とある部隊のひと時
何も生むことの無い荒廃した砂漠。
人が作り上げた町も工場も全て砂に埋もれて消え去って行く。
先ほどの戦闘で撃破したACも埋もれていくのだろうか。
いずれはどんな形でさえ無くなってしまうと言うのに争うのは下らないことだ。
待合室の様な場所で席に座りながら物を考える十代後半くらいの青年がいた。
その向かいには、青年のちょうど背を縮めたくらいの少年が座っていた。
青年の左右には二席ずつ席が開いている。
その2人は兄弟の様であり、席に置かれているのは、ココアと紅茶。
此処は独立系のミグラント、AKマスターアームズの本拠地だ。
「どうしたんだい?ムーン兄さん?」
サンは不思議そうに首をかしげて言葉を言った。
「ん?いや、サン・・・何も。」
最近の自分は色々とセンチになりすぎだろうか?
ムーンと呼ばれた青年は感情を現さずに言葉を流す様に言って、誤魔化す様に紅茶を手にとって一口飲んだ。
紅茶も久しぶり、いや、ティータイムも久しぶりと言うべきか。
「話、聞いてた?」
サンと呼ばれた少年の方は紅茶を飲んだムーンに対して軽く怒っている様なムッとした感じで言葉を言った。
その様子を見ればまだ子供っぽさが残っている感じに見える。
「すまん、もう一度言ってくれ。」
ムーンは紅茶を席に戻して口早に謝って話を繰り返す様に頼んだ。
「あのn・・・。」
「シャドウちゃんたち。シャドウちゃんたち。良い話があるぜ?」
サンが何かを話そうとした間際に待合室のドアが勢いよく開いて屈強そうな感じの男が現れた。
サンは驚いて言葉を止めて、2人とも驚いたような感じでそちらの方を向いた。
「どうしたんだ?」
「ど、どうしたんです?」
入ってきたのが誰か分かって安堵したのか2人は同時に言葉を返した。
ムーンの方は冷静な感じで、サンの方はビクビクした様な感じで・・・。
どうやら2人の姓はシャドウと言うらしい。
「あのな。美人な武器商人が来てくれるらしいぜ?」
唐突に現れた男はヘヘヘと笑いながら2人に言葉を言った。
「MoHの武器商人に女なんていたか?」
ムーンは下らないとでも言う風に軽く笑みを浮かべ言葉を言って肩をすくめた。
ミグラントの団体とはいえ、オペレーターの人数が少ないのにわざわざ武器販売に女を寄こすなんてことはあり得ない。
「ロウケンさん。また、そんなことですか?」
サンの方は下らないとでもいう風に息を吐いてココアのカップを持って軽く飲んだ。
そういえば前はKARASAWAを手に入れたとか言って騒いでた時があったっけ。
確か、あれは、KRSWだったというオチだったと思う。
ところで今は誰が使っているんだっけ?
倉庫にでも眠っているのだろうか?
「今回はMoHじゃないらしいぜ?独立系のミグラントなんだとさ。」
ロウケンと言われた男は冷静に言葉を言って部屋に入ってきた。
そしてムーンの方の隣の席を引いてどかっと座った。
「部隊名は?」
「さぁな。ハートをかたどった茨のエムブレムのヘリが来るらしいぜ?」
ムーンは厳密そうな感じでロウケンに対して質問をした。
ロウケンの方はやはり適当に言葉を返した。
「それって、あのレジスタンスの部隊なんじゃ?」
サンはカップを持ったまま慌てた感じで言葉を言った。
ああ、あのシティの動乱を生き抜いた凄腕のACが居るっていうレジスタンスの残党部隊か。
「そうなのか?俺は知らねぇな。」
ロウケンは、首をかしげてサンに対して言葉を言った。
全く、ロウケンさんは情報に疎いのに良く此処まで生きてこれたものだと失礼だが思う。
まあ、相応の実力があるのは自分も認めざるを得ない。
自分のピンチを何度も救って貰ったし・・・。
そんな会話をしている最中にドアがスーッと開いた。
「何の話をしてるんだい?」
「仲間外れは良くないな。あたしも入れて貰わないとな。」
