星に祈りを
”Mk.II”は動かない。
”ダークネススカイ”のブレードはコクピットは外したものの、操縦系か駆動系のどちらかに深刻なダメージを与えたらしい。
”ジャンネッタ”のコクピットハッチが開き、リンダ君が飛び出した。
”ダークネススカイ”はブレードを格納し、その動きを止めた。
リンダ君が”Mk.II”のコクピットハッチの脇の操作盤を叩くと、ハッチは白煙を上げて開いた。
”Mk.II”のコクピットには、フェアレ君がいた。
衝撃で頭を切ったのだろうか。鮮血が頬をぬらしている。
「フェアレ!」
リンダ君がコクピットへ身を乗り出した。
「来るな!」
フェアレ君は、その血にぬれた手で拳銃を握り、銃口をリンダ君に向けた。
リンダ君は引かない。
軽い銃声がし、リンダ君のこめかみから一筋の血が流れた。
かすっただけのようだ。
そして、リンダ君は、
フェアレ君を、
しっかりと抱きしめた。
フェアレ君の肩の力がゆっくりと抜ける。
拳銃が、手からすべり、落ちた。
「フェアレ。
あなたは、必要な人。
あなたがいなくなれば、私は悲しい。
必要ない人なんかいない。
どんなに弱い人でも、なんの役に立たない人でも、必要ない人なんかいない。
みんな、生まれてきたからには、意味があるの。
どんなに小さい命でも、消えてしまいそうな存在でも、この世界に何かしらの意味があるの。
だから、
生きなくちゃだめ。
そして、他の人が生きるのを邪魔しちゃだめ。
きっと、悲しむ人がいるから…。」
リンダ君の、命の声であった。
フェアレ君に言っているようであり、もしかすると、彼女自身へ言い聞かせていたのかもしれない。
「私は、必要な子なの?」
「ええ。」
「私は、ここにいてもいいの?」
「ええ。」
「私は、この世界に、いてもいいの?」
「もちろん。」
フェアレ君はリンダ君に、しがみついた。
頬を流れる血はあふれる涙で薄まり、桃色のしずくとなって床に落ちた。
”ダークネススカイ”は、そのカメラアイを、す、と消した。
「フェアレ=フィー。貴様にも、必要な人がいたようだな…。」
チューマー君は、軽く息をついて、目を閉じた。
”ジュピター”隔離ブロックの医務室。
ベッドの上には、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた、ヴェーナ君がいた。
その脇には、たった今父親となったばかりの、アーテリー中佐。
「静かになったね、あなた。」
「ああ。終わったのだろう。」
「リンダちゃんが、勝ったわ。きっと。」
「そうだな。」
シャッターを開けると、澄み切った夜空には、星が瞬いている。
「綺麗ね。」
「ああ。まだまだ、空気は汚れていないようだ。」
「あの星たちに、お祈りしましょう。」
「ん?」
「この子や、リンダちゃんや、フェアレちゃん、
この世のみんな、みんなに、幸せがありますように。」
夜空はますます澄みわたり、星明りは全ての人を明るく照らしていた。
生きるために人を殺めねばならない、この戦乱が早く終わることを祈ろう。
どんな小さな命も、弱い命も、幸せに暮らせる世の中が来るのは、そう遠いことではないと信じて、私の話を終わる。
ご清聴に感謝する。
キャブ=ノルバスク
”ダークネススカイ”のブレードはコクピットは外したものの、操縦系か駆動系のどちらかに深刻なダメージを与えたらしい。
”ジャンネッタ”のコクピットハッチが開き、リンダ君が飛び出した。
”ダークネススカイ”はブレードを格納し、その動きを止めた。
リンダ君が”Mk.II”のコクピットハッチの脇の操作盤を叩くと、ハッチは白煙を上げて開いた。
”Mk.II”のコクピットには、フェアレ君がいた。
衝撃で頭を切ったのだろうか。鮮血が頬をぬらしている。
「フェアレ!」
リンダ君がコクピットへ身を乗り出した。
「来るな!」
フェアレ君は、その血にぬれた手で拳銃を握り、銃口をリンダ君に向けた。
リンダ君は引かない。
軽い銃声がし、リンダ君のこめかみから一筋の血が流れた。
かすっただけのようだ。
そして、リンダ君は、
フェアレ君を、
しっかりと抱きしめた。
フェアレ君の肩の力がゆっくりと抜ける。
拳銃が、手からすべり、落ちた。
「フェアレ。
あなたは、必要な人。
あなたがいなくなれば、私は悲しい。
必要ない人なんかいない。
どんなに弱い人でも、なんの役に立たない人でも、必要ない人なんかいない。
みんな、生まれてきたからには、意味があるの。
どんなに小さい命でも、消えてしまいそうな存在でも、この世界に何かしらの意味があるの。
だから、
生きなくちゃだめ。
そして、他の人が生きるのを邪魔しちゃだめ。
きっと、悲しむ人がいるから…。」
リンダ君の、命の声であった。
フェアレ君に言っているようであり、もしかすると、彼女自身へ言い聞かせていたのかもしれない。
「私は、必要な子なの?」
「ええ。」
「私は、ここにいてもいいの?」
「ええ。」
「私は、この世界に、いてもいいの?」
「もちろん。」
フェアレ君はリンダ君に、しがみついた。
頬を流れる血はあふれる涙で薄まり、桃色のしずくとなって床に落ちた。
”ダークネススカイ”は、そのカメラアイを、す、と消した。
「フェアレ=フィー。貴様にも、必要な人がいたようだな…。」
チューマー君は、軽く息をついて、目を閉じた。
”ジュピター”隔離ブロックの医務室。
ベッドの上には、生まれたばかりの赤ん坊を抱いた、ヴェーナ君がいた。
その脇には、たった今父親となったばかりの、アーテリー中佐。
「静かになったね、あなた。」
「ああ。終わったのだろう。」
「リンダちゃんが、勝ったわ。きっと。」
「そうだな。」
シャッターを開けると、澄み切った夜空には、星が瞬いている。
「綺麗ね。」
「ああ。まだまだ、空気は汚れていないようだ。」
「あの星たちに、お祈りしましょう。」
「ん?」
「この子や、リンダちゃんや、フェアレちゃん、
この世のみんな、みんなに、幸せがありますように。」
夜空はますます澄みわたり、星明りは全ての人を明るく照らしていた。
生きるために人を殺めねばならない、この戦乱が早く終わることを祈ろう。
どんな小さな命も、弱い命も、幸せに暮らせる世の中が来るのは、そう遠いことではないと信じて、私の話を終わる。
ご清聴に感謝する。
キャブ=ノルバスク
10/02/28 08:11更新 / YY