対に勝てないでしょう。

サイティング
サイティングとはゲームの場合、画面中央に敵を捉え続ける行為、技術の事です。
旧作の場合ロックオンサイトに捉える必要がある上、サイト自体がある程度敵を追いかけ、画面も敵の方を映そうとするので、必ずしも中央に、となりませんが、自分が動くか相手が動くか、ロック時に対象がサイトの端の方で捉えられたりしていない限り、つまり相対的なズレを含めて、ズレがあれば対象が画面中央でなくても捉える事が出来る場合もあります。
が、これは飽く迄も追跡補助的な物でしょう。
流石に真横の敵は、最初からサイトに入りませんし、入っていてもプレイヤーが分かり難いので、やはりサイティングと言えば画面中央に敵を収める、と考えた方が良いでしょう。
 実際のコクピット上では…まあ、頭部が旋回するなりしてくれはするでしょうが…。

関係ないですがACのコクピットで設定を調べる限り滅茶苦茶狭いらしいですね。
それを考慮してナストロファージの操縦席を描写したのですが…。
フロムがAC版戦場の絆を開発したら、狭いでしょうね。
 最も、レイヴンには絆なんて概念、訓練施設でゴミ箱に入れてる様な連中しかいないでしょうが……。

TOP | 目次

まろやか投稿小説 Ver1.50