確知
そんなことがあって、我が社の情報陣は、強化人間フェアレ=フィーの捜索に乗り出した。
しかし、どういうわけか何の情報も得られず、遂に半年が経過してしまったのだ…。
季節は初夏に移る。
クレスト第二大隊旗艦「ジュピター」内ビュッフェ、「エヌセード」。
艦は、演習の休憩時間にて、洋上に待機中であった。
ビュッフェのカウンターで、3人の男女が談笑している。
一人はリンダ君、もう一人はチューマー君。そして、もう一人はお腹の大きなヴェーナ君だ。
「ヴェーナさん、子供が生まれたら、また軍に戻ってくださいますか?」
と、リンダ君。
「そうねー。どうしようかしら。」
と、ヴェーナ君。
ヴェーナ君は、退社後もしばしば社内に出入りしている。
巡洋艦の艦長まで勤めた彼女は、退社後もその人望ゆえか、出入りが比較的自由であった。
「ガキは…いれば邪魔なだけだ。施設にでも預けて、軍に復帰したほうがいいぞ。」
チューマー君はうつむいたまま呟いた。
妻子を失った過去を持つチューマー君のその言葉は、どこまでが本心かはわからない。
「子供は嫌い。わがままだし、何より弱いから。」
リンダ君は、とにかく弱いものが嫌いなようだ。弱いものに生きる権利はない。その考えは軍人としては妥当であろうが。
と、その時、艦内に緊急招集のアナウンスが入った。
リンダ君とチューマー君は跳ねるように立ち上がり、ブリッジへ向かった。
そんな二人を、ヴェーナ君は軽く手を振って見送った。
巡洋艦「ジュピター」ブリッジ。
そこには、艦内の主だった士官とレイヴンが集まっていた。
艦長席から一同を見下ろすのは、ロドム=ザンタック中佐だ。
「たった今、本社から緊急通信が入った。かねてから捜索中であった、強化人間フェアレ=フィーの所在が判明した。」
ざわめきが起こったが、ロドム中佐はそれを制し、言葉をつなげる。
「場所は、セラシティー第一居住区、ネラトン川。ターゲットはAC”イエロードック”にて同シティーのシティーガードを全滅させた後、ネラトン川を下流に向かって進行している。
本艦の位置からは、目と鼻の先である。
これより我が隊は、急遽、捕獲作戦に移行する。」
その作戦に抜擢されたのは、リンダ君とチューマー君であった。
「リンダ=アルピニー准尉と、チューマー=マリグナントは、直ちに現場に急行し、AC”イエロードックを”停止又は破壊、フェアレ=フィーを捕獲せよ。」
そこへ口を挟んだのは、当のチューマー君だ。
「悪いが、中佐。」
「なんだ。」
「”イエロードック”に並みのACで挑むのは、正直無謀だ。
機動兵器”ダークネス・スカイ”の使用の許可を頂きたい。」
”ダークネス・スカイ”とは、我が社が開発した、局所防衛用の人型機動兵器である。その戦闘力はACの比ではない。
巡洋艦「ジュピター」には、演習予定にその”ダークネス・スカイ”が繋留されていたのだ。
そして、チューマー君は、そのテストパイロットであった。
「なるほど。急な事態だ。特別に実戦での使用を許可する。ただし、必ず作戦は成功させろ。わかったな。」
ロドム中佐の言葉に、チューマーは薄い唇に微かな笑みを浮かべていた。
しかし、どういうわけか何の情報も得られず、遂に半年が経過してしまったのだ…。
季節は初夏に移る。
クレスト第二大隊旗艦「ジュピター」内ビュッフェ、「エヌセード」。
艦は、演習の休憩時間にて、洋上に待機中であった。
ビュッフェのカウンターで、3人の男女が談笑している。
一人はリンダ君、もう一人はチューマー君。そして、もう一人はお腹の大きなヴェーナ君だ。
「ヴェーナさん、子供が生まれたら、また軍に戻ってくださいますか?」
と、リンダ君。
「そうねー。どうしようかしら。」
と、ヴェーナ君。
ヴェーナ君は、退社後もしばしば社内に出入りしている。
巡洋艦の艦長まで勤めた彼女は、退社後もその人望ゆえか、出入りが比較的自由であった。
「ガキは…いれば邪魔なだけだ。施設にでも預けて、軍に復帰したほうがいいぞ。」
チューマー君はうつむいたまま呟いた。
妻子を失った過去を持つチューマー君のその言葉は、どこまでが本心かはわからない。
「子供は嫌い。わがままだし、何より弱いから。」
リンダ君は、とにかく弱いものが嫌いなようだ。弱いものに生きる権利はない。その考えは軍人としては妥当であろうが。
と、その時、艦内に緊急招集のアナウンスが入った。
リンダ君とチューマー君は跳ねるように立ち上がり、ブリッジへ向かった。
そんな二人を、ヴェーナ君は軽く手を振って見送った。
巡洋艦「ジュピター」ブリッジ。
そこには、艦内の主だった士官とレイヴンが集まっていた。
艦長席から一同を見下ろすのは、ロドム=ザンタック中佐だ。
「たった今、本社から緊急通信が入った。かねてから捜索中であった、強化人間フェアレ=フィーの所在が判明した。」
ざわめきが起こったが、ロドム中佐はそれを制し、言葉をつなげる。
「場所は、セラシティー第一居住区、ネラトン川。ターゲットはAC”イエロードック”にて同シティーのシティーガードを全滅させた後、ネラトン川を下流に向かって進行している。
本艦の位置からは、目と鼻の先である。
これより我が隊は、急遽、捕獲作戦に移行する。」
その作戦に抜擢されたのは、リンダ君とチューマー君であった。
「リンダ=アルピニー准尉と、チューマー=マリグナントは、直ちに現場に急行し、AC”イエロードックを”停止又は破壊、フェアレ=フィーを捕獲せよ。」
そこへ口を挟んだのは、当のチューマー君だ。
「悪いが、中佐。」
「なんだ。」
「”イエロードック”に並みのACで挑むのは、正直無謀だ。
機動兵器”ダークネス・スカイ”の使用の許可を頂きたい。」
”ダークネス・スカイ”とは、我が社が開発した、局所防衛用の人型機動兵器である。その戦闘力はACの比ではない。
巡洋艦「ジュピター」には、演習予定にその”ダークネス・スカイ”が繋留されていたのだ。
そして、チューマー君は、そのテストパイロットであった。
「なるほど。急な事態だ。特別に実戦での使用を許可する。ただし、必ず作戦は成功させろ。わかったな。」
ロドム中佐の言葉に、チューマーは薄い唇に微かな笑みを浮かべていた。
10/02/28 07:59更新 / YY