「目標は、地下基地最奥のコントロールセンターと研究所。そこにいるであろう、ケイ＝リュウガタケの確保を最優先とする。可能であれば、格納庫の兵器の破壊も行う。
部屋を出ようとしたとき、コロンが慌てたように振り返った。

『レイピアさん、アタシの最後の質問の答えは？フェアリちゃんは、そして貴女は、何故アタシを知っているの？』

レイピアは、コロンの目をしばらく見つめた後に、こう答えた。

『それは、いずれ知ることになるわ。コロン＝トランスバースさん、貴女は、運命に立ち向かわなければならない。必ず、生きて帰ってきてください。』

コロンは少し考えた後に、コクリと頷いた。
彼女はこれから、これまでにない過酷な体験をすることになるのだった…。


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俺たちが廃ビルから外へ出ると、待機しているはずだった”アディーナ-2”の姿はなかった。
俺たちのACは無人のまま、降りたときの状態で残されていた。

『フォーラちゃん！？』

コロンは暗闇に向かって絶叫したが、返事はなかった。
どこまでも続く漆黒の闇は、冷徹な静寂を湛えていた。

『どこへ行ったんだ。探すぞ。』

ジャックに続き、俺たちはそれぞれのACのコクピットへ戻り、戦闘モードで起動した。
暗視モードを開くと、路上に点々と、赤いACの破片が散らばっているのが見えた。”アディーナ-2”のものだ。

”熱源反応がありますわ。あっちです！”

高性能レーダーを搭載したリンダの”ジャンネッタ”は、逸早く何かを察知したらしい。
もと来た道を少し戻り、来た側と反対側に交差点を曲がり、ビル影に入ると、そこには大きなクレバスが口をあけていた。地盤沈下による跡だろうか。その周辺にも、血のように真っ赤な破片が散らばっていた。
ジャックを先頭に、俺たちは慎重にそこを降りていった。
降りた先は、少し開けた空間になっていた。

俺たちがそこで見たものは…、


”アディーナ-2”の無残な骸だった。


”フォーラちゃん！フォーラちゃん！？”

コロンの半狂乱の叫びが聞こえる。
その向こうに、一機のACの姿が見えた。
青い、中量二脚型AC。機体色は、コロンの”アディーナ-1”とほぼ同じだ。
右手には、たった今、フォーラのACを葬ったばかりの大型のレーザーライフルが、冷たく光っている。
肩には、王冠のエンブレム。

”敵、か。行くぞ！”

ジャックの”ドゥルカマーラは、その中量二脚ACに突進し、重量二脚とは思えぬ速度で切り返し、両手のバズーカを連射した。その中量二脚は弧を描いて飛翔し、それをギリギリで回避すると、ドゥルカマーラ”の側面に現れた。至近距離！

”！！”

次の瞬間、”ドゥルカマーラ”の右腕が、宙を舞った。
中量二脚ACの青い刀身のブレードが、暗闇を明るく照らす。

”ぐぁわああああっ！？”

ジャックの、己の身を切り裂かれたかのような絶叫が響く。
俺は、”メタスターシス”のOBを点火し、２機の間に割り込んだ。再度振り下ろされるその青い刀身をブレードで受けると、エネルギーの干渉によるスパークが飛び、俺と敵の間合いが離れた。手負いの”ドゥルカマーラ”はその隙に距離をとり、体勢を立て直す。

”！”

敵は、俺を認めたらしい。一直線に間をつめるや、再びブレードで斬りかかった。二本のブレードは交錯し、敵のブレードは俺のACのわき腹をかすめ、俺のブレードは、敵ACのレーザーライフルを薙ぎ払った。
暗闇に響く、鋭い金属音。

”チューマー、どいてッ！”

リンダの声に反射的に飛びのくと、間髪いれず、そこにグレネード砲弾が着弾した。
”ジャンネッタ”の大口径キャノンだ。
轟音と共に床が崩壊し、”アディーナ-2”の残骸とともに、敵ACは床下に飲み込まれていった。

コロンの”アディーナ-1”が、その崩落地点に駆け寄った。
しかし、そこは既に埋まり、追跡はもはや不可能だった。

”フォーラちゃん…！　　　兄さん…！”

コロンの、泣くような声が聞こえる。

”兄さん、だと…？”

右肩からスパークを散らせながら、”ドゥルカマーラ”が歩み寄る。

”ええ。兄さん。ヴァーテブラ兄さん。
あのACとエンブレムは、間違いないわ。
ずっと…探してたのに。逢いたかったのに。
なぜ、こんな所で…。なぜ、こんなことに…。

兄さん…！”」