ドアの向こうに現れたのは爽やかな好青年と言った感じの人物と少し調子乗りな感じの女性だ。
ロウケン、ムーン、サンの三人の会話に興味しんしんな様だ。
「いやー、なべさん。今度、武器を売りに来てくれる人が美人って話さ。」
ムーンは好青年に対して素っ気ない感じで言葉を言った。
なべさんなら自分と同じ反応をするに違いない。
と思ったが・・・
「じゃあ、もてなさないとなぁ。」
なべさんと呼ばれた好青年は冗談なのか本気なのかは良く分からないが、悪戯な感じで微笑みを浮かべた感じで言葉を言った。
おいおい、何時ものクールなスナイパーのアンタはどこ行ったんだ。
まあ、様子を見ると狂っていたスナイパーキャノンのスコープ調整は上手く行ったのだろう。
2人はやはりテーブルの席に向かって歩を進めていた。
「そうかい、良いパイルが買えるといいなー。」
もう1人の方はムーンの望む反応を見せたが、一般人には異常に見えるだろう。
だが、此の部隊に居るみんなは此の人物がパイルバンカーの名手だと言うことを知っているから突っ込むことはなかった。
「・・・杏子は何時も通りか。」
「そうみたいだね。」
ムーンはハハッと愉快そうに軽く笑いながら言葉を言った。
そしてそれに続いて向かい合ったサンも言葉を言いながら乾いた感じで笑った。
なべさんは席に椅子を引いて三人と同じ様にロウケンの隣の席に座ったが、杏子と呼ばれた女性はサンの後ろで止まった。
「サン?何か言ったか?」
「い、いや、なんでもないよ・・・」
杏子はムーンの方には何も言わずに弟であるサンの方に脅す様な感じで後ろから言葉を言った。
杏子の脅す様な言葉にサンは慌てて否定の言葉を返した。
サンが杏子に頭が上がらないのは理由がある。
まあ、その理由を語るのはいつかにしておこう。
杏子はサンを脅し終わった後にガラッと椅子を引いて反対にした後に背もたれに腕を乗せてその腕の上に顔を乗せる。
「そ、そんな事よりさ。武器商人の人たちと何かしら関係を結べないかな?」
サンは話を切り替える様に慌てて話題を提供した。
杏子に根に持たれるのは嫌だと思ったのだろう。
「サンも考えてることは同じなんだな。」
ケラケラとロウケンは笑いながら言葉を言った。
サンが相当なイジられキャラと化しているが、何時も通りの風景だ。
「ち、違うよっ。伝説のAC乗りが居るミグラントだから・・・さ。」
サンは慌てた感じで弁解をした。
慌ててはいるが、それは誤解されていることに対する純粋な慌てだ。
「伝説のAC乗り、あのレジスタンスの生き残りかい?」
「あのAC乗りか?」
なべさんは驚いた感じで言葉を言って、杏子は言葉を言いながら身を起して急に真剣になった感じでサンの言葉を聞き返した。
やっぱり、みんな知ってるんだな。
「まあ、俺は無理だと思うけどな。」
ムーンは諦観した感じで言葉を軽く言った。
自分で言うのもなんだが、こんな弱小の部隊と同盟を結ぶなんてありえない。
金儲けになる話も無いし、地の利も無いと言うのに・・・
「なんでそう思うのさ?」
サンは反発した様な感じで兄に向かって言葉を言った。
サン以外の全員は何故だかわかっているのか特に反発することも無かった。
「そんな事よりも、あの部隊の同盟の返事をどうするかだと思うけどな。」
サン以外の誰も異議を唱えないのを見て、言葉を言った。
実は先ほど杏子が傭兵に行っていた部隊から同盟を結ばないかと言う話があった。
「無視!?」
「あたしは良いと思うけどね。」
サンは自分が無視されたことに腹を立てた感じでムッとした感じで口を膨らませた。
杏子はサンを無視して自分の意見をサラッと述べる。
部隊名はLibertadoresだったか。
「俺は一向に構わんぞ?」
「良いんじゃない?」
ロウケンはやはりサンを無視して賛成の意思を示した。
