兄妹
「”アディーナ”は、”ダークネススカイ”の前に、ふわりと降り立った。周囲には、”ジャンネッタ”の無残な破片。
”リンダちゃん、チューマー…!
兄さん、兄さんなんでしょう? なんて、ことを…!”
”ダークネススカイ”のカメラアイは、冷たく”アディーナ”を見下ろしていた。
”兄さん…。やっと、会えたのに…。こんなのって、酷いよ!”
”ダークネススカイ”は黙ったまま、双肩のグレネードランチャーを展開した。
”兄さん…!”
”ダークネススカイ”のグレネードランチャーが咆哮し、それを合図に”アディーナ”は宙を舞った。
”兄さん、あたしが、わからないの?コロンよ?”
続けて発射されるリニアキャノンをかわしつつ、コロンは兄を呼び続ける。
”4年前のあの日、あたしを置いていなくなった兄さんを、どんなに探したことか…!”
まとわりつく”アディーナ”を、ブレードで振り払おうとする”ダークネススカイ”だが、そのことごとくを回避される。
まるで、風に舞う木の葉を薙ごうがごとく。
”覚えてる?あの日。クリスマスだったね。必ず帰ると約束して、兄さんはいなくなった。
兄さん。あたし、レイヴンになったんだよ。
いっぱい、辛いこともあった。泣いた数なんて、数え切れない。”
”ダークネススカイ”は距離を離そうと、急速に後退するが、”アディーナ”は離れない。
”でもね、兄さん。
あたし、いろんな人に会えた。たくさんの仲間ができた。
あたし、それで幸せだった。兄さんのことを忘れられるくらい。
でも、それが、兄さんは許せないんだよね。
兄さんは、兄さんがいなくなった後、あたしが手に入れたものを、今、壊してるんだよね。
うん…。それで、元通り。
優しかった昔の兄さんが、あたしのところに帰ってくるのなら。”
”アディーナ”は”ダークネススカイ”の背中に飛びついた。
”でも、兄さんは、昔の優しい兄さんなの?
ううん。少なくとも、あたしは、違う。
あたしは、もう昔のコロンじゃない。
あたしのものを壊しても、もう、昔には返れないの。
兄さんも同じ。
兄さんは、変わってしまった。
砕けた幸せは、もう、元には戻らないの。
過ぎてしまった時間は、決して返らないの。”
”アディーナ”は”ダークネススカイ”のコクピットハッチに手をかけた。
考えられん操縦技術だ。かつて『紺碧の隼』と呼ばれた、コロンの卓越した強さを垣間見た気がした。彼女には、”ダークネススカイ”など、その気になればいつでも破壊できたのだ。
しかし、”アディーナ”がその手に力を入れた、その時、”ダークネススカイ”の右手が背後に回った。そして、その右手で”アディーナ”の頭部を掴み、背中から強引に引き剥がした。
”あっ!?”
”ダークネススカイ”は、”アディーナ”を掴んだまま、大き振りかぶり、格納庫の床へ力任せに叩き付けた。
機体の砕ける、嫌な音が響く。
”ぐっ…!”
床の上で潰され、動かなくなった”アディーナ”に向かって、”ダークネススカイ”はグレネードキャノンを展開していく。
終わる。全てが。
…しかし。
”ヴァーテブラ兄さん!!”
コロンの叫びに、”ダークネススカイ”の動きが、ぴたりと止まった。
”兄さん…?”
”ダークネススカイ”は、”アディーナ”にゆっくりと背を向け、反対側へ向かって歩き始めた。その向かう先には、ケイのいる小部屋だ。
”何?何だ?何が起こった?”
ケイの、慌てたような声が聞こえる。
”ダークネススカイ”は、小部屋の外で立ち止まると、無言のままその右拳を振り上げた。
”やめろォー!!”
ケイの悲鳴もむなしく、拳は振り下ろされた。
ケイのいる小部屋は跡形もなくつぶされ、黒煙を上げた。
そして、”ダークネススカイ”は、拳を突き立てたその格好のまま、動かなくなった。」
”リンダちゃん、チューマー…!
