連載小説
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強化人間
「おのれ、乱入者め!せめてお前だけでも!」
そう叫んで、その黄色いタンク型ACに突進したのは、残った敵AC、”ムサシ”だ。
両手のレーザーブレードを唸らせ、タンク型ACに斬りかかる。

”…Kyrie eleison, eleison…”

細くこだまする歌声とともに、
コアにバズーカ弾を受けたAC”ムサシ”は、その場に崩れ落ちた。

「なんだ!?友軍か?」

カイゼル君はあっけにとられているようだ。

「…いや、友軍など、とんでもない。あれは…、そこらの敵よりも、もっともっと恐ろしいものだ。
…注意しろ、カイゼル!」

その直後、AC”メタスターシス”に向けて、その黄色いタンク型ACから豪雨のような銃弾が撃ち込まれた。
間一髪で避けるAC”メタスターシス”だったが、その右足は根元からもぎ取られていた。

「チューマー!?」

チューマー=マリグナントは、ナービス社の残した、最高傑作ともいえる強化人間だ。
強化人間とは、熾烈な先頭に耐えられるよう、身体の一部を人工物に置き換え、薬物を投与し、常人を遥かに超える戦闘力を持った人間のことだ。
そのチューマー君が恐れるほどの相手とは、何者だろうか。

「くっ、これしきで…!」

「チューマー、お前は休んでろ!」

AC”リヴェンジャー”はそのタンク型ACに向かってミサイルを発射、同時に突撃をかける。
ミサイルは、タンク型ACの放った迎撃ミサイルにことごとく撃墜されたが、AC”リヴェンジャー”はその懐に飛び込んでいた。

「くらえッ!」

ブレード一閃。

頚部のシャフトを切断されたそのタンク型ACは、小さくオイルを散らし、のけぞった。

「とどめだ!」

再度、ブレードを振りかぶるAC”リヴェンジャー”であったが、タンク型ACから撃ちだされた一発のロケット弾を受け、紅蓮の炎に包まれた。

「ぐはっ、ナパームロケットだと!?」

機体温は一瞬でピークに達し、ジェネレータがオーバーヒートする。
エネルギーゲージは真っ赤に変わり、AC”リヴェンジャー”のブースターは、死んだ。
もはやこれまでかと、カイゼル君は覚悟を決めた。

…しかし、攻撃が来ない。
仰ぎ見れば、タンク型ACは黄色い光を反射しながら遠ざかっていく。

「逃げた…?」

「…いや、見逃してくれたのさ。」

チューマー君のAC”メタスターシス”は身動きが取れないようだ。
カイゼル君は、ミッションの成功と輸送機の依頼を、クレスト本部に打電した。

10/02/28 07:56更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50