海上戦
夕暮れの海上。日は既に海面に没し、辺りは夕闇に包まれようとしている。
海上には航行中の2隻の戦闘艦、重巡洋艦”ジュピター”と軽巡洋艦”イオ”。
2隻は、輸送艦”プルートゥ”と接触の後、間もなく我が社の海上基地へ到着するはずであった。
しかし、事故が起こった。
”ジュピター”に格納されていた新兵器”ダークネススカイMK.II”が、艦の一部を破壊し、艦外へ飛び出したのだ。
”ダークネススカイMk.II”は、脚部を変形させ、そのフロート機構により、海上を滑り始めた。
その巨体を浮かせるフロート技術は、我が社の技術革新の賜物であるが、それがこの脱走を許すことになるとは、皮肉なものである。
”ジュピター”のブリッジで、格納庫から戻ったロドム中佐が、矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「出撃できるものは全て出ろ。
ガスホーク隊、全機出撃。AC”ジャンネッタ”と”ヴィオラ”は脚部をフロートタイプに換装の上、出撃。AC”ドゥルカマーラ”は”ジュピター”甲板上にて待機だ。軽巡”イオ”は下がらせろ。…全火砲、展開!」
「攻撃しますか?」
「威嚇射撃に止めよ。まずは、説得と捕縛を試みる。アレを敵に回したくはない。急げ!」
”ジュピター”、カタパルトデッキ。
警報の鳴り響く中、リンダ君はAC”ジャンネッタ”へ向かう。
四脚AC”ジャンネッタ”は既に脚部をフロート型に換装され、水上戦用にその姿を変えていた。
「ジャンネッタ、出られる?」
「出られます。フロート型なので、キャノンの使用には十分注意して下さい!」
「わかったわ。」
整備士との簡単なやり取りの後、リンダ君はAC”ジャンネッタ”のコクピットに収まった。
リンダ君には不慣れな海上戦である。フロートタイプでは、水上でキャノンを構えると浮力を失って沈んでしまう。
既に、コンソールパネルの灯は入っていた。リンダ君は、右手のレバーを倒す。
”戦闘モード、起動します。”
機械的なアナウンスの後に、AC”ジャンネッタ”は低く浮上した。
カタパルトデッキのハッチが開いてゆく。
「リンダ=アルピニー、AC”ジャンネッタ”、出撃します!」
AC”ジャンネッタ”は低い唸りを上げ、水しぶきをたてて海上へ発進した。
高速で遠ざかる”ダークネススカイMk.II”が、夕闇にかすんで見える。
「フェアレ…。逃げるの?どこへ行く気?…」
その時、背後から砲声が聞こえた。極太のプラズマ砲弾が海面を切り裂く。
”ジュピター”の威嚇射撃だ。
『フェアレ=フィー!止まれ!止まらねば、攻撃する!』
”ジュピター”から、警告が響き渡る。
”ダークネススカイMk.II”は、止まらない。
もう一条、プラズマ砲弾が青く海面を照らし、”ダークネススカイMk.II”をかすめる。
その時、”ダークネススカイMk.II”が、止まった。
そして、旋回し、”ジュピター”に向かって突進を始めた。
そのグレネードランチャーが発光するや、轟音と共に、”ジュピター”の艦首に高々と火柱が上がった。
破片が舞い上がり、ばらばらと海面に落ちる。
それを合図に、熾烈な海上戦が始まった。
”ジュピター”の甲板上に無数に突き出た機銃砲塔が一斉に”ダークネススカイMk.II”へ発砲する。
”ダークネススカイMk.II”はその弾幕をかいくぐり、”ジュピター”に肉薄する。
”ジュピター”から狂ったようにプラズマ砲弾が発射されるが、”ダークネススカイMk.II”は止まらず、すれ違った直後、”ジュピター”の艦尾は爆発し、もうもうと黒煙を上げた。
上空から戦闘機”ガスホーク”の中隊が”ダークネススカイMk.II”に襲い掛かる。
”ダークネススカイMk.II”の両腕に仕込まれた5連装リニアキャノンがその過半数を打ち砕き、粉砕する。
”ジュピター”のミサイル砲台から撃ち上げられた垂直ミサイルは”ダークネススカイMk.II”の迎撃機銃の前に到達することなく破壊され、逆に、”ダークネススカイMk.II”の垂直ミサイルによって、砲台は粉砕され、紅蓮の炎を上げた。
”ジュピター”のブリッジは、怒声と罵声に満ちていた。
「ガスホーク隊、壊滅!」
「第3エンジン停止!推力25%ダウン!」
「第3副砲、回転盤故障。旋回できません!」
「AC”ヴィオラ”撃墜!回収不能です!」
「うぬ…!」
ロドム中佐は拳を振って艦長席から立ち上がった。
「チューマー=マリグナントの”ダークネススカイ”はまだか!」
「間もなく整備が終わります!」
これを止めるには、同等の戦闘力をもつ”ダークネススカイ”をぶつける他にあるまい。これにかけるしか…。
と、その時、艦前面に火柱が上がった。
「格納庫破壊!”ダークネススカイ”、艦内にて座礁!出撃できません!」
「何!?」
ロドム中佐は息を呑んだ。
「復旧を急げ!本社に応援を要請しろ!”イオ”は状況によっては領域を脱出しろ!」
これまでか…!
