苦い過去
時間を巻き戻せれば、と考えることが今でもある。
まあ、誰にでもあることなのだろう・・・
理由は様々だろうが、主にターニングポイントをやり直したいというのがあるだろう。
自分の場合は、それになるのだろう。
アレはもう、何年前の話だろうか・・・
俺がまだAKマスターアームズに所属する前の話で、あのシティの動乱が起こる前の話。
ちょうど、レジスタンスがシティに蜂起する頃の出来事だったか・・・
あの時の事を俺は忘れることはないだろう。
ところで皆はシュペルノーヴァ家を知っているだろうか・・・
知らない人のために言っておくが、シティで代表に次ぐくらいの権力を持っていた家柄だ。
勿論のこと、一族全員がミグラントで、相当の勢力を誇っていたグループでもある。
シャドウ家は、そこに代々仕えてきた家系だ。
俺とサンも例外ではない、いつからかACに乗り、グループを支えてきた。
「今のところ異常は無いな。」
「そうだねー。」
摩天楼が敷き詰められたかのようなビル街。
レジスタンスが攻めてくるかもしれないと言う情報を聞いて俺は防衛任務に着いている。
サンも例外ではなく、一緒に任務についている。
中量二脚と軽量逆関節である2人の機体は川の傍に直立している。
通信で俺はサンと他愛も無い会話をしているところであった。
「ちょっと、しっかり守りなさいよ?」
通信からは命令するような女性の声が聞こえてくる。
2人のちょっと後ろの建物の上に居るのは、左にスナイパーキャノンとスナイパーライフル、右にスナイパーライフルとリコンジャマーを持った赤い四脚のスナイパー機だった。
この口うるさい女性の名前はシュペルノーヴァ・F・ルナ・・・
察しの通り、シュペルノーヴァ家の長女で俺とは幼馴染の様な関係だった。
「分かってるよ。」
「敵が来るまでは、ゆっくりさせてくれよ、ルナ。」
サンは、注意の声にキッパリと言葉を返した。
ムーンの方もサンと同じ様な調子で静かに言葉を言った。
どっしりと構えていると言った感じだろうか・・・
「全く、ヤバい状況なのに良く冷静で居られるわよ。」
ルナはハァと息を吐いて2人の冷静な感じの言葉に対して呆れていた。
「所詮はレジスタンスだ。ACなんて持ってないさ。」
「それにシティ側に着くミグラントばっかりみたいだよ?」
ムーンは冷静にルナに対して理論的に言葉を言った。
サンも兄の言葉に付け足す様に言葉を言う。
この2の情報は確かに事実だった。
レジスタンスは雑多な兵器しか持っておらず、ミグラントも勝つべくして勝つだろうシティの方に加担している。
「どうかしらね。」
ルナは何か嫌な予感でもして言うのか不安げに言葉を返した。
此処だけの話、シュペルノーヴァ家の皆は警戒心が強く、危機察知能力がかなり高い。
だから、此処までのし上がって来れたのかもしれない。
「攻めてはこないだろう。あくまで敵は代表らしいしな。」
「そうだよ。」
ムーンは不安げなルナに対して安心させる様に言葉を言う。
サンも同調してルナを安心させるつもりのようだ。
無関係の勢力にレジスタンスが攻め込んでくるなどと言うことは、道理的にあり得ない・・・
あり得ないはずだったのだ。
「何だ!?」
「へ?・・・え!?」
突如鳴り響く敵の接近を告げるけたたましい警告音。
いきなりの事にムーンは慌てて、計器のスイッチを入れてシステムを立ち上げる。
慌てている所為か、余り手際よくシステムを立ち上げる事が出来なかった。
サンも慌てているのか、変な声を出すことしか出来なかった。
「ACよ。2機。」
ルナは既に的確にシステムを立ち上げられたのか、スナイパーキャノンのスコープを覗いて上空を確認していた。
確かにルナの言うとおり、2機のヘリが此方に向かって飛来してくる。
二機のヘリの下にはそれぞれ白いACが繋留されており、警告音が間違いでない事を証明していた。
「行ってくれ、アンジー。」
「・・・頼むぞ、アンジー。」
「了解、幸運を、8、13。」
通信からは修羅場をくぐってきた様な老年の男の声が聞こえた。
続いてまだ若そうな感じの青年の声が聞こえる。
