必要なもの
巡洋艦”ジュピター”の格納庫内で、新兵器”ダークネススカイMk.II”の調整は、急ピッチで進められた。
本社の強化人間研究機関EPSSに蓄積されたフェアレ君のデータに基づき、”ダークネススカイMk.II”のAIプログラムを書き換えてゆく。
パイロットの操縦をサポートする高性能AIの存在も、この新兵器の特徴であった。
”ダークネススカイMk.II”は、チューマー君の”ダークネススカイ”の問題点を改良し、さらに軽量化を図ったもので、ACを上回る機動力と、圧倒的火力は健在だ。
『この”ダークネススカイ”2機をもってすれば、ミラージュなど物の数ではない』と、提督が息巻くのも頷けよう。
格納庫内。鎮座する”ダークネススカイMk.II”に歩み寄る4人があった。
ロドム中佐、リンダ君、そしてアーテリー中佐とヴェーナ君だ。
「まぁ、これがクレストの新兵器?」
歓声を上げたのは、お腹の大きなヴェーナ君だ。
妊娠10ヶ月。身重にも関わらず巡洋艦に乗り込んでいるのは、本人の希望が大きいようだ。
「そうだ。フェアレ=フィーとの適合も問題ない。すぐにでも実戦配備可能だ。」
薄笑いを浮かべ、胸を張るロドム中佐。
その時、”ダークネススカイMk.II”の胸部のコクピットハッチが開き、そこからフェアレ君が顔をのぞかせた。
「…ぞろぞろと、何しにきたの…?」
不審げな顔のフェアレ君に、アーテリー中佐が笑って答える。
「なに、家内のヴェーナが、ぜひ見たいというものでな。」
「ふうん。」
フェアレ君は、コクピット内から4人をぐるりと見回す。
「あなたがフェアレちゃんね。ヴェーナよ、よろしく。」
コクピットを見上げながら、ヴェーナ君は上機嫌だ。
「大きなお腹。病気?」
フェアレ君は、ピントはずれな問いをヴェーナ君に投げかける。
「え?あはは、病気じゃないよ。このお腹にはね、赤ちゃんが入っているの。」
「お腹に赤ん坊が?」
フェアレ君はきょとんとしている。
「ええ、そう。お父さんやお母さんには、教えてもらえなかったの?」
「うん…。私、捨てられちゃった。私は、いらない子だもの。」
「そう。可哀想に…。」
そこで、ロドム中佐が会話を遮った。
「”ダークネススカイMk.II”はどうだ、フェアレ。」
フェアレ君は、ぴくっと、ロドム中佐に目をやる。
「うん…。いいよ。これなら、何人でも殺せる。いらない人、いくらでも殺せる。」
「そうか。」
ロドム中佐は満足げだ。
フェアレ君は、一呼吸置いて、続けた。
「ね、私は、あなたたちに必要?」
「ああ。必要だとも。」
「戦いが終わっても、いっしょだよね?」
「いや、我々が必要なのは、フェアレの戦闘力だ。戦いが終わったら、どこへでも行け。」
フェアレ君の顔色が、さっと変わった。
「え…?私、いらない子なの?」
「?」
「…うそつき!!」
”ダークネススカイMk.II”のコクピットハッチがバタンと閉まった。
カメラアイが、ギン、と灯る。
その巨体が、大音響と共に震え始めた。
「いかん!フェアレ君、やめるんだ!リンダ君、ヴェーナをつれて逃げろ!」
アーテリー中佐の叫び声。
”ダークネススカイMk.II”は立ち上がり、格納庫の外界へ通じるハッチを向いた。
その双肩のグレネードランチャーがせり上がるや、轟音と共にハッチが吹き飛んだ。
「あっ!」
その爆風に、リンダ君とヴェーナ君は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ぐっ…。」
ヴェーナ君が、お腹を押さえてうずくまった。
「ヴェーナさん!?」
とっさの受身で立ち上がり、駆け寄るリンダ君。
「生まれるッ…!」
あろうことか、ヴェーナ君に陣痛が始まったようだ。叩きつけられたショックだろう。
行きかけたアーテリー中佐が振り返り、血相を変えて駆け寄る。
「ヴェーナッ!…医務室へ行こう。
リンダ君、すまいないが、私の代わりにアレを頼む。私はヴェーナを医務室へ連れて行く。」
苦悶の表情のヴェーナ君は、リンダ君を呼んだ。
「リンダちゃん。」
「はい、ヴェーナさん。」
「あの子…。フェアレちゃんを、助けてあげて…。
あの子に足りないのは、何か。リンダちゃんにはわかっているはず…。」
”ダークネススカイMk.II”は、轟音と共に艦外へ飛び立っていった。
