連載小説
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決戦
爆発するクレスト軍事工場。
その上空に滞空し、グレネード砲弾を雨のように振りまく異形の悪魔、”ダークネススカイ。
集まってきたクレストのMT部隊はことごとく打ち砕かれ、無残な残骸を晒しています。

その”ダークネススカイ”のコクピットで、チューマーは身悶えしながら、拳でコンソールパネルを叩いていました。
機体が一切の操縦を受け付けないのです。
”ダークネススカイ”のAIは、チューマーの意思に関係なく、近寄るものを誰彼かまわず攻撃します。

「…クソッ!なんだ。一体どうしたと言うのだ!?故障なのか?止まれ!止まるんだ!!」

その時、コンソールパネルの一角が赤く点滅し、誰ともわからない声が聞こえてきました。

『故障デハナイ。オレハ、オマエノ思考ノ通リニ動イテイル。
オマエハ、コノ世界ヲ憎ンデイル。
コノ世界ヲ破壊スル。ソレガオマエノ望ミナノダ。』

「なんだと…!バカな…!」

”ダークネススカイ”はゆっくりと移動を始めました。その先には市街地が広がっています。

”ダークネススカイ”の前に、1機の重装型ACが立ちふさがりました。
ジャック=ファイザー少佐の”ドゥルカマーラ”です。

『チューマー、貴様ァ、どういうつもりだ!
いいだろう、契約違反とみなし、これより貴様を排除する!!』

”ドゥルカマーラ”は信号弾を上げ、周りに展開したMT部隊に一斉攻撃を命じました。
チューマーは愕然とし、そして、一瞬の間をおいてゲラゲラと笑い始めました。

「そうか。この俺を排除するというのか。
誰も彼も、俺を憎み、嫌う。そうさ、俺はこの世界の”癌”なのさ!
排除したければするがいい、ただし、そう簡単にはやらせんぞ!
それなりの報酬は支払ってもらう…!」

”ダークネススカイ”は両手を挙げ、その指先に仕込まれた5連装リニアガンを”ドゥルカマーラ”に向かって連発しました。
左手のシールドで受けた”ドゥルカマーラ”ですが、そのシールドは一瞬で飴のように溶け、消滅しました。

『バカなァ!?』

ファイザー少佐の叫び声も、もうチューマーには聞こえません。
”ダークネススカイ”の双肩から発射された幾発ものグレネードは、雪崩をうって”ドゥルカマーラ”を直撃し、
吹っ飛んだ”ドゥルカマーラ”は岩壁に激突し、爆発しました。

『ソウダ。ソレデイイ。』

AIの声も、もう聞こえていません。チューマーは憎しみに満ちた目をクレストのMT部隊に向けました。
隊長機を失ったMT部隊は、散り散りになって逃げ出します。
クレストからの依頼を受けたACが数機集まってきましたが、”ダークネススカイ”の猛烈な弾幕に阻まれ、手を出すことができません。

その時、進撃を進めようとする”ダークネススカイ”に一発のエネルギー弾が撃ち込まれました。
青い軽装AC、”アディーナ”です。
エネルギー弾は、”ダークネススカイ”の強力なエネルギーシールドによって弾かれます。

「このぉ、化け物め!」

コクピットのコロンさんは操縦桿を押し込み、エネルギーライフルを連発しますが、ことごとく弾かれ、かすり傷さえ負わせることができません。

”ダークネススカイ”のカメラアイが”アディーナ”…これからは”アディーナ1号機”とします…を睨み、腕に仕込まれたグレネード砲を発射しました。
”アディーナ1号機”は咄嗟に飛び上がり、グレネードの直撃を免れましたが、それを”ダークネススカイ”の右手から発生した巨大なブレードが襲いました。

「!!!」

避けられません。
”アディーナ1号機”が真っ二つに切り裂かれた
…と誰もが思ったその時、”ダークネススカイ”の右腕に一発のグレネード弾が命中し、巨大な爆光と共に”ダークネススカイ”の巨体が揺らぎました。
”アディーナ1号機”はその隙に着地、体勢を立て直します。

丘の上には太陽を背に、2機のACが立っていました。
一機はフォーラさんの”アディーナ2号機”、そしてもう一機はアルピニー准尉の”ジャンネッタ”です。
コロンさんを救ったグレネード弾は、”ジャンネッタ”のキャノンから発射されたものでした。
”アディーナ2号機”が丘を滑り降り、”アディーナ1号機”の傍に駆け寄りました。

『フォーラちゃん!来てくれたのね!?』

『コロン先輩…無事だったのですね?私…!』

『フォーラちゃん、細かい話は後。まずはこいつを何とかしなきゃ!』

『はい!』

感動の再会の挨拶もそこそこに、2機の”アディーナ”は”ダークネススカイ”に向かって駆け出しました。
二人に通信が入ります。”ジャンネッタ”のアルピニー准尉です。

『この化け物には、遠距離からのエネルギー兵器は通用しませんわ。よろしくって?』

『了解!』
コロンさんとフォーラさんは声を合わせて答えました。
しばらく離れていたとはいえ、寝食を共にした二人です。息はぴったりでした。

「来るのか?そうか。俺を殺すというのか。やれるものならな…。」
低い声で笑うチューマー。
”ダークネススカイ”が2機の”アディーナに向かって大きく両手を広げました。
雨霰と降り注ぐグレネード弾をすり抜け、2機の”アディーナ”は右と左から”ダークネススカイ”に接近します。
”ダークネススカイ”の両腕から、2本の巨大なブレードが展開しました。

「…死ね。」

チューマーは薄笑いを浮かべ、”ダークネススカイ”の2本のブレードを、それぞれ左右の”アディーナ”に振り下ろしました。

が、その時、1機のACが”ダークネススカイ”の正面に躍り出ました。
”ジャンネッタ”です。

「なに?」

チューマーの意識が、一瞬、正面の”ジャンネッタ”に集中しました。
”ダークネススカイ”のAIがそれに呼応し、両手のブレードの軌道を修正、2本のブレードはそのまま”ジャンネッタ”に振り下ろされました。

『お二人さん、後はお任せしましたわ。…』

アルピニー准尉のその通信を最後に、両腕と両前足を切断された”ジャンネッタ”は火を噴きながら落下していきました。
その間に、2機の”アディーナ”は”ダークネススカイの上に取り付いていました。

『いくわよ、フォーラちゃん!』

『はい、コロン先輩!』

2機の”アディーナ”はそれぞれのエネルギーライフルを、”ダークネススカイ”の頭頂部に突きつけました。
密接状態からの射撃では、”ダークネススカイ”のエネルギーシールドも無用の長物です。
2条のエネルギー光弾が”ダークネススカイ”を縦に貫きました。
”ダークネススカイ”の頭部が吹っ飛び、スパークします。
2機の”アディーナ”はジャンプし、地面に着地しました。

推力を失った”ダークネススカイ”は大音響と共に落下し、地響きを上げて爆発、四散しました。
爆光が、2機の”アディーナ”を照らします。

「…終わったのね?あ、フォーラちゃん!?」

”アディーナ2号機”が”ダークネススカイ”の残骸に向かって歩いていきます。
10/02/27 09:53更新 / YY
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まろやか投稿小説 Ver1.50