兄さん、兄さんなんでしょう? なんて、ことを…!”
”ダークネススカイ”のカメラアイは、冷たく”アディーナ”を見下ろしていた。
”兄さん…。やっと、会えたのに…。こんなのって、酷いよ!”
”ダークネススカイ”は黙ったまま、双肩のグレネードランチャーを展開した。
”兄さん…!”
”ダークネススカイ”のグレネードランチャーが咆哮し、それを合図に”アディーナ”は宙を舞った。
”兄さん、あたしが、わからないの?コロンよ?”
続けて発射されるリニアキャノンをかわしつつ、コロンは兄を呼び続ける。
”4年前のあの日、あたしを置いていなくなった兄さんを、どんなに探したことか…!”
まとわりつく”アディーナ”を、ブレードで振り払おうとする”ダークネススカイ”だが、そのことごとくを回避される。
まるで、風に舞う木の葉を薙ごうがごとく。
”覚えてる?あの日。クリスマスだったね。必ず帰ると約束して、兄さんはいなくなった。
兄さん。あたし、レイヴンになったんだよ。
いっぱい、辛いこともあった。泣いた数なんて、数え切れない。”
”ダークネススカイ”は距離を離そうと、急速に後退するが、”アディーナ”は離れない。
”でもね、兄さん。
あたし、いろんな人に会えた。たくさんの仲間ができた。
あたし、それで幸せだった。兄さんのことを忘れられるくらい。
でも、それが、兄さんは許せないんだよね。
兄さんは、兄さんがいなくなった後、あたしが手に入れたものを、今、壊してるんだよね。
うん…。それで、元通り。
優しかった昔の兄さんが、あたしのところに帰ってくるのなら。”
”アディーナ”は”ダークネススカイ”の背中に飛びついた。
”でも、兄さんは、昔の優しい兄さんなの?
ううん。少なくとも、あたしは、違う。
あたしは、もう昔のコロンじゃない。
あたしのものを壊しても、もう、昔には返れないの。
兄さんも同じ。
兄さんは、変わってしまった。
砕けた幸せは、もう、元には戻らないの。
過ぎてしまった時間は、決して返らないの。”
”アディーナ”は”ダークネススカイ”のコクピットハッチに手をかけた。
考えられん操縦技術だ。かつて『紺碧の隼』と呼ばれた、コロンの卓越した強さを垣間見た気がした。彼女には、”ダークネススカイ”など、その気になればいつでも破壊できたのだ。
しかし、”アディーナ”がその手に力を入れた、その時、”ダークネススカイ”の右手が背後に回った。そして、その右手で”アディーナ”の頭部を掴み、背中から強引に引き剥がした。
”あっ!?”
”ダークネススカイ”は、”アディーナ”を掴んだまま、大き振りかぶり、格納庫の床へ力任せに叩き付けた。
機体の砕ける、嫌な音が響く。
”ぐっ…!”
床の上で潰され、動かなくなった”アディーナ”に向かって、”ダークネススカイ”はグレネードキャノンを展開していく。
終わる。全てが。
…しかし。
”ヴァーテブラ兄さん!!”
コロンの叫びに、”ダークネススカイ”の動きが、ぴたりと止まった。
”兄さん…?”
”ダークネススカイ”は、”アディーナ”にゆっくりと背を向け、反対側へ向かって歩き始めた。その向かう先には、ケイのいる小部屋だ。
”何?何だ?何が起こった?”
ケイの、慌てたような声が聞こえる。
”ダークネススカイ”は、小部屋の外で立ち止まると、無言のままその右拳を振り上げた。
”やめろォー!!”
ケイの悲鳴もむなしく、拳は振り下ろされた。
ケイのいる小部屋は跡形もなくつぶされ、黒煙を上げた。
そして、”ダークネススカイ”は、拳を突き立てたその格好のまま、動かなくなった。」
10/02/28 08:38更新 / YY