そしてなべさんも賛成の意思を示した。
「僕も良いとは思うけど・・・。」
サンは結局、諦めた様な感じで賛成の意思を示すが、何か不安なのか最後の方は口を紡ぐような感じになる。
サンが不安な理由は自分が良く知っている。
前に傭兵として出撃した時に雇い主から裏切られた事があったっけ・・・
今でさえ良い思い出の様なものだが、下手をすればあの時に・・・
「まあ、交渉は俺がやってみよう。」
ムーンは不安なサンの様子を見て、静かに言葉を言った。
「こっちが有利な条件で結べよ?」
杏子はムーンに容赦の無い台詞を言った。
弱肉強食、今までそうやって生きてきた杏子らしい言葉だ。
「そこはリーダーの指示次第だ。」
ムーンは弱肉強食思想の杏子に対して素っ気なく言葉を言った。
正直言うと他の部隊を食い物にする気はムーンにはなかった。
出来れば、相互安全という形で平穏に暮らしたいというのが望みだ。
昔はそんな事なんて思わなかったのに・・・
「温いねぇ。お前ら兄弟、ビーハイブにでも感化されたか?」
杏子はムーンの言葉を聞いて静かに感想を述べた。
そしてその後にケラケラ笑いながらからかうような言葉を言った。
杏子の言うことは確かにもっともだが、賛成することはできなかった。
「そ、そんなんじゃ・・・」
「・・・下らないな。」
ビーハイブと言うのは、一言でいえば新興宗教団体だ。
詳しくは知らないが、この世界に平和をもたらすことを理念にしているらしい。
サンは杏子にからかわれて、慌てて反論した。
ムーンの方は弟と対照的に一蹴するように言葉を言った。
「世に平穏の有らんことを、ね。」
「胡散臭ぇな・・・」
なべさんは静かに言葉を唱えるように言ってハハッと一笑した。
ロウケンは感想を静かに述べるだけだった。
「平穏か・・・。」
ムーンは静かに言葉を呟いてすっかりと冷えてしまった紅茶に手を伸ばした。
次に紅茶を本当の意味でじっくりと味わうことのできる日はいつになるのか・・・
この世界に溢れるほどの傭兵たちは、今、何を考えているのだろうか。
皆、更なる戦いを望んでいるのか、それとも自分の様に平穏を望んでいるのか・・・
「シャドウ・ムーン」
AKマスターアームズ所属、主に前衛を担当。
シャドウ・サンの兄。
クールな性格で主に突っ込み役。
かなりの現実主義者だが、最近はセンチメンタルになりつつある。
主な使用機体は汎用性に優れた中量二脚のサーティース・フライデイ。
「シャドウ・サン」
AKマスターアームズ所属、主に援護を担当。
シャドウ・ムーンの弟。
子供っぽい性格で部隊内のイジられ役。
かなりの理想主義者で、人をすぐに信用する。
主な使用機体は後方支援に優れた軽量逆接機体のゼロ・サクリファイス。
だが、実力は微妙なためオペレーターを務めることが多い。
「ロウケン」
AKマスターアームズ所属、主に戦線維持を担当。
結構、行き当たりばったりな性格だが部隊内での信頼は厚い。
この世界では珍しい義に生きる性格の持ち主。
廃品回収のマニアでお宝を掘り当てる天才でもあるが、残念な結果が多い。
主な使用機体は一機で戦線を維持できるタンクの雷雲。
「なべさん」
AKマスターアームズ所属、主に狙撃担当。
基本的にはクールだが、時に冗談も良く言う部隊内でのムードメーカー。
狙撃の腕はピカイチで狙った獲物を逃すことは無く、部隊内での尊敬を集める。
その尊敬ゆえになべさんと部隊内の人から言われるが、実は略称だったりする。
主な使用機体は遠距離狙撃に特化したスナイパーキャノン持ち四脚のフェンリル。
「杏子」
AKマスターアームズ所属、主に遊撃手を担当。
部隊の紅一点で、普段は男勝りの粗暴な性格だが、時折に純粋で優しい性格も垣間見ることができる。
その普段の性格では、サンが被害に会うことが多いが、意外に良いコンビなのかも?