そして最後に、その声に対して応答する無機質な女性の声も聞こえた。
それと同時に繋留されていた機体はヘリから離れてビルの陰に隠れて見えなくなった。
「中量二脚が2機、弱点はCEとTEだよ。」
サンはようやくシステムが立ちあがったのか、リコンを飛ばして瞬時に敵のデータを確認する。
そして2人に対して情報を飛ばした。
情報が着くや否や、ムーンとサンは武装を切り替えて弱点を突ける武装に切り替える。
「装備は近接装備が1体と援護装備が1体か・・・。」
ムーンも同じように情報を解析して仲間に情報を分担する。
慌てることは無い、何時もの様にやればいいんだ、こっちの方が数の上では有利なのだから。
「3機か、面倒な仕事を押し付けられたものだ。」
「そうぼやくな、13。行くぞ。」
通信からは余裕げな2人の会話が聞こえてくる。
そして単純な会話が、終わると同時に2機はビルの陰から道路に向かって姿を現した。
「・・・当たらない!?」
赤い四脚はビルの上から姿を現したバトルライフルとショットガンをもっと近接装備の中量二脚に向かってスナイパーキャノンを放った。
だが、まるで撃たれるのを見切られていたかのようにハイブーストをして、余裕で避けた。
道路に綺麗な弾痕が残り、威力のすさまじさを見せつける。
ルナは慌てた様な感じで言葉を言い、狼狽した。
「援護頼むぞ?」
「了解。」
ムーンは静かに言葉を言って操縦桿を握る手に力を込める。
敵はスナイパーキャノンを避けただけだが、何となく嫌な予感がする。
今まで出会ったどんな敵よりもヤバい気配を感じる・・・。
サンもそう思っているのか、真剣な面持ちで言葉を返すしかなかった。
ムーンはレバーを動かして機体を敵に近付ける。
サンもムーンにつき従う様に機体を動かして行った。
「・・・なんで当たらないのよ!」
続けて2発、同じ機体に向けて赤い四脚はスナイパーキャノンを放つ。
だが、その2発も華麗にハイブーストで避けられ地面をえぐるだけで当たることは無かった。
それどころか、近接型の中量二脚は地面を蹴って飛び上がり、ビルに足をつけてブーストドライブを行う。
「・・・なっ!?」
「兄さん!?」
ムーンは、斜め上から向かってくる機体をサイトに捕えてバトルライフルとパルスマシンガンを打ち込む。
それに呼応するかのように白い機体はショットガンとバトルライフルを打ち込んできた。
どちらが勝つかなど明確なはずだが、その最中に後ろから眩い光が見える。
そして次の瞬間に光が消えたかと思えば、大きな音とともに発砲音が聞こえた。
安定性低下の警告音とともに機体の安定が崩れる。
レールガンか!?だとしたら二脚だから構えているはず・・・
この二脚はオトリだったと言うのか!?
サンは、ムーンが不味い状態にあるのを察知したのか慌てた感じで声を出した。
駄目だ、退くしかない、前に倒していたレバーを後ろに倒してハイブースト。
兄弟の絆とでもいうのか、サンはパルスマシンガンを援護射撃の様な物を行った。
「・・・良く連携が取れている。」
8はパルスマシンガンの雨を浴びながら同じ様にハイブーストをして機体を下げた。
敵を褒めると言うことはそれだけ余裕があると言うことか。
「・・・っ。」
ルナは慌てて近接型の二脚から後ろでレールガンを構えている援護装備の二脚に照準を変えるが、時すでに遅くハイブーストでビルの陰に隠れてしまっていた。
3人は完全に手玉に取られている様な感じだ。
お互い、痛み分けと言ったところだが、明らかに被害はムーン側の方が大きい。
「手こずっているわねぇ。」
突如、通信から野太い男の声が聞こえた。
もっと分かりやすい表現をするとなればオカマ臭がし過ぎて居る声だ
「3か、任務はどうした?」
通信に対して13と呼ばれた男が通信を返す。
どうやら会話の最中で攻撃してくる気配はなさそうだが・・・
「もう終わったわ。どうやら、あとはあの赤いヤツを倒すだけねー。」
「へ・・・?」
「・・・な!?」
「どういうこと・・・?」
3はケラケラと笑いながら仲間に対して通信を行った。
何気ない会話にムーン側の3人は凍りついてしまった。
まさか、コイツ等・・・!?