海上には航行中の2隻の戦闘艦、重巡洋艦”ジュピター”と軽巡洋艦”イオ”。
2隻は、輸送艦”プルートゥ”と接触の後、間もなく我が社の海上基地へ到着するはずであった。
しかし、事故が起こった。
”ジュピター”に格納されていた新兵器”ダークネススカイMK.II”が、艦の一部を破壊し、艦外へ飛び出したのだ。
”ダークネススカイMk.II”は、脚部を変形させ、そのフロート機構により、海上を滑り始めた。
その巨体を浮かせるフロート技術は、我が社の技術革新の賜物であるが、それがこの脱走を許すことになるとは、皮肉なものである。
”ジュピター”のブリッジで、格納庫から戻ったロドム中佐が、矢継ぎ早に指示を飛ばす。
「出撃できるものは全て出ろ。
ガスホーク隊、全機出撃。AC”ジャンネッタ”と”ヴィオラ”は脚部をフロートタイプに換装の上、出撃。AC”ドゥルカマーラ”は”ジュピター”甲板上にて待機だ。軽巡”イオ”は下がらせろ。…全火砲、展開!」
「攻撃しますか?」
「威嚇射撃に止めよ。まずは、説得と捕縛を試みる。アレを敵に回したくはない。急げ!」
”ジュピター”、カタパルトデッキ。
警報の鳴り響く中、リンダ君はAC”ジャンネッタ”へ向かう。
四脚AC”ジャンネッタ”は既に脚部をフロート型に換装され、水上戦用にその姿を変えていた。
「ジャンネッタ、出られる?」
「出られます。フロート型なので、キャノンの使用には十分注意して下さい!」
「わかったわ。」
整備士との簡単なやり取りの後、リンダ君はAC”ジャンネッタ”のコクピットに収まった。
リンダ君には不慣れな海上戦である。フロートタイプでは、水上でキャノンを構えると浮力を失って沈んでしまう。
既に、コンソールパネルの灯は入っていた。リンダ君は、右手のレバーを倒す。
”戦闘モード、起動します。”
機械的なアナウンスの後に、AC”ジャンネッタ”は低く浮上した。
カタパルトデッキのハッチが開いてゆく。
「リンダ=アルピニー、AC”ジャンネッタ”、出撃します!」
AC”ジャンネッタ”は低い唸りを上げ、水しぶきをたてて海上へ発進した。
高速で遠ざかる”ダークネススカイMk.II”が、夕闇にかすんで見える。
「フェアレ…。逃げるの?どこへ行く気?…」
その時、背後から砲声が聞こえた。極太のプラズマ砲弾が海面を切り裂く。
”ジュピター”の威嚇射撃だ。
『フェアレ=フィー!止まれ!止まらねば、攻撃する!』
”ジュピター”から、警告が響き渡る。
”ダークネススカイMk.II”は、止まらない。
もう一条、プラズマ砲弾が青く海面を照らし、”ダークネススカイMk.II”をかすめる。
その時、”ダークネススカイMk.II”が、止まった。
そして、旋回し、”ジュピター”に向かって突進を始めた。
そのグレネードランチャーが発光するや、轟音と共に、”ジュピター”の艦首に高々と火柱が上がった。
破片が舞い上がり、ばらばらと海面に落ちる。
それを合図に、熾烈な海上戦が始まった。
”ジュピター”の甲板上に無数に突き出た機銃砲塔が一斉に”ダークネススカイMk.II”へ発砲する。
”ダークネススカイMk.II”はその弾幕をかいくぐり、”ジュピター”に肉薄する。
”ジュピター”から狂ったようにプラズマ砲弾が発射されるが、”ダークネススカイMk.II”は止まらず、すれ違った直後、”ジュピター”の艦尾は爆発し、もうもうと黒煙を上げた。
上空から戦闘機”ガスホーク”の中隊が”ダークネススカイMk.II”に襲い掛かる。
”ダークネススカイMk.II”の両腕に仕込まれた5連装リニアキャノンがその過半数を打ち砕き、粉砕する。
”ジュピター”のミサイル砲台から撃ち上げられた垂直ミサイルは”ダークネススカイMk.II”の迎撃機銃の前に到達することなく破壊され、逆に、”ダークネススカイMk.II”の垂直ミサイルによって、砲台は粉砕され、紅蓮の炎を上げた。
”ジュピター”のブリッジは、怒声と罵声に満ちていた。
「ガスホーク隊、壊滅!」
「第3エンジン停止!推力25%ダウン!」
「第3副砲、回転盤故障。旋回できません!」
「AC”ヴィオラ”撃墜!回収不能です!」
「うぬ…!」
ロドム中佐は拳を振って艦長席から立ち上がった。
「チューマー=マリグナントの”ダークネススカイ”はまだか!」
「間もなく整備が終わります!」
これを止めるには、同等の戦闘力をもつ”ダークネススカイ”をぶつける他にあるまい。これにかけるしか…。
と、その時、艦前面に火柱が上がった。
「格納庫破壊!”ダークネススカイ”、艦内にて座礁!出撃できません!」
「何!?」
ロドム中佐は息を呑んだ。
「復旧を急げ!本社に応援を要請しろ!”イオ”は状況によっては領域を脱出しろ!」
これまでか…!
10/02/28 08:09更新 / YY