ACの操縦において天才的な技術を持ち、パイルバンカーを自在に使いこなす。
部隊内ではファンクラブもあるらしいが規模は定かでは無い。
主な使用機体はパイルバンカーと狙撃のどちらにも対応できる二脚のロッソ・ファンタズマ。
人が作り上げた町も工場も全て砂に埋もれて消え去って行く。
先ほどの戦闘で撃破したACも埋もれていくのだろうか。
いずれはどんな形でさえ無くなってしまうと言うのに争うのは下らないことだ。
待合室の様な場所で席に座りながら物を考える十代後半くらいの青年がいた。
その向かいには、青年のちょうど背を縮めたくらいの少年が座っていた。
青年の左右には二席ずつ席が開いている。
その2人は兄弟の様であり、席に置かれているのは、ココアと紅茶。
此処は独立系のミグラント、AKマスターアームズの本拠地だ。
「どうしたんだい?ムーン兄さん?」
サンは不思議そうに首をかしげて言葉を言った。
「ん?いや、サン・・・何も。」
最近の自分は色々とセンチになりすぎだろうか?
ムーンと呼ばれた青年は感情を現さずに言葉を流す様に言って、誤魔化す様に紅茶を手にとって一口飲んだ。
紅茶も久しぶり、いや、ティータイムも久しぶりと言うべきか。
「話、聞いてた?」
サンと呼ばれた少年の方は紅茶を飲んだムーンに対して軽く怒っている様なムッとした感じで言葉を言った。
その様子を見ればまだ子供っぽさが残っている感じに見える。
「すまん、もう一度言ってくれ。」
ムーンは紅茶を席に戻して口早に謝って話を繰り返す様に頼んだ。
「あのn・・・。」
「シャドウちゃんたち。シャドウちゃんたち。良い話があるぜ?」
サンが何かを話そうとした間際に待合室のドアが勢いよく開いて屈強そうな感じの男が現れた。
サンは驚いて言葉を止めて、2人とも驚いたような感じでそちらの方を向いた。
「どうしたんだ?」
「ど、どうしたんです?」
入ってきたのが誰か分かって安堵したのか2人は同時に言葉を返した。
ムーンの方は冷静な感じで、サンの方はビクビクした様な感じで・・・。
どうやら2人の姓はシャドウと言うらしい。
「あのな。美人な武器商人が来てくれるらしいぜ?」
唐突に現れた男はヘヘヘと笑いながら2人に言葉を言った。
「MoHの武器商人に女なんていたか?」
ムーンは下らないとでも言う風に軽く笑みを浮かべ言葉を言って肩をすくめた。
ミグラントの団体とはいえ、オペレーターの人数が少ないのにわざわざ武器販売に女を寄こすなんてことはあり得ない。
「ロウケンさん。また、そんなことですか?」
サンの方は下らないとでもいう風に息を吐いてココアのカップを持って軽く飲んだ。
そういえば前はKARASAWAを手に入れたとか言って騒いでた時があったっけ。
確か、あれは、KRSWだったというオチだったと思う。
ところで今は誰が使っているんだっけ?
倉庫にでも眠っているのだろうか?
「今回はMoHじゃないらしいぜ?独立系のミグラントなんだとさ。」
ロウケンと言われた男は冷静に言葉を言って部屋に入ってきた。
そしてムーンの方の隣の席を引いてどかっと座った。
「部隊名は?」
「さぁな。ハートをかたどった茨のエムブレムのヘリが来るらしいぜ?」
ムーンは厳密そうな感じでロウケンに対して質問をした。
ロウケンの方はやはり適当に言葉を返した。
「それって、あのレジスタンスの部隊なんじゃ?」
サンはカップを持ったまま慌てた感じで言葉を言った。
ああ、あのシティの動乱を生き抜いた凄腕のACが居るっていうレジスタンスの残党部隊か。
「そうなのか?俺は知らねぇな。」
ロウケンは、首をかしげてサンに対して言葉を言った。
全く、ロウケンさんは情報に疎いのに良く此処まで生きてこれたものだと失礼だが思う。
まあ、相応の実力があるのは自分も認めざるを得ない。
自分のピンチを何度も救って貰ったし・・・。
そんな会話をしている最中にドアがスーッと開いた。
「何の話をしてるんだい?」
「仲間外れは良くないな。あたしも入れて貰わないとな。」