「まあ、すぐ終わるんだけどさッ!」
3はオカマの様な声質から荒ぶる男の声に変わる。
それから少し時間がたった後に青い閃光が赤い機体を包んだ。
「きゃぁぁぁぁ!?」
「ルナッ!?」
「ルナ・・・さん!?」
一瞬、何が起きたのかルナには分からなかったに違いない。
構え状態のままだったので衝撃を受けて機体はビルから自由落下する様に転落する。
ムーンは機体を後ろに向けるわけにもいかず、通信から聞こえた声に対して返答するしかなかった。
サンも同じようにするしかなかった。
少し後にものすごい衝撃音が鳴り響く・・・。
道路には軽い陥没が出来て赤い四脚が転がる様に倒れていた。
「あはは、当たったわねぇ。」
「まだ、死んでは無いだろう。止めを刺すまでは油断するな。」
3は、ケラケラと笑いながら言葉を言った。
それに対して8は冷徹に言葉を言った。
「兄さん・・・。」
「好きにしろ。俺はルナを守る。」
サンはどうすればいいのか分からないのだろう。
兄に対して助言を求めようとするが、ムーンは冷静に言葉を言った。
サンはまだ若いし、シャドウ家の中で相応の立場には就いていない。
犠牲になるのは俺だけで良い・・・。
「逃げ・・・なさい。」
「え・・・?」
通信から苦しそうなルナの声が聞こえた。
まだ、意識もあり、機体の機能も失われてはいないようだが・・・
ムーンは、その声に呆けてしまった。
「・・・逃げなさいって言ってるのよ!」
そして通信から聞こえるのはルナの怒号だった。
最後の力を振り絞ったのか、言葉を言った後に咳き込み血を吐くような音が聞こえた。
「・・・。」
「・・・従者の誓い・・。」
シュペルノーヴァ家が全ての自分にとっては、どうすればいいのか自分にはわからなかった。
ルナの命令を取ってシュペルノーヴァを滅ぼすのか、それとも主人に背いてシュペルノーヴァ家を守るのか。
ムーンは黙ったまま動く事が出来なかった。
そんなムーンに対して一言だけ通信が聞こえた。
「・・撤退・・・する。」
「・・・。」
ムーンは、その言葉を聞いて口にしたくなかった言葉を出すかのように言葉を言った。
サンは何も言わずにジッと黙ったままだった。
ムーンは機体を操って、敵のいない方角に機体を向けてグライドブーストを行う。
サンも同じように機体を操ってついて行くように機体を移動させる。
3機のACは2人を追撃する気はないのか、追ってくるような事は無かった。
「生・・き・て・・・」
撤退してからしばらくして通信が聞こえ、後ろの方から爆発音が聞こえた・・・。
従者の誓い・・・
主人が致命的な状態に陥った時、主人の名誉を汚させてはならない。
主人の命令に従い、尊厳ある死を迎えさせるべし。
俺が選択した行動は正しかったのだろうか・・・
もしかしたらルナは・・・
この事を考えるとそんな淡い期待をしてしまう。
いや、あり得ない・・・
死んだのだ、ルナは・・・。
「シャドウ・ムーン」
20歳前後の男性。
搭乗機体は、汎用性に優れた中量二脚、サーティースフライデイ。
シュペルノーヴァ家に仕えるシャドウ家の一員。
普段はクールだが、熱くなるときは熱くなる。
ルナの事が好き。
「シャドウ・サン」
16歳前後の少年。
搭乗機体は援護主体の軽量逆関節、ゼロ・サクリファイス。
シュペルノーヴァ家に仕えるシャドウ家の一員。
まだ若いために役職にはまだついておらず、主にムーンの補助をしている。
性格は弱弱しい感じだが、やる時はやる子。
「シュペルノーヴァ・F・ルナ」
20歳前後の女性。
搭乗機体は狙撃特化の重量四脚、ローテローゼ。
シュペルノーヴァ家の長女。
性格はきっちりとした気高い性格だが、若干、ヒステリックな面がある。
「アンジー」
年齢は不詳で無機質な声質をした女性。
黄道十二星座をエムブレムにした謎の部隊のオペレーター。
エムブレムのモチーフは天を統べる北極星。
「8」
年齢は不詳だが、老兵の様な雰囲気を漂わせる男性。
搭乗機体は汎用性に優れた中量二脚のレオ。
エムブレムのモチーフは獅子座。
「13」
年齢は不詳だが、青年の様な雰囲気を漂わせる男性。
搭乗機体は援護主体の中量二脚のオヒュクス。
エムブレムのモチーフは蛇遣い座。