鳴り響く警報。
一刻の猶予も無かった。
本社の強化人間研究機関EPSSに蓄積されたフェアレ君のデータに基づき、”ダークネススカイMk.II”のAIプログラムを書き換えてゆく。
パイロットの操縦をサポートする高性能AIの存在も、この新兵器の特徴であった。
”ダークネススカイMk.II”は、チューマー君の”ダークネススカイ”の問題点を改良し、さらに軽量化を図ったもので、ACを上回る機動力と、圧倒的火力は健在だ。
『この”ダークネススカイ”2機をもってすれば、ミラージュなど物の数ではない』と、提督が息巻くのも頷けよう。
格納庫内。鎮座する”ダークネススカイMk.II”に歩み寄る4人があった。
ロドム中佐、リンダ君、そしてアーテリー中佐とヴェーナ君だ。
「まぁ、これがクレストの新兵器?」
歓声を上げたのは、お腹の大きなヴェーナ君だ。
妊娠10ヶ月。身重にも関わらず巡洋艦に乗り込んでいるのは、本人の希望が大きいようだ。
「そうだ。フェアレ=フィーとの適合も問題ない。すぐにでも実戦配備可能だ。」
薄笑いを浮かべ、胸を張るロドム中佐。
その時、”ダークネススカイMk.II”の胸部のコクピットハッチが開き、そこからフェアレ君が顔をのぞかせた。
「…ぞろぞろと、何しにきたの…?」
不審げな顔のフェアレ君に、アーテリー中佐が笑って答える。
「なに、家内のヴェーナが、ぜひ見たいというものでな。」
「ふうん。」
フェアレ君は、コクピット内から4人をぐるりと見回す。
「あなたがフェアレちゃんね。ヴェーナよ、よろしく。」
コクピットを見上げながら、ヴェーナ君は上機嫌だ。
「大きなお腹。病気?」
フェアレ君は、ピントはずれな問いをヴェーナ君に投げかける。
「え?あはは、病気じゃないよ。このお腹にはね、赤ちゃんが入っているの。」
「お腹に赤ん坊が?」
フェアレ君はきょとんとしている。
「ええ、そう。お父さんやお母さんには、教えてもらえなかったの?」
「うん…。私、捨てられちゃった。私は、いらない子だもの。」
「そう。可哀想に…。」
そこで、ロドム中佐が会話を遮った。
「”ダークネススカイMk.II”はどうだ、フェアレ。」
フェアレ君は、ぴくっと、ロドム中佐に目をやる。
「うん…。いいよ。これなら、何人でも殺せる。いらない人、いくらでも殺せる。」
「そうか。」
ロドム中佐は満足げだ。
フェアレ君は、一呼吸置いて、続けた。
「ね、私は、あなたたちに必要?」
「ああ。必要だとも。」
「戦いが終わっても、いっしょだよね?」
「いや、我々が必要なのは、フェアレの戦闘力だ。戦いが終わったら、どこへでも行け。」
フェアレ君の顔色が、さっと変わった。
「え…?私、いらない子なの?」
「?」
「…うそつき!!」
”ダークネススカイMk.II”のコクピットハッチがバタンと閉まった。
カメラアイが、ギン、と灯る。
その巨体が、大音響と共に震え始めた。
「いかん!フェアレ君、やめるんだ!リンダ君、ヴェーナをつれて逃げろ!」
アーテリー中佐の叫び声。
”ダークネススカイMk.II”は立ち上がり、格納庫の外界へ通じるハッチを向いた。
その双肩のグレネードランチャーがせり上がるや、轟音と共にハッチが吹き飛んだ。
「あっ!」
その爆風に、リンダ君とヴェーナ君は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ぐっ…。」
ヴェーナ君が、お腹を押さえてうずくまった。
「ヴェーナさん!?」
とっさの受身で立ち上がり、駆け寄るリンダ君。
「生まれるッ…!」
あろうことか、ヴェーナ君に陣痛が始まったようだ。叩きつけられたショックだろう。
行きかけたアーテリー中佐が振り返り、血相を変えて駆け寄る。
「ヴェーナッ!…医務室へ行こう。
リンダ君、すまいないが、私の代わりにアレを頼む。私はヴェーナを医務室へ連れて行く。」
苦悶の表情のヴェーナ君は、リンダ君を呼んだ。
「リンダちゃん。」
「はい、ヴェーナさん。」
「あの子…。フェアレちゃんを、助けてあげて…。
あの子に足りないのは、何か。リンダちゃんにはわかっているはず…。」
”ダークネススカイMk.II”は、轟音と共に艦外へ飛び立っていった。
鳴り響く警報。
一刻の猶予も無かった。
10/02/28 08:15更新 / YY