ドアの向こうに現れたのは爽やかな好青年と言った感じの人物と少し調子乗りな感じの女性だ。
ロウケン、ムーン、サンの三人の会話に興味しんしんな様だ。
「いやー、なべさん。今度、武器を売りに来てくれる人が美人って話さ。」
ムーンは好青年に対して素っ気ない感じで言葉を言った。
なべさんなら自分と同じ反応をするに違いない。
と思ったが・・・
「じゃあ、もてなさないとなぁ。」
なべさんと呼ばれた好青年は冗談なのか本気なのかは良く分からないが、悪戯な感じで微笑みを浮かべた感じで言葉を言った。
おいおい、何時ものクールなスナイパーのアンタはどこ行ったんだ。
まあ、様子を見ると狂っていたスナイパーキャノンのスコープ調整は上手く行ったのだろう。
2人はやはりテーブルの席に向かって歩を進めていた。
「そうかい、良いパイルが買えるといいなー。」
もう1人の方はムーンの望む反応を見せたが、一般人には異常に見えるだろう。
だが、此の部隊に居るみんなは此の人物がパイルバンカーの名手だと言うことを知っているから突っ込むことはなかった。
「・・・杏子は何時も通りか。」
「そうみたいだね。」
ムーンはハハッと愉快そうに軽く笑いながら言葉を言った。
そしてそれに続いて向かい合ったサンも言葉を言いながら乾いた感じで笑った。
なべさんは席に椅子を引いて三人と同じ様にロウケンの隣の席に座ったが、杏子と呼ばれた女性はサンの後ろで止まった。
「サン?何か言ったか?」
「い、いや、なんでもないよ・・・」
杏子はムーンの方には何も言わずに弟であるサンの方に脅す様な感じで後ろから言葉を言った。
杏子の脅す様な言葉にサンは慌てて否定の言葉を返した。
サンが杏子に頭が上がらないのは理由がある。
まあ、その理由を語るのはいつかにしておこう。
杏子はサンを脅し終わった後にガラッと椅子を引いて反対にした後に背もたれに腕を乗せてその腕の上に顔を乗せる。
「そ、そんな事よりさ。武器商人の人たちと何かしら関係を結べないかな?」
サンは話を切り替える様に慌てて話題を提供した。
杏子に根に持たれるのは嫌だと思ったのだろう。
「サンも考えてることは同じなんだな。」
ケラケラとロウケンは笑いながら言葉を言った。
サンが相当なイジられキャラと化しているが、何時も通りの風景だ。
「ち、違うよっ。伝説のAC乗りが居るミグラントだから・・・さ。」
サンは慌てた感じで弁解をした。
慌ててはいるが、それは誤解されていることに対する純粋な慌てだ。
「伝説のAC乗り、あのレジスタンスの生き残りかい?」
「あのAC乗りか?」
なべさんは驚いた感じで言葉を言って、杏子は言葉を言いながら身を起して急に真剣になった感じでサンの言葉を聞き返した。
やっぱり、みんな知ってるんだな。
「まあ、俺は無理だと思うけどな。」
ムーンは諦観した感じで言葉を軽く言った。
自分で言うのもなんだが、こんな弱小の部隊と同盟を結ぶなんてありえない。
金儲けになる話も無いし、地の利も無いと言うのに・・・
「なんでそう思うのさ?」
サンは反発した様な感じで兄に向かって言葉を言った。
サン以外の全員は何故だかわかっているのか特に反発することも無かった。
「そんな事よりも、あの部隊の同盟の返事をどうするかだと思うけどな。」
サン以外の誰も異議を唱えないのを見て、言葉を言った。
実は先ほど杏子が傭兵に行っていた部隊から同盟を結ばないかと言う話があった。
「無視!?」
「あたしは良いと思うけどね。」
サンは自分が無視されたことに腹を立てた感じでムッとした感じで口を膨らませた。
杏子はサンを無視して自分の意見をサラッと述べる。
部隊名はLibertadoresだったか。
「俺は一向に構わんぞ?」
「良いんじゃない?」
ロウケンはやはりサンを無視して賛成の意思を示した。
そしてなべさんも賛成の意思を示した。
「僕も良いとは思うけど・・・。」
サンは結局、諦めた様な感じで賛成の意思を示すが、何か不安なのか最後の方は口を紡ぐような感じになる。