「3」
年齢は不詳だが、オカマの様な雰囲気を漂わせるオカマ。
搭乗機体は、レーザーキャノンを装備した援護主体の四脚、ピスケス。
エムブレムのモチーフは魚座。
まあ、誰にでもあることなのだろう・・・
理由は様々だろうが、主にターニングポイントをやり直したいというのがあるだろう。
自分の場合は、それになるのだろう。
アレはもう、何年前の話だろうか・・・
俺がまだAKマスターアームズに所属する前の話で、あのシティの動乱が起こる前の話。
ちょうど、レジスタンスがシティに蜂起する頃の出来事だったか・・・
あの時の事を俺は忘れることはないだろう。
ところで皆はシュペルノーヴァ家を知っているだろうか・・・
知らない人のために言っておくが、シティで代表に次ぐくらいの権力を持っていた家柄だ。
勿論のこと、一族全員がミグラントで、相当の勢力を誇っていたグループでもある。
シャドウ家は、そこに代々仕えてきた家系だ。
俺とサンも例外ではない、いつからかACに乗り、グループを支えてきた。
「今のところ異常は無いな。」
「そうだねー。」
摩天楼が敷き詰められたかのようなビル街。
レジスタンスが攻めてくるかもしれないと言う情報を聞いて俺は防衛任務に着いている。
サンも例外ではなく、一緒に任務についている。
中量二脚と軽量逆関節である2人の機体は川の傍に直立している。
通信で俺はサンと他愛も無い会話をしているところであった。
「ちょっと、しっかり守りなさいよ?」
通信からは命令するような女性の声が聞こえてくる。
2人のちょっと後ろの建物の上に居るのは、左にスナイパーキャノンとスナイパーライフル、右にスナイパーライフルとリコンジャマーを持った赤い四脚のスナイパー機だった。
この口うるさい女性の名前はシュペルノーヴァ・F・ルナ・・・
察しの通り、シュペルノーヴァ家の長女で俺とは幼馴染の様な関係だった。
「分かってるよ。」
「敵が来るまでは、ゆっくりさせてくれよ、ルナ。」
サンは、注意の声にキッパリと言葉を返した。
ムーンの方もサンと同じ様な調子で静かに言葉を言った。
どっしりと構えていると言った感じだろうか・・・
「全く、ヤバい状況なのに良く冷静で居られるわよ。」
ルナはハァと息を吐いて2人の冷静な感じの言葉に対して呆れていた。
「所詮はレジスタンスだ。ACなんて持ってないさ。」
「それにシティ側に着くミグラントばっかりみたいだよ?」
ムーンは冷静にルナに対して理論的に言葉を言った。
サンも兄の言葉に付け足す様に言葉を言う。
この2の情報は確かに事実だった。
レジスタンスは雑多な兵器しか持っておらず、ミグラントも勝つべくして勝つだろうシティの方に加担している。
「どうかしらね。」
ルナは何か嫌な予感でもして言うのか不安げに言葉を返した。
此処だけの話、シュペルノーヴァ家の皆は警戒心が強く、危機察知能力がかなり高い。
だから、此処までのし上がって来れたのかもしれない。
「攻めてはこないだろう。あくまで敵は代表らしいしな。」
「そうだよ。」
ムーンは不安げなルナに対して安心させる様に言葉を言う。
サンも同調してルナを安心させるつもりのようだ。
無関係の勢力にレジスタンスが攻め込んでくるなどと言うことは、道理的にあり得ない・・・
あり得ないはずだったのだ。
「何だ!?」
「へ?・・・え!?」
突如鳴り響く敵の接近を告げるけたたましい警告音。
いきなりの事にムーンは慌てて、計器のスイッチを入れてシステムを立ち上げる。
慌てている所為か、余り手際よくシステムを立ち上げる事が出来なかった。
サンも慌てているのか、変な声を出すことしか出来なかった。
「ACよ。2機。」
ルナは既に的確にシステムを立ち上げられたのか、スナイパーキャノンのスコープを覗いて上空を確認していた。
確かにルナの言うとおり、2機のヘリが此方に向かって飛来してくる。
二機のヘリの下にはそれぞれ白いACが繋留されており、警告音が間違いでない事を証明していた。
「行ってくれ、アンジー。」
「・・・頼むぞ、アンジー。」
「了解、幸運を、8、13。」
通信からは修羅場をくぐってきた様な老年の男の声が聞こえた。
