連載小説
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フェアレ=フィー
「…そういうことか。しかし、残党の掃討という任務は達成だな。ご苦労だった。
報酬はここに用意した。今後もよろしく頼む。」

クレスト巡洋艦、「ジュピター」ミーティングルーム。
作戦指令のロドム=ザンタック中佐は、しかめ面のまま、カイゼル君とチューマー君の労をねぎらった。
所属不明のタンクACの乱入は受けたものの、敵残党は全滅し、戦果としては上々と言えよう。

「…ああ。納得いかないが。もらえるものはもらっておこう。」

カイゼル君は浮かない顔で報酬を受け取る。

「…そうだな。もっとも、ACの修理費を考えると割に合わんがね。」

チューマー君もカイゼル君に続く。

「チューマー、悔しくないのか。任務達成とはいえ、負けて帰ってきたんだぜ。
…チューマー。お前、なにか隠しているだろう?」

カイゼル君は、金色に光る鋭い目でチューマー君を見据えた。

「ふん…?乱入してきたという、謎のタンク型ACのことか?
知っていることがあれば、話してくれ。報酬は上乗せしよう。」

ロドム中佐も興味をそそられたらしい。
確かに、カイゼル君とチューマー君という、二人の腕利きのレイヴンが倒せなかった相手となれば、放っておくことはできまい。

「…かまわない。」

チューマー君は、ゆっくりと語り始めた。

「あのACは、”イエロードック”。パイロットは”フェアレ=フィー”という。
フェアレ=フィーは強化人間で、ナービス特務機関の出身だ。
ナービス特務機関は、俺が強化人間の手術を受けたところでもある。
ナービス特務機関が、キサラギの強化人間技術を奪取し、高レベルの強化人間を開発していたのは、知っているだろう。
フェアレ=フィーは、その強化人間の試作型だ。
乳児期に、親から機関が買い取り、実験台として徹底的な強化が施された。
もって生まれた才能もあわさってか、きわめて高い戦闘能力を持っている。
俺が強化人間の手術を受けられたのも、フェアレ=フィーの残したデータによるところが大きい。
だが、機関は解体されてしまった。
行き場を失ったフェアレ=フィーは、実験機だったAC”イエロードック”とともに姿をくらました。

俺が知っているのはこのくらいだ。」

チューマー君の話に、ロドム中佐はうっすらと笑みを浮かべた。

「つまり、乱入者は、所属のないナービス製強化人間、というわけだな。
くっくっく…。これはいい。
これを利用しない手はあるまいな。」

それを見たチューマー君はつぶやいた。

(フェアレ=フィーをクレストに取り込むつもりか。制御できるとでも思っているのか?…馬鹿め。)
10/02/28 07:58更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50