サンが不安な理由は自分が良く知っている。
前に傭兵として出撃した時に雇い主から裏切られた事があったっけ・・・
今でさえ良い思い出の様なものだが、下手をすればあの時に・・・
「まあ、交渉は俺がやってみよう。」
ムーンは不安なサンの様子を見て、静かに言葉を言った。
「こっちが有利な条件で結べよ?」
杏子はムーンに容赦の無い台詞を言った。
弱肉強食、今までそうやって生きてきた杏子らしい言葉だ。
「そこはリーダーの指示次第だ。」
ムーンは弱肉強食思想の杏子に対して素っ気なく言葉を言った。
正直言うと他の部隊を食い物にする気はムーンにはなかった。
出来れば、相互安全という形で平穏に暮らしたいというのが望みだ。
昔はそんな事なんて思わなかったのに・・・
「温いねぇ。お前ら兄弟、ビーハイブにでも感化されたか?」
杏子はムーンの言葉を聞いて静かに感想を述べた。
そしてその後にケラケラ笑いながらからかうような言葉を言った。
杏子の言うことは確かにもっともだが、賛成することはできなかった。
「そ、そんなんじゃ・・・」
「・・・下らないな。」
ビーハイブと言うのは、一言でいえば新興宗教団体だ。
詳しくは知らないが、この世界に平和をもたらすことを理念にしているらしい。
サンは杏子にからかわれて、慌てて反論した。
ムーンの方は弟と対照的に一蹴するように言葉を言った。
「世に平穏の有らんことを、ね。」
「胡散臭ぇな・・・」
なべさんは静かに言葉を唱えるように言ってハハッと一笑した。
ロウケンは感想を静かに述べるだけだった。
「平穏か・・・。」
ムーンは静かに言葉を呟いてすっかりと冷えてしまった紅茶に手を伸ばした。
次に紅茶を本当の意味でじっくりと味わうことのできる日はいつになるのか・・・
この世界に溢れるほどの傭兵たちは、今、何を考えているのだろうか。
皆、更なる戦いを望んでいるのか、それとも自分の様に平穏を望んでいるのか・・・
「シャドウ・ムーン」
AKマスターアームズ所属、主に前衛を担当。
シャドウ・サンの兄。
クールな性格で主に突っ込み役。
かなりの現実主義者だが、最近はセンチメンタルになりつつある。
主な使用機体は汎用性に優れた中量二脚のサーティース・フライデイ。
「シャドウ・サン」
AKマスターアームズ所属、主に援護を担当。
シャドウ・ムーンの弟。
子供っぽい性格で部隊内のイジられ役。
かなりの理想主義者で、人をすぐに信用する。
主な使用機体は後方支援に優れた軽量逆接機体のゼロ・サクリファイス。
だが、実力は微妙なためオペレーターを務めることが多い。
「ロウケン」
AKマスターアームズ所属、主に戦線維持を担当。
結構、行き当たりばったりな性格だが部隊内での信頼は厚い。
この世界では珍しい義に生きる性格の持ち主。
廃品回収のマニアでお宝を掘り当てる天才でもあるが、残念な結果が多い。
主な使用機体は一機で戦線を維持できるタンクの雷雲。
「なべさん」
AKマスターアームズ所属、主に狙撃担当。
基本的にはクールだが、時に冗談も良く言う部隊内でのムードメーカー。
狙撃の腕はピカイチで狙った獲物を逃すことは無く、部隊内での尊敬を集める。
その尊敬ゆえになべさんと部隊内の人から言われるが、実は略称だったりする。
主な使用機体は遠距離狙撃に特化したスナイパーキャノン持ち四脚のフェンリル。
「杏子」
AKマスターアームズ所属、主に遊撃手を担当。
部隊の紅一点で、普段は男勝りの粗暴な性格だが、時折に純粋で優しい性格も垣間見ることができる。
その普段の性格では、サンが被害に会うことが多いが、意外に良いコンビなのかも?
ACの操縦において天才的な技術を持ち、パイルバンカーを自在に使いこなす。
部隊内ではファンクラブもあるらしいが規模は定かでは無い。
主な使用機体はパイルバンカーと狙撃のどちらにも対応できる二脚のロッソ・ファンタズマ。
12/03/24 02:05更新 / シャドウ