続いてまだ若そうな感じの青年の声が聞こえる。
そして最後に、その声に対して応答する無機質な女性の声も聞こえた。
それと同時に繋留されていた機体はヘリから離れてビルの陰に隠れて見えなくなった。
「中量二脚が2機、弱点はCEとTEだよ。」
サンはようやくシステムが立ちあがったのか、リコンを飛ばして瞬時に敵のデータを確認する。
そして2人に対して情報を飛ばした。
情報が着くや否や、ムーンとサンは武装を切り替えて弱点を突ける武装に切り替える。
「装備は近接装備が1体と援護装備が1体か・・・。」
ムーンも同じように情報を解析して仲間に情報を分担する。
慌てることは無い、何時もの様にやればいいんだ、こっちの方が数の上では有利なのだから。
「3機か、面倒な仕事を押し付けられたものだ。」
「そうぼやくな、13。行くぞ。」
通信からは余裕げな2人の会話が聞こえてくる。
そして単純な会話が、終わると同時に2機はビルの陰から道路に向かって姿を現した。
「・・・当たらない!?」
赤い四脚はビルの上から姿を現したバトルライフルとショットガンをもっと近接装備の中量二脚に向かってスナイパーキャノンを放った。
だが、まるで撃たれるのを見切られていたかのようにハイブーストをして、余裕で避けた。
道路に綺麗な弾痕が残り、威力のすさまじさを見せつける。
ルナは慌てた様な感じで言葉を言い、狼狽した。
「援護頼むぞ?」
「了解。」
ムーンは静かに言葉を言って操縦桿を握る手に力を込める。
敵はスナイパーキャノンを避けただけだが、何となく嫌な予感がする。
今まで出会ったどんな敵よりもヤバい気配を感じる・・・。
サンもそう思っているのか、真剣な面持ちで言葉を返すしかなかった。
ムーンはレバーを動かして機体を敵に近付ける。
サンもムーンにつき従う様に機体を動かして行った。
「・・・なんで当たらないのよ!」
続けて2発、同じ機体に向けて赤い四脚はスナイパーキャノンを放つ。
だが、その2発も華麗にハイブーストで避けられ地面をえぐるだけで当たることは無かった。
それどころか、近接型の中量二脚は地面を蹴って飛び上がり、ビルに足をつけてブーストドライブを行う。
「・・・なっ!?」
「兄さん!?」
ムーンは、斜め上から向かってくる機体をサイトに捕えてバトルライフルとパルスマシンガンを打ち込む。
それに呼応するかのように白い機体はショットガンとバトルライフルを打ち込んできた。
どちらが勝つかなど明確なはずだが、その最中に後ろから眩い光が見える。
そして次の瞬間に光が消えたかと思えば、大きな音とともに発砲音が聞こえた。
安定性低下の警告音とともに機体の安定が崩れる。
レールガンか!?だとしたら二脚だから構えているはず・・・
この二脚はオトリだったと言うのか!?
サンは、ムーンが不味い状態にあるのを察知したのか慌てた感じで声を出した。
駄目だ、退くしかない、前に倒していたレバーを後ろに倒してハイブースト。
兄弟の絆とでもいうのか、サンはパルスマシンガンを援護射撃の様な物を行った。
「・・・良く連携が取れている。」
8はパルスマシンガンの雨を浴びながら同じ様にハイブーストをして機体を下げた。
敵を褒めると言うことはそれだけ余裕があると言うことか。
「・・・っ。」
ルナは慌てて近接型の二脚から後ろでレールガンを構えている援護装備の二脚に照準を変えるが、時すでに遅くハイブーストでビルの陰に隠れてしまっていた。
3人は完全に手玉に取られている様な感じだ。
お互い、痛み分けと言ったところだが、明らかに被害はムーン側の方が大きい。
「手こずっているわねぇ。」
突如、通信から野太い男の声が聞こえた。
もっと分かりやすい表現をするとなればオカマ臭がし過ぎて居る声だ
「3か、任務はどうした?」
通信に対して13と呼ばれた男が通信を返す。
どうやら会話の最中で攻撃してくる気配はなさそうだが・・・
「もう終わったわ。どうやら、あとはあの赤いヤツを倒すだけねー。」
「へ・・・?」
「・・・な!?」
「どういうこと・・・?」
3はケラケラと笑いながら仲間に対して通信を行った。
何気ない会話にムーン側の3人は凍りついてしまった。
まさか、コイツ等・・・!?
