連載小説
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MT部隊
秋。山は紅葉に包まれ、空気はうっすらと寒く、冬が近づいていることを感じさせます。
落ち葉に埋もれた並木道を自転車で急ぐ女性がいました。
フォーラ=ウィンスロー。
黒髪にやや赤みがかった瞳。華奢な体で一生懸命に自転車をこいでいます。

彼女は戦闘用MTのパイロットでした。以前は作業用MTに乗って工場で働いていたのです
が、
半年前に、操縦の腕を買われてMTを使う警備隊にスカウトされました。
警備隊の名は「5−FU(ファイブ エフユー)」といい、近隣都市の警備が主な仕事でし
た。
武装したMTの操縦は作業用に比べて難しく、フォーラは苦労しましたが、
訓練を重ねて、一月前からようやく現場に出られるようになったところです。
今日は重大な仕事の知らせがあると連絡が入ったので、隊の事務所に急いでいるところで
した。

並木道の向こうに小さな家が見えてきました。
農家のように見えますが、それが警備隊「5−FU」の事務所なのです。
フォーラは自転車を止め息を切らせながら、事務所の戸をノックしました。

とんとん。

返事がありません。
フォーラはもう一度ノックしましたがやはり返事はありません。

「おかしいな?」

フォーラは戸を開けました。鍵はかかっていません。中は真っ暗です。

「・・・隊長〜?いらっしゃらいんですかー?」

と、不意に部屋中の明かりがつきました。
いつも少し散らかった部屋は綺麗に飾り付けられ、天井からは色紙が下がっています。
そして、そこには5人の仲間たちがいました。

「フォーラ、お誕生日おめでとう!!」

5人は口々にいい、歓声をあげました。
そうです。今日は11月3日。フォーラの20歳の誕生日でした。

「あ・・・ありがとう、みんな・・・。」
フォーラはびっくりしたのと嬉しいのとで言葉が続きません。

「どうだ。驚いたか。」
そう言いながら一番奥で豪快に笑っているひげ面の男が、5−FUの隊長、マーゲン=アン
トルムです。
妻子を抱え、小さな農場を耕しながら、警備隊の隊長もこなす器用人です。

「もう。フォーラちゃん、びっくりしてるじゃない。まるで鳩に豆鉄砲だよ。」
そう言いながらも上機嫌なのは、クレア=アンキナーレ。副隊長の綺麗な女性です。

「そのびっくり顔もかわいいぜ。どうだ、デュオ?」
軽口をたたくのは、エソファー=メディウム。紅顔、大柄な男で、5−FUのムードメーカ
ーです。

「え!?そうだね・・・。」
いきなり振られてしどろもどろの、デュオと呼ばれた青年は、デュオ=トライツです。
彼はフォーラと同じ時期に5−FUに入隊した新人ですが、フォーラより一足早く作戦に参
加しています。

「ま、今日はフォーラの誕生会だが、作戦の発表があるのも本当だぞ?」
やせた頬に吊りあがった眉のこの男は、レック=スペリオール。5−FUの整備担当です。
無口ですが、腕は確かで頼れる男です。

「まあ、フォーラ、座れ。何を食ってもいいぞ!今日の主役はお前だからな。」
マーゲンに言われるままにフォーラは席に着きました。
テーブルにはさまざまな料理が並べられています。マーゲンは奥さん顔負けに料理をこな
します。
今日のご馳走はマーゲンが用意したものなのでしょう。

「隊長〜。あいかわらず、料理うまいね!でもさ、デュオも手伝ったんだよな?なにしろ
フォーラちゃんの誕生会だもんな。」
エソファーにそう言われ、デュオはまたもしどろもどろです。顔は真っ赤。

「こらこら・・・エソファーもあんまりデュオをからかわないの。さあ、冷めないうちに
頂きましょ。」
クレアにそう言われて、皆は食器を取りました。
楽しい会の始まりです。

「おっと・・・。まだ静かなうちに言っとくぞ。今度の仕事の話だ。」
マーゲンの言葉に一同は耳を傾けます。
「明日、ミラージュのメッツェンバウム倉庫の警備にあたることになった。静かな所だ。
侵入者もないとは思うが、仕事は万全を期そう。
倉庫は2棟に分かれているから、2手に分かれて警備に当たろう。クレアとエソファー、レ
ックは北側だ。俺とデュオとフォーラは南側の倉庫を担当しよう。」
各自、この会が終わったらMTのチェックをしておくこと。以上だ。」

「隊長の腕なら、デュオ&フォーラの新人二人組みでも安心だな・・・。」
レックの言葉に全員納得です。

後は次第に盛り上がり、仕舞いには歌や踊りが出る騒ぎとなりました。
フォーラも幸せそうです。
6人は時がたつのも忘れ、日が落ちて暗くなるまで誕生会は続きました。

そろそろお開きか、というとき。デュオが手を上げました。
「はい!提案です!フォーラさんを囲んで、記念写真を撮りませんか?」
デュオの提案に、もちろん全員賛成です。
フォーラを囲んで、仲間全員で記念写真です。
この写真はフォーラの一生の宝物となるのでしょう。
10/02/25 18:05更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50