「まあ、すぐ終わるんだけどさッ!」
3はオカマの様な声質から荒ぶる男の声に変わる。
それから少し時間がたった後に青い閃光が赤い機体を包んだ。
「きゃぁぁぁぁ!?」
「ルナッ!?」
「ルナ・・・さん!?」
一瞬、何が起きたのかルナには分からなかったに違いない。
構え状態のままだったので衝撃を受けて機体はビルから自由落下する様に転落する。
ムーンは機体を後ろに向けるわけにもいかず、通信から聞こえた声に対して返答するしかなかった。
サンも同じようにするしかなかった。
少し後にものすごい衝撃音が鳴り響く・・・。
道路には軽い陥没が出来て赤い四脚が転がる様に倒れていた。
「あはは、当たったわねぇ。」
「まだ、死んでは無いだろう。止めを刺すまでは油断するな。」
3は、ケラケラと笑いながら言葉を言った。
それに対して8は冷徹に言葉を言った。
「兄さん・・・。」
「好きにしろ。俺はルナを守る。」
サンはどうすればいいのか分からないのだろう。
兄に対して助言を求めようとするが、ムーンは冷静に言葉を言った。
サンはまだ若いし、シャドウ家の中で相応の立場には就いていない。
犠牲になるのは俺だけで良い・・・。
「逃げ・・・なさい。」
「え・・・?」
通信から苦しそうなルナの声が聞こえた。
まだ、意識もあり、機体の機能も失われてはいないようだが・・・
ムーンは、その声に呆けてしまった。
「・・・逃げなさいって言ってるのよ!」
そして通信から聞こえるのはルナの怒号だった。
最後の力を振り絞ったのか、言葉を言った後に咳き込み血を吐くような音が聞こえた。
「・・・。」
「・・・従者の誓い・・。」
シュペルノーヴァ家が全ての自分にとっては、どうすればいいのか自分にはわからなかった。
ルナの命令を取ってシュペルノーヴァを滅ぼすのか、それとも主人に背いてシュペルノーヴァ家を守るのか。
ムーンは黙ったまま動く事が出来なかった。
そんなムーンに対して一言だけ通信が聞こえた。
「・・撤退・・・する。」
「・・・。」
ムーンは、その言葉を聞いて口にしたくなかった言葉を出すかのように言葉を言った。
サンは何も言わずにジッと黙ったままだった。
ムーンは機体を操って、敵のいない方角に機体を向けてグライドブーストを行う。
サンも同じように機体を操ってついて行くように機体を移動させる。
3機のACは2人を追撃する気はないのか、追ってくるような事は無かった。
「生・・き・て・・・」
撤退してからしばらくして通信が聞こえ、後ろの方から爆発音が聞こえた・・・。
従者の誓い・・・
主人が致命的な状態に陥った時、主人の名誉を汚させてはならない。
主人の命令に従い、尊厳ある死を迎えさせるべし。
俺が選択した行動は正しかったのだろうか・・・
もしかしたらルナは・・・
この事を考えるとそんな淡い期待をしてしまう。
いや、あり得ない・・・
死んだのだ、ルナは・・・。
「シャドウ・ムーン」
20歳前後の男性。
搭乗機体は、汎用性に優れた中量二脚、サーティースフライデイ。
シュペルノーヴァ家に仕えるシャドウ家の一員。
普段はクールだが、熱くなるときは熱くなる。
ルナの事が好き。
「シャドウ・サン」
16歳前後の少年。
搭乗機体は援護主体の軽量逆関節、ゼロ・サクリファイス。
シュペルノーヴァ家に仕えるシャドウ家の一員。
まだ若いために役職にはまだついておらず、主にムーンの補助をしている。
性格は弱弱しい感じだが、やる時はやる子。
「シュペルノーヴァ・F・ルナ」
20歳前後の女性。
搭乗機体は狙撃特化の重量四脚、ローテローゼ。
シュペルノーヴァ家の長女。
性格はきっちりとした気高い性格だが、若干、ヒステリックな面がある。
「アンジー」
年齢は不詳で無機質な声質をした女性。
黄道十二星座をエムブレムにした謎の部隊のオペレーター。
エムブレムのモチーフは天を統べる北極星。
「8」
年齢は不詳だが、老兵の様な雰囲気を漂わせる男性。
搭乗機体は汎用性に優れた中量二脚のレオ。
エムブレムのモチーフは獅子座。
「13」
年齢は不詳だが、青年の様な雰囲気を漂わせる男性。
搭乗機体は援護主体の中量二脚のオヒュクス。
エムブレムのモチーフは蛇遣い座。
「3」
年齢は不詳だが、オカマの様な雰囲気を漂わせるオカマ。
搭乗機体は、レーザーキャノンを装備した援護主体の四脚、ピスケス。
エムブレムのモチーフは魚座。
12/04/14 17:29更新 / シャドウ